ゲームでつなぐ、新しい障害者支援の形—ePARAが描くバリアフリーeスポーツの未来(3/4)

3.障害者でも楽しめるゲーム環境を目指して。ソフト・ハード・個人の工夫で広がるアクセシビリティ

eスポーツをプレイするにあたって、専用のコントローラーを使う方もいると思いますが、実際はどうでしょうか。

 北村:私は健常者が使う一般的なコントローラーを使っています。ボタンの配置は目で見えなくても、指の力も弱くないですし、格闘ゲームプレイヤーが使う普通のパッドの方が押し心地が良いからです。特別な理由があるわけではなく、単純に自分の感覚に合っているからですね。全盲のプレイヤーの中には「ヒットボックス」という大型アーケードコントローラーを使う方もいます。これはゲームセンターにあるようなレバー部分がなく、複数の大きなボタンだけが並んでいるタイプです。

加藤:その方はピアノを弾く方でもあったので、独立したボタンの方が操作しやすいと考え、キーボード型のコントローラーを使っていた時期もありました。ただ、こうした試行錯誤は障害者に限った話ではありません。健常者でも、パッド派、アーケードコントローラー派、ヒットボックス派など好みが分かれますし、最終的には自分に合うようにチューニングして辿り着くものだと思います。

障害者向けのeスポーツ事業を進める中で、どのようなアクセシビリティが必要だと考えますか。

 加藤:ePARAでは、障害のある方にご自身の「困りごと」を記事にまとめてもらい、ホームページで公開しています。これにより、私たち自身も障害者が直面している課題を把握し、解決に向けて取り組んでいます。例えば、多汗症の方はコントローラーが汗で滑ってしまうといった問題があります。この場合、滑り止め効果のあるグローブを着用するなど、自分なりの工夫で対応する方もいます。これはコントローラーを変えるのではなく、本人の工夫で解決するパターンです。

しかし、個人の工夫では解決できないケースもあります。ゲームソフト側の改善例としては、カプコン社と協業し、「ストリートファイター6」にサウンドアクセシビリティ機能を搭載していただきました。これは視覚情報に頼らず、音で状況を把握できる機能です。

コントローラーとしては、アイルランドのBYOWAVE(バイオウェーブ)社が出しているものは、レゴブロックのようにパーツを組み替えて自分仕様にカスタマイズできる製品です。さらに、車椅子に専用マウントを設置し、操作しやすくする方法もあります。このように、コントローラー・ゲームソフト・個人の工夫などで、ゲーム参戦が可能です。

北村:カプコン社のサウンドアクセシビリティ機能について触れましたが、実はカプコン社側からのオファーだったのです。視覚障害者にも快適にプレイしてもらえるよう、キャラクター同士の距離感や体力状況を音で知らせる機能が盛り込まれています。

そして、イベント時のアクセシビリティも重要です。例えば「心眼CUP」*では、会場に多くの観客だけでなく、実況も入ります。大会が盛り上がるのは良いことですが、熱気や声援でゲームの音がかき消されてしまうことがありました。そのため、ノイズキャンセル機能付きのヘッドホンを使用する必要がありました。イベントの盛り上げとアクセシビリティの両立は、今後私たちが解決していくべき課題だと感じています。

 

*心眼CUP…ePARAが主催・運営する、視覚情報を一切使わず音声のみで状況を判断して行うeスポーツ大会

北村さんの師匠であるJENIさんこと、畠山駿也(はたけやま・しゅんや)さんは、株式会社ePARAに所属するバリアフリーeスポーツのプロデューサー兼格闘ゲーマー。指定難病である「デュシェンヌ型筋ジストロフィー症」を患っており、顎で操作できるコントローラーを使用してゲームに参戦。
手が不自由な方は足で操作できるコントローラーを使用し、ゲームに参加している。