「エモ語」で心をつなぐ高齢者向けコミュニケーションロボット「BOCCO emo」の開発秘話と未来への展望(3/4)

3.会話に笑いと癒しを。高齢者に寄り添う「BOCCO emo」の「エモ語」機能とは

高齢者の方が使いやすいように意識した点はありますか。

 多賀谷:「BOCCO emo」には、エモ語という独自の言語を話す機能を搭載しています。会話型ロボットが日本語だけを話す場合、どうしても無機質な印象を抱く方が少なくないと考えました。工夫しても、人との会話と比べれば無機質な発話になってしまうのは当然です。

そこで、少しユーモアを交えた喜怒哀楽が感じ取れるノンバーバル*な表現を取り入れることで、心理的なハードルを下げられると考え、エモ語を話す設計にしました。エモ語として「ボッコ」や「エモモ」、「にょにょにょ」といった言葉を、ふとした瞬間に話すようになっています。また、人間同士の会話も聞いてエモ語で反応してくれます。 このエモ語機能は高齢者の方にも受け入れられており、「かわいい」「いつも面白いことを話してくれる」といった好意的な声を多くいただいています。もちろん日本語の発話も無機質にならないよう配慮していますが、エモ語を特に評価してくださる方が多いのは意外でした。 さらに、高齢者は現役世代や若い世代と比べて、人と会話する機会が明らかに少なくなりがちです。話す機会があっても、年齢差が大きい相手とは共通の話題が少ないこともあるでしょう。こうした状況に対して、「BOCCO emo」がエモ語で反応することで、一人暮らしの方でも楽しく過ごせるという感想を多くいただいています。「BOCCO emo」とのやりとりは、孫との会話のような感覚を生み、童心に戻れる体験にもなっているのではないでしょうか。  

*「言語を使わない」「非言語」という意味で、ノンバーバルコミュニケーションは、言葉以外の手段で行われるコミュニケーション全般を指す