

今やインターネットのない生活は考えられない時代ですが、ICTはさらに発展しようとしています。ADSL環境が一般的になって10年には満たず、それ以前はISDNで回線確保が精一杯でした。しかし、近年のFTTHの基盤整備もかつては2010年の実現が予想されていましたが、現在では当たり前のように利用できるようになりました。このようにICTの発達は、一般ユーザーの欲求とともに加速度的に進化しています。 今回訪れたのは、ISO14001認証を取得したばかりの新世代ネットワーク研究センター「フォトニックデバイスラボ」です。 近年、企業間競争の激化とともに、長期的視野に立って単独で基礎研究を進めることが次第に困難となる傾向にあり、同ラボには、独自の研究開発とともに産学官共同研究を推進しつつ、将来の情報通信システム実現の鍵となる新しい光デバイス技術の開発等に大きな期待が寄せられています。 |
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広く門戸を開いた研究施設 | ||||||
フォトニックデバイスラボが担う光デバイスICTの進展は、前述通りに目覚しいものがあり、超高速の信号・情報処理だけでなく、環境や生命科学など幅広く応用されています。その市場規模は成長が急で、財団法人「光産業技術振興協会」によると2002年には既に29兆円に達し、2015年には107兆円規模に増大することが見込まれるという予測もあります。 同ラボの統括責任者である井筒雅之高級研究員からは、「このラボは、半導体や誘電体の成膜から半導体集積回路、光導波路、受光器や分波器等のパターン作成とパッケージング、その特性評価まで、一貫したプロセスで研究することが可能です。また、デバイスのデザインやシミュレーションツールも充実しています。これらをNICT内だけでなく、外部の研究者がいつでも利用できることも特徴のひとつです」との説明を受けました。国内最高レベルにある研究施設として充実した環境にあるのはもちろん、優れた技術者や運営管理スタッフが研究者をサポートする体制は、他の研究機関にはほとんどないそうです。さらに、基礎研究を製品へ結びつける研究機関の施設として、いよいよ国内外から注目される成果を得はじめました。 |
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世界をリードする研究開発 | ||||||
同ラボには大きく分けて、測定・評価(写真1)、レーザによるデザインやパターン設計(写真2)、成膜作成等(写真3・4)を行う3ヵ所の施設があります。いずれも電子顕微鏡や各種測定装置が所狭しと並んでいますが、地階にある施設は、誘電体の成膜から半導体集積回路の製作を行うため、高レベルのクリーンルームとなっています。ナノ単位で精度が求められるため、外部の塵埃を持ち込まないように訪問の際も防塵服着用の上で行いました。 井筒高級研究員は続けて、「こうした研究施設として最高レベルにあっても、社会の変容に対応することが極めて重要です。社会は、ICTに対してこれまで以上の利便性を求めています。例えば、GPSによる位置確認やタイムスタンプによる時刻承認等、リアルタイムでの結果を必要とするニーズに応えるには、光通信、光デバイスの役割が大切です。また、高能率であり、低コストでそれらを提供することも不可欠です」と言います。 |
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研究成果を視野に収めた実践型ラボとして | ||||||
「NICTのような基礎研究を行う公的研究機関の役割は、ますます増していくでしょう。また、大学の研究所とは異なり、プロフェッショナルのスタッフが運営管理にあたっているため、ラボではすべて成果を求めて研究・開発に取り組んでいます。今後、例えば、JGN2のような全国規模のIPネットワーク、光波長ネットワーク、光テストベッドの研究開発環境を提供する等、フォトニックラボの門戸をいっそう広く開きたいと考えています。民間企業や大学がこれまで以上に積極的に利用でき、基礎研究から応用まで、広範囲の光デバイス研究に専念できる環境整備がこれからのICTの発展には不可欠なのですから」。 光デバイスは、質・量ともに想像を超える領域へと進化することが予想されます。目に見えないところで着実な成果を得るNICT「フォトニックデバイスラボ」の存在には、いっそう期待が膨らんでいます。 |