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けいはんな情報通信研究フェア2011 開催報告 -未来につなごう!-

●基調講演会場はほぼ満席
●基調講演会場はほぼ満席

NICTユニバーサルコミュニケーション研究所では、2011年11月10日(木)~12日(土)に、けいはんな学研都市の情報通信関連機関と協力し、地域に根ざした共同イベントとして「けいはんな情報通信研究フェア2011」を開催しました。3日間を通じて、多くの講演と展示に、2,300名を超える来場者にお越し頂きました。このイベントは、情報通信技術の研究成果を発信するとともに、関係機関の相互連携の促進を目的としています。

初日に行われた基調講演は、「超臨場感メディアと社会」と題し、東京大学大学院情報理工学系研究科教授でNICTユニバーサルコミュニケーション研究所R&Dアドバイザーの廣瀬通孝氏にお話しいただきました。超臨場感の「超」は、臨場感をより高めるという意味とともに、距離や時間を超えて情報を的確に伝えるという意味も含まれている。東日本大震災という出来事や私たちが記憶している知識や経験を未来の人たちにどうすればうまく伝えられるのか。「モノ」であれば博物館に残せるが、「情報(コト)」を直接体験したかのように伝えるにはどうすれば良いのか。それには、人と機械のそれぞれの利点を活かすシステムを創る発想が重要となる。高度な技術が実際にはなかなか役立たないという指摘を受けることがあるが、利用シーンを良く分析し、人と機械の役割分担を考えて上手にシステム化すれば真に役立つものができるのではないか。また、高齢者や障がい者等の支援では、ハンディキャップを機械が補いつつ、その方自身の「強み」を活かしていく考え方、さらに、多くの人の持つ優れた能力や知識を組み合わせ、仮想的に一体として活用する方法等、示唆に富んだ興味深い講演でした。

人と機械の仲立ちとなる超臨場感技術、あるいはバーチャルリアリティーの技術の役割がますます重要になってくるものと考えられます。

平成23年度、NICTで新しい中期目標・中期計画による5ヶ年が始まると同時に、国では第4期科学技術基本計画に基づく政策が開始されました。3月の東日本大震災を受けて同基本計画は改訂され、震災からの復興・再生、グリーンイノベーションの推進、ライフイノベーションの推進等が重視されています。また、高度な科学技術を早期に社会へ展開することが期待されています。こうした課題に対し「情報通信技術」が大きく貢献できること、特にけいはんな学研都市に集積した関係機関の取り組みを広く伝えることを目指し、次の4つの講演セッションを設けました。

(1) 先端情報通信技術で未来を拓く
   ~研究成果の早期展開に向けた試み~
(2) 情報通信技術によるライフイノベーション
   ~生活の質の向上~
(3) 情報通信技術によるグリーンイノベーション
   ~エネルギー利用の高効率化
(4) 防災・減災に役立つ情報通信技術の実現に向けて

第1セッションでは、登壇者の講演とともに会場との間でディスカッションが行われました。各機関では長年培った研究成果を元に事業展開を活発に進めています。ATR-LT社からは、音声研究の成果として英語の“L”と“R”の音を聞き分ける教材のデモンストレーションが行われ、聴衆の高校生に大きなインパクトを与えたようでした。

第2セッションでは、ライフイノベーションをテーマに、将来の高齢化社会を念頭に生活を支援するロボット基盤技術、医用画像保存システム及び超臨場感コミュニケーション技術による貢献等の講演が行われました。各機関は独立して要素技術の研究開発に取り組んでいますが、将来のシステムにおいてそれぞれ重要な鍵となる技術だと感じられました。

第3セッションでは、グリーンイノベーションをテーマとし、けいはんなエコシティプロジェクトの取り組みや高性能化と低消費電力を両立させるコンピュータアーキテクチャ、また、様々なセンサを活用したグリーン化へのアプローチなど、グリーンイノベーションを実現する上で情報通信技術が各所で活かされることがわかりました。

第4セッションでは、地元の精華町消防本部から、消防・救急の現場活動における情報の流れや東日本大震災直後に緊急消防援助隊京都府隊として被災地で行われた活動について貴重なご報告を頂きました。また、NICTの電磁波計測研究所やワイヤレスネットワーク研究所の成果を活用した東日本大震災支援活動として、航空機搭載高性能合成開口レーダ(Pi-SAR2)による地表面観測や、超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を用いたブロードバンド回線の提供、及び異なる無線システムを統合的に扱うことのできるコグニティブ無線ルータを活用し被災地の避難所にインターネット回線を提供した等の報告を行いました。

また、講演と併せて、200インチ裸眼立体映像を始め、多数の展示を行いました。特に高校生などの若い方から、「日本の技術はすごいと思った」、「興味がわく内容なので、もっと時間をかけて見てみたかった」等の感想を頂き、感性豊かで今後の日本を背負っていく学生層をターゲットに、今後もっとアピールできる内容としていきたいと考えています。

●廣瀬通孝氏による基調講演●廣瀬通孝氏による基調講演 ●200インチ裸眼立体映像●200インチ裸眼立体映像 若い来場者から「これやばい!」の声が(決して悪い意味ではなく「すごい」とのことだそう)。
●パネルディスカッションの様子(第1セッション)●パネルディスカッションの様子(第1セッション) ●多言語音声翻訳システム(ChaTra)●多言語音声翻訳システム(ChaTra) 熱心に説明を聞いています。
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