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独立行政法人 情報通信研究機構 理事長 - 長尾

新年明けましておめでとうございます。

昨年4月に新しく情報通信研究機構(NICT)が発足し、我々一同心を新たにして活動してまいりました。本年4月から始まる 平成17年度は独立行政法人となって第1期中期計画の最終年度となります。したがって第1期中期計画を十二分に達成 しなければなりませんし、また、しっかりした第2期中期計画を立案しなければなりません。研究機構全員の一層の努力を 期待いたしたいと存じます。

NICTのビジョン

平成16年の最初の3ヶ月は新しい独立行政法人を作る準備の期間として多忙な期間でありましたが、全員の努力の甲斐あって、 スムーズに4月を迎えることが出来、発足の記念式典とパーティには各界から数百名の方々にご参加いただき、祝福して いただきました。その際我々はNICTビジョンを発表し、我々の進むべき方向を明らかにしました。それは、次のような4つの 柱を持っております。

  1. NEW ICT〜日本発の新たなICTの「礎」を作る。
  2. Infrastructure for ICT Society 〜 ICT社会の「安心・安全」を作る。
  3. Challenge〜10年後、20年後の日本の「種」を作る。
  4. Testbed and Promotion〜技術の花開かせる「小槌」を作る。

そしてこれらの4つの活動を通じて、将来の国の情報通信施策を技術的に支えるとともに、大学・産業界あるいは海外の 研究機関等と連携し、また技術移転をするなどして、活力ある社会、豊かな生活が実現するよう努力する所存であります。 新しく発足したNICTの第1にやるべきことは、旧通信総合研究所と旧通信・放送機構の機能を、統合によって業務運営の 効率化にも配慮しつつ、より良く効果的に高めてゆくことでありました。これについては種々の検討を行い、新しく部門 横断的な研究開発推進ユニットという単位を作り、両者の機能が有機的に統合され、しっかりした機能が発揮できるように いたしました。まずは、6つのユニットをスタートさせましたが、これからも新しいユニットの可能性について検討して ゆくつもりであります。

昨年の6月に総務省はu-Japan構想を発表しました。これは、2001年から始まったe-Japan計画に続いて、2006年から 2010年を目標としてユビキタス社会を実現しようとするものであります。NICTにおいてはその基盤を支える技術の研究を いろいろとやって来ておりますが、さらに幅広くしっかりした研究を行い、u-Japanの実現に向けて努力をするつもりで あります。

昨年の主な活動

昨年4月にNICTが発足すると同時に、過去5年かけて実施して来た高速ディジタルネットワークプロジェクトJGNを一段と 機能アップし、JGNIIをスタートさせました。 この超高速ネットワークの基幹部分は20Gbit/sの速度を持ち、IPv6などの接続で日本各地の大学等と共同して、利用という 立場から新しい種々の試みをしようというものであります。このネットワークは、10Gbit/sで米国にまで延ばされ、 日米間の共同研究に使われております。さらに中国にもこの回線を延ばすべく鋭意検討を行っております。

バンコックとシンガポールに設置しましたアジア研究連携センターは去る6月に1周年を迎えましたが、研究活動も軌道にのり、 成果が出て来つつあります。昨年の11月には新たに北京の清華大学と包括協定を結び、これから具体的な研究協力を行おう というところであります。 昨年1月に設置した情報セキュリティセンターも種々のシミュレーション装置などの導入を終え、研究が軌道にのり始めて おります。情報セキュリティとして、NICTにおいては情報ネットワークの攻撃などに対する対処のほかに、災害等の緊急時に おける通信の確保といった分野も含まれ、スピーディに研究成果をあげ実用にもってゆくことが必要であります。 昨年2月には電磁環境センターを立ちあげ、通信システム、電子・電気機器、人体などにおける電磁波の環境問題、 またEMCに関する技術開発などを総合的に行っております。 電磁波計測の部門におきましては、リアルタイム地球磁気圏シミュレーションシステムを開発し定常運用を開始するとともに、 電子時刻認証に必要な標準時配信技術に取り組んできました。 関西先端研究センターでは、脳研究の一層の強化のため、より強磁場である3テスラのMRIの運用を開始するとともに、 脳情報オープンラボとして共同研究の公募をスタートさせました。

このように、各研究部門、その下にある研究グループの研究活動は活発で、多くの研究成果をあげるとともに、NICT主導で 幾つかの国際会議を開催しております。 旧通信・放送機構の行って来た研究開発推進、拠点研究推進、基盤技術研究促進、情報通信振興については、超高速 ネットワーク、移動通信、放送といった幅広い分野にわたる先進的な研究開発課題や、実用化を視野に入れた民間基盤技術の 研究開発課題を公募し、委託研究を実施するとともに、高齢者・障害者向けの情報化のための研究開発などに対する助成 制度や「ITベンチャー知的財産戦略セミナー」等のベンチャー支援策を推進しました。 これら4部門においては、従来の路線を継承しながら、問題点をよく検討し、研究部門との融合を含め、より充実した 活動を行うべく努力をしているところであります。

ユニバーサルコミュニケーションの時代にむけて

ICTの発展をながめて見ますと、1980年代はニューメディアということでCATVやBS放送が中心でありましたが、1990年代には マルチメディアという言葉が広まり、インターネットとモバイルが中心となりました。そして2000年から2010年にかけては ユビキタスという概念が中心となります。そこでは多くの技術開発とともに、情報セキュリティとヒューマンインター フェイス、情報バリアフリーなどがますます重要になってゆくでしょう。

私は、これらをよくふまえた上で、その先の概念として"ユニバーサルコミュニケーション"の時代ということを提唱して おります。これは地球上どこにいても、人と人、人と機械、機械同士がスムーズにコミュニケーションできることを意味し、 言語翻訳はもとより、知識やリアルタイム情報などを自由に駆使した創造的なコミュニケーションが出来る世界であります。 私どもはこういったことを目標として今年も頑張ってゆきたいと存じます。皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。