「あすチャレ!」のパラアスリート講師・山本恵理さんに聞く、合理的配慮に求められるICTの活用法(3/4)

3. ワークショップが企業にもたらす新視点

企業研修の内容はどのようなものですか?

 企業研修では、「あすチャレ!Academy」というプログラムの中で、「合理的配慮編」、「コミュニケーション編」、「カスタムメイドプラン」などの様々なプランを提供しています。

近年、企業で障害者雇用が進み、障害のある社員とどのように接したら良いか、どのような配慮が必要なのか、といった悩みを抱える企業が増えています。そこで、研修を通して障害に関する理解を深め、コミュニケーションのポイントを学んでいただいています。また、企業の顧客対応や商品開発に、合理的配慮の視点を導入する研修も行っています。

例えば、化粧品会社向けの研修では、「視覚に障害のあるお客様にも、商品の魅力を伝えるにはどうすれば良いか」をテーマにワークショップを行いました。参加者から、「声かけの仕方」、「商品の説明方法」、「店舗のバリアフリー化」など、様々な意見が出てきました。

この研修を通して参加者から「パッケージデザインの工夫」、「音声案内の工夫」など、商品開発における新たな視点が得られたという声が寄せられました。

また、全国でコンビニエンスストア事業を展開している企業は、全国の新入社員がオンラインで参加できるダイバーシティ研修を実施しました。

パッケージをあえて隠して見せることで、視覚障害のある人がおにぎりを選ぶときにどう感じるかを分かりやすく説明

研修後にどのような変化がありましたか?

 先ほどご紹介した全国でコンビニエンスストア事業を展開している企業では、パッケージに書かれていることを知ることができない視覚に障害のある人が、おにぎりを選ぶときにどのように感じるのかを説明したところ、「研修を受けて、すぐにUDトーク(音声認識&自動翻訳アプリ)をスマホに入れました」、「レジカウンターに『指差しシート』の設置を増やす発表をするなどDE&I※に向けた取り組みを進めています」という声が届きました。

研修後は多くの企業で、障害のあるお客様への対応や商品開発に変化が見られます。例えば、研修を受けた化粧品会社の店舗では、視覚に障害のあるお客様にも積極的に声かけをするようになり、さらに商品の説明に音声案内を導入するなど、具体的な改善策を行いました。


※DE&I…ダイバーシティ(多様性) ・ エクイティ(公平性) & インクルージョン(包摂性) 本記事では、多様性を受容すること、またその取り組みを指す。