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亘 慎一 (わたり しんいち) - 電磁波計測部門 宇宙天気システムグループ グループリーダー

太陽は約11年の周期で活動の極大と極小を繰り返しています。最近の極大期は2000年で、今後、2006年から2007年頃に かけて極小期となります。現在は、極小期に近づきつつあるところですが、2003年10月末、2004年11月上旬、そして、 2005年1月中旬と、このところ大きな宇宙環境擾乱(宇宙嵐)が頻繁に発生しています。地上の台風に"雨"台風や"風"台風が あるように、宇宙嵐にもさまざまな特徴があります。2004年11月上旬の現象では、高エネルギー粒子の量はそれほど 増加しませんでしたが、太陽風中の強い南向きの磁場と地球の磁場の相互作用によって大きな地磁気嵐が起こり、 11月8日と10 日の夜に日本でも赤い低緯度オーロラが観測されました。これに対して、今回の1月中旬の現象では、 それほど大きな地磁気嵐は発生しませんでしたが、高エネルギー粒子の量が多いのが特徴でした。

図1に宇宙嵐の原因となった黒点群720を示します。この黒点群は、1月13日頃から急激に成長して、太陽フレアと呼ばれる 太陽での爆発現象やコロナガス大規模噴出(CME)が頻発し、1月22日頃に太陽の裏側に回り込みました。図2は、米国の GOES衛星によって観測された高エネルギー粒子の量です。1月17日に発生した太陽フレアに伴って、高エネルギー粒子の量が 静穏時の5万倍近く増加しました。図3は、SOHO衛星によって観測された、このフレアに伴うCMEです。このCMEに関連して、 速度が1000km/s近い高速の太陽風が地球近傍で観測されましたが、太陽風中の磁場が地球の磁場と相互作用を起こしにくい 方向だったので、地磁気嵐はあまり発達しませんでした。1月19日に発生した太陽フレアに伴う非常にエネルギーの高い 粒子の増加は、1989年10月以来、15年ぶりの現象でした。また、現在の太陽活動周期で最大級の宇宙線増加が地上の 観測網で観測されました。今回の宇宙嵐の影響で、太陽風の観測を行っているNASAのACE衛星では、高エネルギー粒子の 量が多くなりすぎたために太陽風の観測ができなくなるなど、一部の衛星で障害が発生しました。

NICTは、国際的な組織である国際宇宙環境サービス(ISES )の宇宙天気予報センターとして、毎日、予報を行っています。 今回の"宇宙嵐"についても、インターネットやFAXなどを通じて、ユーザーに臨時の情報を発信して注意を呼びかけました。 宇宙天気情報については、 太陽地球環境情報サービス宇宙天気ニュース などを参考にしてください。