
「日本の研究成果が世界的に認知されて使われることを目指したい」 | ||
早速ですが、新たな中期計画がスタートするにあたり、第1期中期計画を振り返ってご感想をお聞かせください。 | ||
また、海外の研究機関との連携についても積極的に取り組みを行いました。私が理事長に就任した当時は、NICTは多方面で素晴らしい研究内容を持つにもかかわらず、必ずしも国際的には正当に評価されていなかったように思えたのです。国際的な認知度が実力に比べて低く、外国の研究機関と連携していくことが必要と感じました。情報通信というのはグローバルな技術で、日本だけでできても、それが外国に通用しなければ意味がありません。グローバルな技術成果を発出していくためにも外国の研究所と協調して進めていくことが肝要に思います。今後も更なる努力が求められるところでしょう。これまで、フランスや中国と研究協力協定を結んで国際共同研究も始まっています。国際会議を海外で主催して、NICTの存在を認知してもらえるような活動も展開しはじめています。 |
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NICTでは、自ら研究開発を実施するとともに、外部への委託にも取り組まれているそうですが? | ||
長尾:私たちは産業界や大学では実施が困難な研究開発について、自ら研究者を配置して実施していますが、研究開発の中には、外部の研究開発リソースを活用した方が、より効率的・効果的に実施できる課題もあります。そのような課題については、民間企業等の外部の機関に研究開発を委託することにより、より一層の成果を挙げることが可能となります。 また、委託研究にはもう1つのメリットがあります。それは、我々が研究開発した内容を実用化に持っていくこと、研究開発段階から開発段階そして製品化とつなげていく強力な手段であるということです。これは実際にはなかなか努力が必要な部分であり、一朝一夕にはいきませんが、地道に継続的な取り組みを続けていくことが必要と考えています。 もう1つ、忘れてはならない役割をNICTは持っています。それは、研究成果のアウトカムを意識して、成果を積極的に発信していくということです。以前は社会的な要因もあり、いずれの公的な研究機関もこれらの発信に関する意識が低かったと思います。今後は研究成果をいかにして社会に広く発信・提供していくかということが課題の1つになっています。また、知財を担当するセクションの運用やパテントの取得なども重要ですが、知財という研究成果を国際的な標準にまで持っていくことも大切です。日本の研究成果が世界的に認知されて使われることを目指したいと考えています。標準化ということは国際的にも国内的にも難しいことではありますが、やらなければ努力が無になってしまいますから。 |
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ところで、今期の中期計画期間では新たなストラテジーとともに、斬新な組織体制への改組が行われたようですね。 | ||
長尾:ストラテジーとしては3つの柱を立てて、これを実行するための組織を目指そうと考えています。まず、ストラテジーの1つ目の柱が「新世代ネットワーク技術」です。光ネットワークを中心に、これからのネットワークはどうあるべきかを研究開発します。無線通信や宇宙通信などを視野に入れた超高速のネットワーク技術に関する研究を推進する領域です。2つ目の柱が「ユニバーサルコミュニケーション技術」です。情報通信をよりいっそう人間に身近なものにするための研究開発を行います。最後の柱が「安心・安全のための情報通信技術」です。大規模災害の対応やセキュリティなど、やるべきことは山積しています。以上3つの研究開発領域に基づき、7つの研究センターに再組織化しました。それぞれの研究センターに研究グループを設け、グループリーダーのもとに研究テーマを立てて研究組織を構成し、リフレッシュして研究開発に取り組もうとしています。![]() |
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