デフリンピックを見据えて本格導入へ。東京地下鉄とヤマハが協働で挑んだ「みえるアナウンス」開発秘話(4/4)

4.さらなるバリアフリー社会の実現へ。東京地下鉄とヤマハが見据える次の一歩とは

『みえるアナウンス』の利用者からはどのような感想が聞かれましたか。

 大庭(メトロ):特定のアプリをインストールする必要がない点に、非常に高い評価をいただいています。デフリンピックという国際的な大会が開催される中で、より安心して駅を利用できたという声もいただいており、このサービスが一助になったと感じています。

両社において、どのような未来や展望を描いていますか。

 森口(ヤマハ):当社では、聴覚障がい者や訪日外国人に限らず、すべての人に対して、「情報へのアクセス性をいかに高めていくか」が今後ますます重要になると考えています。
現在も、情報にアクセスしにくい状況に置かれている方は少なくないと感じます。そうした方々に向けて、さらに裾野を広げていく必要があると認識しています。今後は、AIをはじめとした最新技術の活用によって利便性を高めると同時に、東京地下鉄のような事業者の業務負担を軽減していくことも重要です。そうした取り組みが積み重なることで、よりインクルーシブな社会の実現につながっていくと考えています。当社としても、その一助となれるよう、今後も継続的に取り組みを進めていきたいと思います。

大庭(メトロ):全駅導入が完了したのは、2025年11月中旬でした。そのため、現在もなお、取り組むべき課題は多く残っていると認識しています。とりわけ非常時の活用という点では、音声認識による配信機能を搭載していることがとても心強いです。日々の駅運営では、定型文だけでは対応しきれない状況が少なからず発生します。そうした場面において、聴覚障がい者や訪日外国人が十分な情報を得られない状態になってしまうことは、避けなければなりません。「何かが起きているようだが、何が起きているのかわからない」という状況は、移動する人に大きな不安を与えます。その不安を一つでも減らしていくことが、私たち公共交通事業者の果たすべき役割だと考えています。そのゴールを見据えたとき、今後どのように活用するかは継続して向き合っていくべき重要なテーマです。今回、ヤマハの協力を得ながら全駅導入を実現し、導入後には多くの方にもご利用いただき、デフリンピックの主催者である国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)のアダム・コーサ会長からも一定の評価をいただくことができました。

 今後の展望として、「駅に行けばこのサービスがあるから、安心して移動できる」と、より多くの方に感じていただけるよう、認知の向上に力を入れていきたいと考えています。そのためには、当社単独の取り組みにとどまらず、業界全体として、移動するすべての人に安心していただける環境づくりを着実に積み重ねていきます。『みえるアナウンス』で誰もが必要な情報に等しくアクセスできる駅を目指し、これからも利用者の声に耳を傾けながら、より良い移動体験の実現に取り組んでいきたいと考えています。

取材協力:東京地下鉄株式会社/ヤマハ株式会社
取材日:2025年12月