デフリンピックを見据えて本格導入へ。東京地下鉄とヤマハが協働で挑んだ「みえるアナウンス」開発秘話(1/4)

1.なぜ駅のアナウンスを「見える化」する必要があったのか -東京地下鉄が全駅導入に踏み切った理由-

『みえるアナウンス』はどのようなサービスですか。

大庭(東京地下鉄株式会社 以下、メトロ):『みえるアナウンス』は、専用アプリやアカウント登録を必要とせず、駅構内アナウンスを多言語化・文字化できるサービスです。駅構内に設置された専用パネル「トリガーボード」やホーム上に貼付されている「ステッカー」を、利用者自身のスマートフォンをかざしたり、QRコードを読みこんだりすることで、その駅で放送されたアナウンス内容を確認できます。駅係員が「おもてなしガイド for Biz」を使って放送したアナウンスが、日本語・英語・中国語・韓国語などの13言語で文字表示される仕組みです。

2024年1月から試験期間を経て、同年10月31日に『みえるアナウンス』を本格導入されたと伺いました。導入以前は、どのような課題を感じていましたか。

大庭(メトロ):当社では以前から、聴覚障がい者への情報提供に加え、増加する訪日外国人に対しても、必要な情報を的確に届けることに課題を感じていました。そうした中で、ヤマハが提供する事業者向けサービスの「おもてなしガイド for Biz」を導入するタイミングがありました。その際に一般向けサービスである『みえるアナウンス』の存在を知り、当社が抱える課題に対して有効ではないかと考え、まずは試験導入を行いました。その後、本格導入となりました。

 導入後はどのように展開していくか検討し、東京デフリンピック2025(以下、デフリンピック)の開催に合わせて、全駅への導入*を決定しました。

*他社への管理委託駅(日比谷線北千住駅、中目黒駅、中野駅、西船橋駅、代々木上原駅、和光市駅、半蔵門線・副都心線渋谷駅、目黒駅)を除く171駅に導入。

ヤマハにおいて『みえるアナウンス』は、いつ、どのような経緯で開発されたサービスでしょうか。

森口(ヤマハ株式会社 以下、ヤマハ):当社では、「音のユニバーサルデザイン」という取り組みを2015年頃からスタートさせています。音響機器や楽器など音を扱う企業が果たすべき社会的使命は何かを考えたとき、「言語や聴力に不安のない社会の実現」という理念に行き着きました。その理念のもと、2017年10月には「SoundUD推進コンソーシアム(現:SoundUDコンソーシアム)」*を立ち上げ、業界や場所を問わず、さまざまなシーンで活用できるアナウンスサービスの開発を進めてきました。
当初は多言語アナウンスサービスを中心に展開していましたが、実際に利用してもらう中で、「アナウンスの内容を文字でも確認できるとよい」という声が寄せられるようになりました。他にもいくつかの要望を受けて改良し、2023年12月にリリースしました。

*ヤマハが開発・提唱し、音のユニバーサルデザインを実現するテクノロジーとサービスの総称。音のある空間と特定の情報やサービス、その空間にいる利用者をつなげることで、情報伝達をスムーズに行うことができる。

駅構内に設置されている「トリガーボード」にスマートフォンをかざすか、QRコードを読み取ることで、構内アナウンスが文字で表示される
サービスの仕組み。駅係員「みえるアナウンス」を通じて発信した情報が、トリガーボードのQRコードなどを読み取ることで、スマートフォンにアナウンスが表示される