3Dプリンターの活用が普及することで、社会にどのような変化が起こるのでしょうか?
林:3Dプリンターが普及することにより、一人ひとりの個別ニーズに対応した道具を提供できる社会が実現すると思います。3Dプリンターは、細かな調整を加えた道具を素早く作ることができるので、ニーズに適した器具を提供できます。このようにして個別ニーズに対応した道具を用意できれば、利用者の自立度が高まり、できることが増え、より快適に日常生活が送れるようになるでしょう。今後「自分に最適なもの」を追求する文化が広がり、個別化された支援の提供が現実化していくと思います。
濱中:「COCRE HUB」は、障害のある方が自身のニーズに合った道具を手に入れる手段を提供し、自立した生活の実現をサポートすることを目的にしています。しかし、この取り組みは障害のある方だけにとどまらず、3Dプリンターがもたらす新しいものづくりの可能性を社会全体に広めるものでもあります。
これまで製品を一括して大量生産し、在庫として抱える形が一般的でしたが、3Dプリンターを使えば、必要なときにすぐに自分に合ったものを作ることができます。これにより「プロダクトロス」と呼ばれるような無駄が減り、環境にも配慮した生産が可能になるでしょう。
また、ユーザーである利用者や支援者自身がものづくりに参加し、自分たちのコミュニティで必要なものを考え、製作することができるという「ものづくりの民主化」が実現します。これまで企業が製品を製造・販売していましたが、3Dプリンターの普及によって、ユーザーが自分のニーズに合わせて自由にデザインし、作り上げることができます。
ユーザーが製品を「完成品」として受け取るのではなく、あくまで「未完成品」として捉え、ユーザーが自分の生活に合わせて自由に調整することが可能になると、製品の標準化が進むはずです。障害のある方だけではなく、使う人自身が製品の最終デザイナーになる社会が広がっていくと感じています。
取材協力:
一般社団法人ICTリハビリテーション研究会
取材日:
2024年10月