タイトル 次世代インターネット情報検索基盤技術
勝本 道哲

 高度映像情報研究室では、「次世代分散型ダイナミックハイパーメディアシステムの研究」を情報通信基盤技術における「高度情報資源伝送蓄積技術に関する研究」の一環として、平成8年度より研究開発を進めてきた。本稿では本研究の成果を紹介する。

背景
 この数年間でインターネットを支える技術の急速な発展と共に、インターネット利用者の人口も増加してきている。しかし、インターネット上のホームページは、書籍作成と同じ考え方で作成されており、コンテンツ制作者が伝えようとする内容を十分に表現できない場合もあり、また利用者も十分に情報を閲覧できない場合もある。一方、情報検索においては、あらかじめ決められたリンクをたどらなければならないし、あらかじめ付けられたキーワードと一致する情報しか得られない場合がほとんどである。したがって、利用者が検索結果に必ずしも満足することができないことが多い。それに加え、マルチメディアの高品質化、大容量化に伴い、ユーザの要求も高度化することが予想され、現在のクライアント・サーバ方式では、十分な対応は困難である。
 したがって、よりインターネットにおける情報検索、及び提供を有効化するためには、

1 高品位なサービスを提供するアーキテクチャの開発
2 柔軟で効果的な情報検索を提供するミドルウェア開発
3 マルチメディア情報を効果的に表現する制御方式開発の開発が必要である。

アーキテクチャ
 ダイナミックハイパーメディアシステムのアーキテクチャは、次世代の分散マルチメディアアプリケーションに共通の汎用プラットホームとして開発した。このシステムでは、次世代マルチメディアコンテンツの表現方法、及びそのマルチメディアコンテンツの伝送・流通を実現するための汎用プラットホームとして、クライアント・エージェント・サーバ方式によるアーキテクチャを採用した(図1)。この方式での図1中央に位置する知識エージェントは、ネットワーク及びクライアントとマルチメディアデータベースの利用状況を把握し、適切な情報が伝送できるように両者を管理する。また、情報検索において利用者の好みなどを格納したプロファイルを利用して適切なサーバを選択し、利用者のためのマルチメディア情報を自動的に作成する機能を持っている。図1左側に位置するクライアントエージェントは、マルチメディア情報のインタラクティブな制御を行う機能がある。図1左側に位置するマルチメディアデータベースは、標準の検索言語による通信が可能であれば特定の種類に依存しない。

図1 ダイナミックハイパーメディアシステム構成図

ミドルウェア技術
 ユーザの要求に柔軟に対応し、次世代マルチメディアコンテンツを提供するために、ユーザの感性などの情報を知識ベースとして管理するエージェントによる情報検索技術を開発した。この技術を用いて、検索エンジン、データベースを分散化し、処理の負荷分散及び知識の専門処理による、より質の高い情報提供が可能となった。この技術の応用例として、制作者が観光地を強くアピールしたコンテンツを、ユーザが「広大な」などの感性語による検索が可能な、観光案内システムのプロトタイプを構築した。図2では、左側のウィンドウは従来のブラウザホームページを表示しており、右側のウィンドウには、静止画像、動画像、及び文字が時間的関連をもって自動的に表示されている。検索の目的を絞り込むためのウィンドウが中央に表示されている。


図2 ユーザインターフェイスの例

ユーザインタフェイス
 次世代マルチメディアコンテンツの表現方法として開発した技術では、放送番組作成の考え方によるコンテンツ製作を可能とするシナリオ、シーンの概念を導入した表現方法を定義し、書籍と放送番組を組合せたホームページ製作を可能にするインターネットブラウザ対応の制御言語HMML(HyperMedia Markup Language)を開発した。この言語は、現在インターネットで使用されているHTML(HyperText Markup Language)及びSMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)をベースとしたタグベースのものであるが、イベント、アクションを追加することにより、インターネット上でより豊かなマルチメディア表現が可能となった(図3)。


図3 HMMLで使用できるタグの例

むすび
 本技術では、ハイパーメディアシステムとエージェントを統合し、ユーザのためのシステムを実現することができた。今後、このシステムを普及させるために、開発した言語によるマルチメディア表現方式の標準化が当面の課題である。



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