高齢者の孤立解消を目指す。操作不要で家族や支援者と繋がるタブレット型デバイス「ケアびー」の開発(2/4)

2. 機能に込めた使命と開発の原点。介護施設に3ヵ月住み込んで見えた課題と答え

「ケアびー」の主な機能について教えてください。

 「ケアびー」には、次のような機能があります。

代表的な機能である自動接続型ビデオ通話は、家族や支援者が利用者の状況をリアルタイムで確認でき、通話中には字幕が表示されるため、耳が遠い方でも安心して会話することができます。

また、画面に顔を映さないこともできて、利用者の尊厳を守ることにより、心理的な負担を軽減します。特に女性の利用者から高い支持を得ています。

そして、画面に表示する全ての文字をひらがなに変換できるモードも備えていて、認知機能が低下した方でも読みやすくしています。

高齢者が設定操作することなく、いつでもコミュニケーションできるよう、家族や支援者がデバイスの充電状況や設定を遠隔で行い、必要に応じて調整できる仕組みもあります。

利用者の趣味や生活スタイルに合わせて、遠隔でボタンの設定を行えるカスタマイズ可能な機能も備えているので、個別ニーズに対応可能です。

遠くで暮らす家族と「ケアびー」でビデオ通話している様子

「ケアびー」を開発するきっかけは何でしたか?

 寝たきりだった私の祖父の介護経験から「ケアびー」の開発が始まりました。祖父は言葉を発することができず、自分の意思を家族に伝える手段を持っていませんでした。この状況を目の当たりにし、たとえ身体が動かなくても、自分らしさを保ちながら生活できる手段が必要だと強く感じました。

その後、私は介護施設に3ヵ月間住み込み、現場の課題や利用者のニーズを直接聞きながら、「ケアびー」の構想を形にしていきました。その結果、「簡単に使える」、「負担が少ない」、「尊厳を守る」という製品コンセプトが生まれました。

開発当初のプロトタイプはどのようなものでしたか?

 初期のプロトタイプは、高齢者向けのスマートフォンに近いものでした。しかし、テストを進める中でいくつかの課題が浮き彫りになりました。

高齢者向けのスマートフォンは、認知機能が低下した方には操作が難しすぎるという問題がありました。また、特に女性高齢者に見られる傾向なのですが、自分の顔が画面に映ることで心理的な負担を感じるケースが多いことが分かりました。これらのフィードバックを受け、現在の「ケアびー」には、「顔が映らない」、「直感的に使える」工夫を盛り込んでいます。