デフリンピックを見据えて本格導入へ。東京地下鉄とヤマハが協働で挑んだ「みえるアナウンス」開発秘話(2/4)

2.緊急時でも、「今、何が起きているか」がすぐに伝わる。数秒で届く『みえるアナウンス』の強み

『みえるアナウンス』にアクセスするための「トリガーボード」は、駅のどのような場所に、いくつくらい設置されているのでしょうか。

大庭(メトロ):当社の駅施設は、スペースが限られている駅も多く、全駅で同じ場所に設置することは難しいのが実情です。そのため、基本的には改札内外にそれぞれ1枚ずつ、加えてホームには6枚をタッチしやすい位置に設置しています。利用者が非常に多いことから、人の流れを妨げない場所や、インターフォンがある場所を主な設置ポイントとしています。トリガーボード自体はそれほど大きなものではなく、常に周囲を見ながら歩いている人ばかりではないため、認知の向上が必要だと感じています。必要としている方にきちんと届くサービスとして知っていただくことが、現時点での課題だと認識しています。

緊急性が高いアナウンスを発信する場面ではどのように対応していますか。

大庭(メトロ):すぐに案内を出せるよう、約200種類の定型文をあらかじめ登録しています。そのため、緊急性の高い状況下でも、駅係員が迅速に情報を発信できる仕組みになっています。また、定型文を用いることで、どの駅でも共通した文言で案内できる点も大きなメリットです。日本語に加え、英語・中国語・韓国語の3言語についても、同様に定型文として登録しています。一方で、想定外の事象が起こる可能性もあるため、状況に応じた案内に対応することも重要だと考えています。

駅係員が発信した情報は、どれくらいの時間で『みえるアナウンス』に反映されるのでしょうか。

森口(ヤマハ):数秒程度で表示されます。これは日本語だけでなく、他言語表示も同様です。
このサービスの大きな強みは、複数言語を同時に一斉配信できる点にあります。定型文やテンプレートとして登録されている文言は、すべて事前に翻訳を済ませたものを使用し、この表示速度を実現しています。この仕様にした理由の一つが、スピード感を重視したかったからです。迅速な情報配信を行うためには、あらかじめ文言を登録しておくことが不可欠でした。

また、事前翻訳とすることで、誤訳リスクを下げる狙いもあります。クオリティの高い翻訳データを用いているため、多他言語表示においても誤認のリスクも低減できています。さらに、駅係員が肉声でアナウンスを吹き込み、それを配信できる機能もあります。肉声で登録した内容も自動翻訳機能を用いて多他言語に変換できますが、その場合は表示までのスピードが若干遅くなります。
ただし、翻訳内容を確認する機能や、英語を日本語に戻して意味が通じるかを確認できる仕組みを備えており、誤った情報を伝えるリスクを極力抑えられるよう配慮しています。

2025年4月以降、171の全駅に導入されたとのことですが、導入後の滑り出しは順調でしたか。想定と異なる点はありましたか。

大庭(メトロ):もともと駅執務室にはiPadが設置されており、駅係員はそれを通じて、駅構内アナウンスを含むさまざまな業務を行ってきました。そのデバイスを引き続き使用できることから、比較的スムーズに受け入れられたと感じています。
また、サービス自体が直感的に使える仕様で、操作性に優れている点も受け入れやすさにつながった理由の一つです。導入にあたっては、課題等について随時意見交換を行いながら進めてきたため、全体としては順調に導入できたのではないかと考えています。

駅の改札内外に1枚ずつとホームに6枚設置されている「トリガーボード」