eスポーツに興味はあるものの、ハードルに感じる方や一歩踏み出せない方へメッセージをお願いします。
北村:いきなり「ストリートファイター」のような本格的な対戦ゲームから始める必要はありません。例えば視覚障害の方であれば、まずはスマートフォンでできる「音戦宅球eスポーツ」から挑戦してみるのがおすすめです。このゲームは「一般社団法人 Tanys福祉テクノロジー」が開発した新感覚バリアフリーゲームで、ePARAも開発に関わっています。サウンドスポーツアプリとして、右や左に飛んでくるボールの方向に合わせてボタンを押して打ち返すシンプルな仕組みです。練習は必要ですが、特別な機器は不要で、すぐに始められます。最近では機能が進化し、左右だけでなく真ん中や上下方向にも対応できるようになりました。学生や若いプレイヤーには特におすすめです。
また、ePARAには部活動もあります。平日夜に開催し、「今週はストリートファイター」「来週はファイナルファンタジー」といった形で、週替わりでゲームを変えています。ゲームを持っていない方は見学だけでも歓迎ですし、視覚障害者でも参加できるタイトルがあればこちらから「一緒にやってみませんか?」と声をかけています。声かけをすると、「実はゲームをやりたかったので、参加できてよかった」という声をいただくことも多いです。こうして少しずつ、ゲーム参加のハードルを下げる取り組みを続けています。
御社が目指す未来や社会で果たしたい役割は何ですか。
加藤:私たちは障害者向けのeスポーツを「日本だけでなく、世界にも広げたい」と考えています。心眼CUPを開催した際、最初に詳しい試合レポートを書いてくれたのはインドネシアのeスポーツメディアでした。インドネシア語の記事を翻訳して読んだとき、その熱量に感動しました。記事の中では、ベストバウト賞(最も感動や興奮を与えた試合に贈られる賞)は直也さんの準決勝だったと紹介されていたのです。こうした取り組みを日本語だけでなく英語や他の言語でも発信すれば、活動の場が世界に広がり、支援の幅も広がると信じています。
2025年8月にはサウジアラビアを訪問します。2027年にはサウジアラビアでeスポーツのオリンピックが予定されており、そこではオリンピックとパラリンピックの区別なく、障害者も同じ舞台で戦えるはずです。大会運営において、障害者が活躍できるデバイスやアクセシビリティのサポートを実現したいと考えています。以前、トゥルキ王子に直接お会いし「私たちをオリンピックのPRに使ってほしい」とお願いしたこともあります。その際、直也さんのプレイを見た王子がファンになってくれるという嬉しい出来事もありました。
私たちの活動はまだ道半ばです。しかし直也さんをはじめ、ePARAの仲間と共にここまで歩んできました。これからも、日本から世界へバリアフリーeスポーツを広め、障害者の方々にゲームを通して楽しさや感動を届けたい。そして「個性を発掘し、より良い未来をつくる」ことを目指して、さらなるバリアフリー化と支援の拡充を進めていきます。
取材協力:株式会社ePARA
取材日:2025年8月
