ゲームでつなぐ、新しい障害者支援の形—ePARAが描くバリアフリーeスポーツの未来(2/4)

2.出会いが切り開いた新しいeスポーツの世界と、個性を生かし能力を高めるための支援

“ブラインドeスポーツスペシャリスト”である北村さんとの出会いを教えてください。

 加藤:「まずは情報発信を」という時期にいろいろと調べていた際、全盲の方が「パワフルプロ野球(パワプロ)」をプレイしていることを知りました。弊社の別の者から直也さんを紹介してもらい、ホームページ掲載用の記事作成をお願いしたのが最初のきっかけです。もう5年ほど前になりますね。

北村:といっても、健常者と同じ方法でプレイしているわけではありません。最初は、投球の音が聞こえたらタイミングを合わせて打つボタンを押す、それくらいのシンプルなものでした。私は野球が好きなので、9回までの試合感覚を味わいたいという、本当に趣味の延長でやっていたのです。そのため加藤さんから「目が見えない人は、そんなふうにパワプロをプレイするのですか?」と驚かれたときは、逆に私も驚きました。お互いが「そんなことできるの!?」と衝撃を受け合った瞬間でしたね。

加藤:これは本当に衝撃的でした。新幹線で一緒にeスポーツのイベントへ向かう途中、点字デバイスである「ブレイルセンス」を操作して、直也さんが脚本を書いているのを見て、「脚本が書けるなら、議事録も書けますか?」と聞いたら、「書けると思いますよ」と普通に返事されたことがありました。障害者の方にとっては当たり前のことでも、外から見ると驚きに満ちている。こちらが興味を持って掘り下げない限り、意外と気づけないことが多いのです。そういうことも新鮮でしたね。

今、eスポーツに参加されている方はどのような方が多いですか。

 加藤:弊社では、全盲の方が2名、筋ジストロフィーの方が1名、脳性麻痺で車椅子を利用している方が1名いらっしゃいます。その他にも業務委託やコミュニティ所属の方がいて、障害の種類はさまざまです。障害は大きく分けて「身体障害」「精神・発達障害」「知的障害」の3種類あると言われています。身体障害の中には視覚障害や聴覚障害も含まれます。eスポーツの参加者では、身体障害と精神・発達障害の方が比較的多いです。

知的障害の方が少ないのは、活動の時間帯も関係しています。弊社のコミュニティ活動はオンラインで毎週水曜の21時から1時間ほど行うのですが、基本的にお一人での参加が前提です。夜の時間帯は福祉サービスの利用時間外で、介助者や支援者がいない場合も多く、自立的に参加できる方に限られてしまうからです。このような方たちには、ご家族と一緒にイベントに来ていただき、会場でeスポーツを楽しんでもらっています。

より多くの障害者にeスポーツを広げたいと感じる場面もあると思います。そのために取り組んでいることはありますか。

 加藤:障害者支援には、私たちなりの役割があると思っています。日本には1,000万人以上の障害者がいますが、私たちは全員にリーチできる活動をしているわけではありません。私たちが主に取り組んでいるのは、ゲームやパソコンスキルを通じて能力を高める活動です。そこから就労につなげたいと考えている方は、おそらく最大で50〜100万人ほどではないかと推察します。

しかし、無理に対象を広げるのではなく、興味を持ってくれる人たちに向けて「私たちはここにいますよ」と発信し、関心を寄せてくれた方とじっくり関わる。そんな自然な広がり方が良いと思っています。

「EVO Japan」に参加している様子。「EVO Japan」はeスポーツの世界大会EVOの公式日本版で、プロ・アマ問わず誰でも参加できるオフライン格闘ゲームイベント。