健康寿命を伸ばすための社会インフラへー筋力から高齢者の“変化の予兆”を捉える見守りの新しいかたち(1/4)

1.お得意様の孤立死を機に感じた、見守りサービスの重要性

お得意様の孤立死*がきっかけとなり、「居宅で暮らす高齢者の筋力変化を遠隔で継続して把握できるシステム『つまモーネ』」の開発をスタートしたと伺いましたが、どのような部分に心を動かされたのでしょうか。

  私は松下電器産業(現・パナソニック株式会社)に入社後、街の電器店での研修を経験しました。その後、営業として配属されましたが、法人向けのシステム営業は、「システムを正しく納品して当たり前」の世界です。ミスをすれば叱られることはあっても、褒められることは決してありませんでした。そうした環境で仕事を続けるうちに、「人に喜んでいただける仕事がしたい」という思いを強く抱くようになりました。

 高齢者向けのシステム開発をしたいという考えは、そうした中で生まれました。しかし、高齢者の暮らしを理解しないままでは、技術先行型の開発になってしまいます。それでは面白くないと感じ、まずは多くの高齢者の生活状況を知る必要があると考えました。そこで、街の電器店として生活現場に立ち、その経験をもとにシステムを開発することが、非常に相性が良いのではないかという考えに至ったのです。そして2009年12月、47歳のときに思い切って電器店を開業しました。幸いにもお得意様は日増しに増え、楽しく仕事をしていました。そんなある日、いつも店の前を通るたびに手を振ってくださっていた方が、2日ほど姿を見せないことがありました。「何かあったのではないか」と心配になり、自宅を外から確認すると電気が点いていたため、「大丈夫そうだ」と安堵しました。しかし、それは大きな間違いだったのです。数日後、その方が孤立死されていたことを知らされました。「人の役に立ちたい」と思って街の電器店を始めたにもかかわらず、何もできなかったことを、私はひどく悔やみました。

 この出来事をきっかけに、2014年11月、「一人暮らしの高齢者見守り」に特化したシステム開発をスタートさせたのです。


*誰にもみとられることなく、かつ、その遺体が一定期間の経過後に発見されるような死亡。