障害のある社員と築く、多様性を活かした職場。社会課題解決に特化したデザイン・企画制作会社「方角」が実践するインクルーシブな働き方(2/4)

2 障害者支援を軸にしたデザインの実践と成果

現在、「方角」ではどのような仕事を請け負っているのでしょうか?

 方山:現在、企業から請け負う仕事は、聴覚障害者向けのプロジェクトをサポートするものが多くなっています。他には、アクセシビリティに配慮したWebデザインの制作を手掛けるケースや、NPO法人の活動報告書や統合報告書の作成業務が多いです。当社は、聴覚障害者が利用しやすいレイアウトや色使いのデザインを得意としています。また、制作したWebデザインやコンテンツが失礼なものになっていないか、誤解を生まないかといった点を精査することも重要な役割です。

 例えば、「聴覚障害者支援に関する取り組みをしたいが、どこから始めてよいかわからない」という相談を受けることがあります。その場合、企画段階から伴走し、具体的な表現やアウトプットの方法を提案しています。

当事者の声をどのようにWebデザインに反映させていますか?

方山:どの仕事においても、当事者の方々から協力を得ることを大切にしています。例えば、新しいプロジェクトを進める際、「この色合いは見やすいか」、「手話の動きが自然に感じられるか」といった具体的な意見を得て、それをWebデザインに反映しています。

デザインの目的は、利用者にとって使いやすく、役に立つものにすることです。一般的なデザインの制作では、当事者の声が反映されないまま、作り手の視点で進むことが少なくありません。しかし、当事者の意見を取り入れることで、制作するWebデザインが単なる見た目の美しさだけでなく、実際に役立つものになります。当事者視点を重視することにより、必要な情報を的確に届けるデザインが実現できると思っています。

ー具体的な成果はどのようなものですか?

方山:例えば、企業の研修用資料を制作したとき、「当事者の視点がわかりやすく伝わる」と評価をいただきました。また、Webデザインを精査したことで、企業が聴覚障害者に安心して提供できるアウトプットを作れたことも多くあります。当事者から「自分たちのために作られていると感じる」という声をいただくと、このアプローチの重要性を改めて実感します。

学生時代やフリーランス時代に、他者の課題や要望を形にしたことで感謝された経験があり、「デザインは人を喜ばせたり、助けたりできる手段だ」と確信したと振り返る、方山さん