デフリンピックを見据えて本格導入へ。東京地下鉄とヤマハが協働で挑んだ「みえるアナウンス」開発秘話(3/4)

3.現場の声から生まれた改善。試行錯誤の中で見えてきた課題と工夫

試行錯誤した点や苦労したこと、想定と異なった点があれば教えてください。

 

大庭(メトロ):試験導入の段階では、利用者だけでなく、駅係員からもさまざまな課題が挙がりました。
 その一つが、「他の業務を行いながら、繰り返しアナウンスをしなければならない」という点です。事故や遅延などが発生した場合は同じ内容を何度も伝える必要があり、他の業務と並行すると煩雑になるという声がありました。そこでスムーズな業務運営のために、ヤマハに「リピート機能」の搭載を依頼しました。この機能では、アナウンスの時間やタイミングを任意に設定できるため、駅係員がその都度操作を行う必要がなくなります。その結果、アナウンス漏れを防ぎつつ、必要な情報を確実に届けられるようになりました。

 また、「自然な文章で伝える」という点にも苦労し、同時にこだわった部分でもあります。ただ、導入そのものに大きなハードルはなく、トリガーボードに掲示されたQRコードを読み込むだけで、聴覚障がい者や訪日外国人にも情報を届けられる手軽さが魅力だと感じています。

 

森口(ヤマハ):当社としては、一度配信した文字情報を、「いつ、どのタイミングで消すか」という判断が難しい点でした。たとえば、「この情報は1日中表示すべきなのか」「翌日以降も継続して表示する必要があるのか」など、内容によって適切な表示期間が異なります。その基準は、東京地下鉄だけでなく、本サービスを利用している他社とも共通のルールとして定めているため、バランスを取るのに苦労しました。
もちろん、運用を始めてみて初めて見えてくる課題も多くありました。当初は「この期間で取り消そう」と考えていたものが、実際の運用では「こちらの方が良いのでは」「各社で判断できる仕様にした方がよいのでは」となることもありました。こうした点については、日々改善を重ねながら、より良い形へとアップデートしているところです。

 

デフリンピックに合わせて実装された機能はありますか。

 森口(ヤマハ):肉声でのアナウンス登録機能です。定型文だけでは対応しきれない、想定外の事象が発生することもあるため、「音声認識機能があるとよいのではないか」という声が上がっていました。このような要望は東京地下鉄に限らず、他社からも寄せられていたものです。そこで、デフリンピックの開催を一つの節目として、本格導入に踏み切りました。本格導入に先立ち、2025年に開催された2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)のアナウンスとして試験導入をしており、その検証結果を踏まえ、デフリンピックのタイミングで正式に搭載されました。

『みえるアナウンス』には、リピート機能も搭載されており、任意の間隔や時間でリピート再生が可能