親の「監視されたくない」気持ちに応える。テレビで見守りと会話を両立する「ちかく」が支える家族の自然なつながり(4/4)

4 「ちかく」で「デジタル同居」を実現し、隣の部屋にいるような距離感をつくる

「ちかく」が実現する、「デジタル同居」とは、どのような考え方なのでしょうか。

 梶原:一緒に暮らしていれば、わざわざ連絡を取らなくても相手の気配が分かりますよね。例えば、隣の部屋に誰かいれば、ずっと様子を見ているわけではなくても、そこにいることは何となく分かりますし、話したくなったらドアを開けて声をかけられる。一緒に暮らしていると、そうした自然な距離感があります。

 ところが、離れて暮らすとその感覚を持つことが難しくなります。電話をかけようとしても、相手が今何をしているのか分からないまま呼び出すことになる。「ちかく」を使用すれば、まず親御さんがテレビのある部屋にいることが分かり、「今日もいつもどおり過ごしているな」と気配を感じられます。そのうえで、「少し話してみようかな」と思えば、そのままテレビ電話で声をかけることができます。

 物理的には離れていても、まるで隣の部屋に暮らしているように、互いの気配を感じながら自然につながれる。私たちは、そうした家族のあり方を「デジタル同居」と呼んでいます。「ちかく」を通して、離れて暮らしていても家族が普段どおりに関わり合える関係を支えていきたいと考えています。

今後は、どのようにサービスを進化させていきたいですか。

 梶原:これまでにも、お客様の声をもとに複数人で会話できる機能や、着信音なしで親御さんの生活を邪魔せず、様子を確認する機能などを追加してきました。今後も「ほかの部屋の様子も見守りたい」といったニーズをはじめ、実際の利用場面から生まれる声を取り入れながら、サービスを進化させていきたいと考えています。

 もう一つ、大きな可能性を感じているのがAIの活用です。お子さんが電話をする背景には、安否確認をする意図だけでなく、「親にできるだけ会話をする機会を持ってほしい」という思いもあります。将来的には、AIを端末に組み込むことで、テレビが高齢の方の話し相手になったり、インターネット上の情報を活用して日々のちょっとした困りごとの解決を支えたりする。そんな形へと「ちかく」を発展させていくことも考えています。
 

取材協力:株式会社チカク
取材日:2026年7月

Appleでプロダクトの開発に携わっていた梶原さん。高齢者に新しい技術の使い方を覚えてもらうのではなく、これまでの暮らしの中に自然になじむものという視点を大切にしていると話す