障害のある社員と築く、多様性を活かした職場。社会課題解決に特化したデザイン・企画制作会社「方角」が実践するインクルーシブな働き方(3/4)

3 障害の有無を問わない。多様性を支える環境と採用の工夫

「方角」の社員の約8割が障害のある方と伺いました。社員の採用方針について教えてください。

方山:現在、社員の約8割に何らかの障害があります。視覚と聴覚の両方に障害のある盲ろう者も在籍しています。当社は「障害があるから特別に扱う」という考えを一切していません。一緒に働く障害者に必要な配慮を行っていますが、採用時に重視することは、「この人と一緒に働きたいかどうか」という点です。

多様な背景を持つ方々が働きやすい環境を整えるため、どのようなことを実践されているのでしょうか?

方山:当社はフルリモートワークを基本としており、リアルタイムでメッセージのやり取りやファイルを共有できるビジネス向けチャットツール「Slack(スラック)」、オンラインでビデオ会議ができるツール「Zoom(ズーム)」を活用したコミュニケーションが根付いています。

特に、電話を使うことが難しい聴覚障害のある社員は、Slackを使ってテキストにした情報を共有することで、円滑なコミュニケーションを実現しています。また、Zoomを使った会議で、私が簡単な手話を交えながら会話したり、必要に応じて文字起こしツールで議事録作成や会議内容の要約作成も行っています。

これらの対応は、特別な配慮というよりも、当たり前のこととして定着しています。このように、障害の有無に関わらず、能力や相性を基準に採用を行っている点が当社の特徴です。

多様な社員が集まることで生まれる相乗効果やメリットは何でしょうか?

方山:障害のある方が多く集まることで、一人ひとりが得意な分野を活かし合える環境ができていると思います。例えば、視覚障害のある社員は、音声読み上げツールを駆使して資料を作成したり、聴覚障害のある社員は、手話やチャットを活用して的確な意見を出したりと、各自が自分のやり方で成果を上げています。

最近、本人のやりたいという意志を尊重し、当社の仕事で必要となるスキルが足りなくても可能性を信じて業務を任せています。結果的に、想像以上の成果を出してくれることが多く、障害を理由に可能性を限定しない方が、社員のモチベーションや自己成長にも繋がっていると感じます。