Ubieがアクセシビリティ向上に取り組んでいる理由を教えてください。
大木:我々は、アクセシビリティを単なる配慮でなく、障害者を含む誰もが医療情報へ平等にアクセスできることを実現するための必須条件と考えています。「ユビー」を通じて、誰もが安心して医療情報にアクセスし、得た情報を利用できる社会を目指しています。
Ubieは創業からしばらくの間、病院向けのシステム開発をしていました。最初のプロジェクトは「タブレット問診」という仕組みの開発で、問診情報を紙の問診票に記入する代わりに、タブレットやスマートフォンを簡単に操作して入力できるようにするものでした。
タブレット問診のアプリから、患者が名前や年齢、既往歴などをタップ操作して入力すると、その情報をすぐに病院のシステムが取り込み、医療従事者が活用できる形に整理するというものです。このシステムを設計するにあたり、高齢者も扱いやすいものになるように、直感的に操作できる画面デザインを重視しました。高齢者向けのユーザーインターフェースを設計する過程で、アクセシビリティが欠かせないテーマとして位置づけられるようになりました。
さらに、一般利用者向けのサービスとして、症状検索エンジン「ユビー」が生まれました。この検索エンジンは、ユーザーが自分の症状を入力すると、関連する病気や診療科の候補を提示します。また、「病気のQ&A」というウェブサイトも立ち上げ、病気や症状に関する質問に対して、「ユビー」に登録している医師が直接回答できるようにしました。様々な診療科の専門医が在籍しており、「ユビー」の回答者として契約していただいています。さらに、充実した薬の情報や副作用に関する医師監修の記事も掲載し、医療情報を必要とする人々の多様なニーズに応える仕組みを整えています。
2022年から2023年にかけて、我々は、「ユビー」のアクセシビリティを高める取り組みに注力しました。特に、スクリーンリーダーを利用する視覚障害者や日本語の理解にハンディキャップを抱える方に対応できるようにするための設計を行いました。この取り組みに外部のアクセシビリティアドバイザーも加わり、チーム一丸となって改良を進めました。
具体的には、スクリーンリーダーを使用する視覚障害者の操作感を検証しながら、情報の読み上げ順序や画面設計を見直しました。その結果、視覚障害者の利便性が向上すると同時に、一般の利用者にとっても直感的に操作しやすいデザインが生まれました。このような取り組みを通して、アクセシビリティの向上は、全体のサービス体験を向上させるものだと確信しました。