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観光スポット推薦システム「京のおすすめ」 ユニバーサルコミュニケーション研究所 情報利活用基盤研究室 研究員 杉浦 孔明

はじめに

京都やパリ、ローマに代表される観光地を訪れる場合、多くの旅行者はガイドブック、ウェブサイト、口コミなどから情報を収集し、訪れるスポットを決めています。これらの都市には多くの観光スポットが存在するため、観光スポットをリストアップし、好みに合致するかを調べるためには時間と労力が必要です。

このような背景から、観光プラン立案をサポートする音声対話システム「HANNA(はんな)」と、HANNAの観光スポット推薦機能をスマートフォンアプリ化した推薦システム「京のおすすめ」を、我々は構築してきました。「京のおすすめ」では、気分(癒されたい、リフレッシュしたいなど)、体験したいこと、味わいたい雰囲気、観光スポットの特徴、に関連した項目を選択することにより、京都の観光スポットの推薦を手軽に受けることができます。通常の検索では気分などの主観的な基準での検索は困難ですが、本システムは主観的および客観的な基準を組み合わせて推薦が可能です。

評価グリッド法による評価構造の構築

どのような評価項目を基準に観光スポットが選択されているのかを調べるため、24名の被験者に対する評価グリッド法による面接と、1,000名の被験者に対する非対面アンケートを行い、137の評価項目(「世界遺産であること」「有名でないところ」など)を抽出しました。次に、4,000名の被験者にアンケートを行い、評価構造(図1)のトポロジーとリンクの重みを統計的有意性を基準として決定しました。この評価構造は、具体的な特徴(「公園」など)と抽象的な価値(「リラックスできる」など)の間の階層関係を定量化したものです。

図1 京都の観光スポットに対する評価構造
図1 京都の観光スポットに対する評価構造

観光スポットの推薦

図2の左図は、システムの初期画面を示したものです。まず、ユーザは「気分」、「体験」、「雰囲気」、「スポットの特徴」の4つのカテゴリのいずれかを選択します。次に、図2の中図においてカテゴリ内の評価項目をユーザが選択します。スポットのスコアは各項目が独立であるとの近似のもと、選択された評価項目について条件付き確率の積を求めることで計算します。各観光スポットのスコアが計算されて画面下部にランキングが表示されます。また、150箇所のスポットの基本情報・動画・歴史などを閲覧することが可能です。

図2 「京のおすすめ」の動作画面
図2 「京のおすすめ」の動作画面
(左: 初期画面 中: 項目選択画面 右: スポット基本情報画面)

おわりに

情報過多時代である今日、ネットワーク上に溢れる膨大な情報の中からユーザに有益な情報を提供することが求められています。これまで、「京のおすすめ」は2万回以上ダウンロードされたほか、2013年2月28日からは京都市産業観光局が運営する観光ポータルサイト「京都観光Navi」に我々の開発した推薦アルゴリズムが導入されるなど、研究成果を幅広く使っていただいております。今後、多種多様なデータに対する情報利活用を目指し、情報推薦技術の研究開発を推進していきたいと考えています。

杉浦 孔明 杉浦 孔明(すぎうら こうめい)
ユニバーサルコミュニケーション研究所 情報利活用基盤研究室 研究員

大学院博士課程修了後、学術振興会特別研究員を経て、2008年、NICT入所。ロボット対話、音声対話システム、機械学習などの研究に従事。博士(情報学)。
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