どのような活動を展開されているのか、具体的に教えてください。
林:代表的な活動は、自助具のデザインデータや情報を集め、利用者や支援者が簡単にアクセスできるオンラインのプラットフォーム「COCRE HUB」の運営です。
「COCRE HUB」は3Dプリンターを活用した自助具の製作と普及を支援するための場です。大きな特徴は、全国の利用者や支援者が必要とする自助具の3Dモデルデータを必要に応じて無料でダウンロード・活用できる仕組みが整っている点です。
現在、約200種類の自助具に関するデータを公開しており、障害のある方々が日常生活で直面する様々な課題に対応できる道具を揃えています。握力が弱い人向けの食事用具や片手で使いやすいボタンエイドなど、多様な自助具を製作できることで、生活の質を高めるサポートを行っています。
そして、「COCRE HUB」の地図上に全国の協力者(コラボレーター)の位置を表示し、利用者の住む地域の近くにいる協力者のサポートを受けやすくする仕組みも提供しています。協力者は、3Dプリンターを活用した自助具の製作・提供に協力する支援者であり、3Dプリンターを持たない利用者に代わって支援具を製作・提供する役割を担っています。

障害のある方が「COCRE HUB」から自助具のデータをダウンロードしたものの、近くに3Dプリンターがない場合、協力者がその支援具を作成し、届けるサポートを行います。地域密着型の支援を実現するとともに、全国で協力者のネットワークが広がり、地域ごとに自助具提供の体制を整備していることが、「COCRE HUB」の特徴です。
また、「COCRE HUB」で3Dプリンターの利用方法やデータのカスタマイズ方法も学べる学習コンテンツも提供しており、利用者や支援者が自分のニーズに応じた支援具の調整をしやすくしています。
「COCRE HUB」は、単なるデータ共有の場にとどまらず、全国の支援者がつながり、知見や技術を共有し合う「共創の場」としても重要な役割を果たしています。利用者は自身の生活を支える道具を自ら選び、地域にいる協力者の支援を受けることで、自助具がより多くの人に役立つものになるよう工夫されています。「COCRE HUB」を通じ、障害者支援に必要な道具の提供が進むだけでなく、支援の輪が全国に広がり、地域社会全体で障害者の生活を支える体制を構築しています。