「オンライン手話通訳サービス」を開発されたきっかけを教えてください。
オンライン手話通訳サービスを開発した背景には、大きく分けて二つあります。
一つ目は、2024年に施行された「障害者差別解消法」です。ただし、同法の施行をきっかけにサービス提供を始めたわけではありません。以前から、聴覚障害者が直面する困りごとや課題に対して、「私たちにできることはないか」と考え続けてきました。その中で、「合理的配慮*1を具体的に形にできるサービス」として、オンライン手話通訳サービスの提供を決断しました。これまでのサービス開発では、他社の既存システムやプラットフォームを活用してきましたが、本サービスは初めて自社でシステム開発を行う試みとなりました。弊社にとっての新たなチャレンジとして、開発に踏み切りました。
二つ目は、私自身がCODA*2(コーダ)であることです。耳の聞こえない両親のもとで育つ中で、私は幼い頃から、両親がさまざまな場面で感じてきた不便さやもどかしさを身近に感じてきました。職場や日常生活の中で、「音声が聞こえない」「自分の思いを十分に伝えられない」と感じる場面が多く、手話通訳を利用したくても多くの制約によって使えない現実があることを、長年近くで見てきたのです。このような課題は両親に限ったものではありません。職場や企業の窓口、店舗、公共機関など、手話を第一言語とする人の多くが、「本当は手話でコミュニケーションを取りたいが、それが難しく、やむを得ず筆談で対応している」という状況に置かれています。そして、中には筆談が得意ではない人もいます。だからこそ、私は以前から、「手話を第一言語とする人が、無理なくコミュニケーションできるサービスを提供したい」と考えてきました。
こうした原体験も後押しとなり、今回、オンライン手話通訳サービスの提供をスタートさせました。
*1:障害のある人が日常生活や社会生活で受ける障害(バリア)を取り除くため、障害の特性や困り事に合わせて、事業者や学校などが「過重な負担にならない範囲」で、柔軟な対応や調整を行うこと
*2:Children of Deaf Adultsの略。聴力に障害のある親のもとで育った、健聴者の子どもを指す
開発にあたって意識したことを教えてください。
開発にあたって、特に意識したポイントは二つあります。
一つ目は、「聞こえない人にとって使いやすい仕様であること」です。オンライン手話通訳サービスが必要とされるのは、窓口対応や接客の場面、あるいは何か困りごとが生じた際など、急を要するケースがほとんどです。そのような状況になってから特定のアプリをインストールしなければならないとなると、利用者に新たな負担が生じてしまいます。そこで利便性を重視し、QRコードの読み取りやブラウザの起動だけで、すぐに手話通訳者と繋がる仕様としました。
二つ目は、「オペレーターが手話通訳しやすい仕様であること」です。オペレーター側も、操作が複雑だと通訳そのものに集中しにくくなってしまうため、できるだけシンプルで直感的に使える設計を意識しました。
その結果、オンライン手話通訳サービスは聴覚障害者と手話通訳者の双方にとって使いやすいサービスになっているのです。
