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JGN-XおよびStarBED3の取り組み

はじめに

NICTでは、新世代ネットワークの実現に不可欠な要素技術を統合した試験用広域ネットワークJGN-Xおよび大規模エミュレーション環境StarBED3(スターベッド・キュービック)を構築・運用しています。StarBED3でのエミュレーション検証からJGN-X上の広域ネットワーク実証に至るまでのネットワークの総合的なテストベッド環境を提供することで、新世代ネットワーク技術の研究開発と実証のスパイラル的な進展を目指しています。

JGN-XとStarBED3は、広く産学官に開放しており、タイムリーなアプリケーション開発等にご利用いただくことで、産学官による研究開発の加速化を図っています。また、JGN-Xを用いて、国内外の技術展示会等で数多くの世界初の技術デモンストレーションを成功させるとともに、海外の研究教育ネットワークと相互接続することにより、国際的な研究連携やテストベッド連携を進めています。

JGN-Xの取り組み

JGN-Xは日本全国さらには海外に及ぶ広域ネットワーク(L2/L3)を構築しており、広域ネットワーク上での実証実験のための基盤サービスとして、IP仮想化サービス(仮想ネットワーク、仮想ルータ、仮想計算機、仮想ストレージ)を提供しています。また、新世代ネットワークの要素技術の実験・検証環境として、SDN/OpenFlow(RISEテストベッド)サービス、DCN(Dynamic Circuit Network)サービス、PIAXテストベッド等の試験サービス(パートナーシップサービス)を提供しており、これらの実験・検証環境の運用を通じて、さらなる機能の高度化を図っています。さらに、これらの基盤技術の有機的な連携(ネットワークオーケストレーション)の実現についても取り組みを進めています。

2011年4月の運用開始から2013年11月時点までに、パートナーシップサービスなどの外部利用を含め、純粋なネットワーク基盤技術の研究から、防災や医療分野等での利用を見据えたネットワーク技術の検証まで累計94のプロジェクト(参加機関数201、参加研究者792人)にご利用いただいています(図1)。

図1 JGN-Xの利活用(2011年4月〜2013年11月の累計)
図1 JGN-Xの利活用(2011年4月〜2013年11月の累計)(図をクリックすると大きな図を表示します。)

一例を挙げると、防災分野については、岩手県遠野市において、非常時に役立つSDNによる有無線統合ネットワーク制御の実証実験を実施しており、自治体の防災ニーズに合わせたネットワークの構築を自治体とともに目指しています(図2)。

図2 岩手県遠野市でのSDNによる有無線統合ネットワーク制御の実証実験
図2 岩手県遠野市でのSDNによる有無線統合ネットワーク制御の実証実験(図をクリックすると大きな図を表示します。)

このように、NICT自らの研究開発に加えて、民間企業、大学、自治体、研究機関等様々な利用者により研究開発が進められており、新世代ネットワーク推進のためのテストベッドネットワークの利用や実証実験等を推進することを目的とする、新世代ネットワーク推進フォーラムテストベッド推進ワーキンググループ(主査: 井上友二 トヨタIT研究開発センター代表取締役会長、事務局: NICT)の活動を通して、我が国の技術開発の脱ガラパゴス化、我が国からの新世代ネットワークの実現に向けた技術発信、情報発信を目指しています。

StarBED3の取り組み

StarBED3は、新世代のICT技術の実験やプロトタイプシステムの検証のためのテストベッドで、実世界のICT環境を忠実、かつ、大規模に模倣する大規模エミュレーション環境です。その上で実物のソフトウェアやハードウェアを水平垂直に統合し、動作させることで実際の動きや問題点を検証することができます。

現実性:
実世界と同様の実装群を利用することで、実装時のバグや周辺技術の外乱までを含めた実験結果を得ることができます。
大規模:
1,000台を越える物理ノード、時には数万以上の仮想ノードを制御することで、大規模環境での対象技術の挙動を具体的に確認することができます。
水平垂直統合:
周辺技術とのインターフェース(API)は実環境と同一であるため、様々な技術を統合した実験環境を容易に構築できます。

これらの環境を活用して様々な検証が行われています(図3)。

図3 StarBED3の利活用
図3 StarBED3の利活用(図をクリックすると大きな図を表示します。)

今後の展望と課題
−ソーシャルビッグデータのネットワーク基盤として−

今後は、実装したテストベッド環境を用いて、利用者とNICTの研究開発との関係をこれまで以上に深めて、ネットワーク技術やネットワーク利活用技術の研究開発を促進するとともに、昨年末に米国デンバーで開催されたSC13(Supercomputing Conference 2013)への出展やタイ国バンコクでタイ国立電子コンピューター技術研究センター(NECTEC)等と共同で開催したFuture Internetのワークショップなどの機会を通じて、グローバルテストベッドとしての国際展開や国際連携を推進していきます。

また、NICTでは、平成24年度補正予算によりモバイル・ワイヤレステストベッドを構築し、センサー情報等をもとにしたソーシャルビッグデータの利活用に関する研究開発を進めています(図4)。河川、橋梁、道路、建物等に多様なセンサーを設置し、有無線ネットワークを通して集められた大量のデータを大規模データセンターで高度分析することにより、「社会インフラの維持・管理」や「防災・減災機能の強化」、「新産業・雇用の創出」など、社会に貢献する新たな価値の創造を目指していきます。JGN-Xは、これらビッグデータの伝送・蓄積のためのネットワーク基盤を提供するとともに、さらには、ソーシャルビッグデータの利活用に関する研究開発により新たにネットワークに求められる要求に柔軟に対応できるよう研究開発を進めていきたいと考えています。

図4 モバイル・ワイヤレステストベッド
図4 モバイル・ワイヤレステストベッド(図をクリックすると大きな図を表示します。)

住友 貴広 住友 貴広(すみとも たかひろ)
テストベッド研究開発推進センター テストベッド構築企画室 室長

1995年、郵政省(現総務省)に入省。 2013年7月より現職。
久保田 実 久保田 実(くぼた みのる)
経営企画部 統括

1997年、郵政省通信総合研究所(現NICT)に入所。超高層大気物理や電離圏擾乱の観測技術開発等を経て、現在は平成24年度補正予算による研究開発基盤整備の統括業務に従事。博士(理学)。
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