大学発スタートアップが研究成果を商品化。デフリンピックで実証実験、ウェアラブル触覚デバイス「Hapbeat(ハップビート)」開発秘話(3/4)

3.半年での商品化と多様なラインナップ。その背景にある開発秘話とは

どのような過程を経て、触覚デバイスをネックレス型の仕様に決めたのでしょうか。

 当初は、振動を胴体で感じてもらうためにベルト型のデバイスを開発し、モーター部分のみを備えたプロトタイプを製作しました。その後、ベルトと一体型のプロトタイプも製作しましたが、胴体に巻き付けるタイプは普段使いが難しいと感じるようになりました。そこで行き着いたのがネックレス型です。ネックレス型であれば脱着が簡単で、服の影響も受けにくくなります。現在、商品ラインナップにはバンド型もありますが、主流はネックレス型です。

開発から商品化までは、どれくらいの時間がかかりましたか。

 ネックレス型デバイスの最初のプロダクト「Solo」の開発には、およそ1年を要しました。動作確認が可能なプロトタイプ自体は1~2か月程度で制作できました。しかし、その後のテストや、製造を簡便に行えるよう設計を見直すなど、不特定多数の方に販売する製品として仕上げるためには、想像以上に多くの工数と調整が必要でした。当時は回路基板の設計にもまだ不慣れだったこともあり、その点も時間を要した要因の一つです。次のバージョンである「Duo 2」 においても、開発期間はおおむね1年でした。この際、マイコン制御への移行やバッテリー内蔵化など設計を根本から見直しており、その分調整にも時間がかかりました。
一方で、「Duo Wireless」は、「Duo 2」とメカ構造がほぼ共通だったため並行して開発を進めており、この期間にも含まれています。体感として商品化までの目安は、大きなアップデートを伴う場合で約1年、マイナーチェンジであれば3~6か月程度といったところでしょうか。ただし、これは見積台数がせいぜい数百台規模であることを前提とした話であり、一般企業が手がけるような数万台規模の製品開発であれば、2~3年かかっても不思議ではないと想定しています。

現在は商品バリエーションも豊富ですが、どのような経緯で各デバイスが生まれたのでしょうか。

 ネックレス型デバイスは汎用的に使え、誰でも簡単に扱えるものとして位置づけて開発しました。当初は上位モデルの「Duo 2」のみでしたが、「Duo 2」だけでは利用者の選択肢が狭まってしまうのではないかと考え、廉価モデルの「Solo 2」も開発しました。
そのため、「Duo 2」と「Solo 2」は商品バリエーションというより、価格バリエーションを意識したラインナップといえます。これらは有線モデルですが、現在は無線モデルの「Duo Wireless」も展開しています。また、バンド型についてはコンテンツによっては腕など、胴体以外に装着したほうが適している場面もあると考えて製作しました。主に、施設における確実な危険通知や、VR施設での触覚フィードバックを想定したモデルです。有線では利用シーンが限られ現実的ではないため、無線化が最適だと判断しました。現在のバンド型は無線仕様で、腕や脚、胴体など、身体の任意の部位に装着できるようになっています。

商品開発にあたって、特に難しかった点はありますか。

 開発の過程で、まったく苦労がなかったというわけではありませんが、どうしようもなくなって途方に暮れるような場面はありませんでした。その都度、課題に直面しながらも、一つずつ解決していくことができたという感覚です。
一方で、振動のクオリティの基準については定量化が難しい部分ではありました。触覚デバイスは感覚的な要素が強く、言語化が難しいため、合格ラインの見極めも自然と難しくなります。現在は、プロトタイプの製作や商品アップデートを重ねる中で、「このモーターならこれくらいの振動が出せる」という感覚が経験として蓄積されていますが、今後モーターを変更する必要が出てきた場合は、また苦労するかもしれません。
さらに、購入を検討する人にとって、カタログスペックだけで製品の良し悪しを判断するのは難しいとも感じています。最終的には実際に体験していただかないと伝わりにくいため、どのような振動が得られるのかを言葉で説明する難しさは常に課題です。

「Solo2」プロトタイプ(左)と「Duo2」(右)
上位モデルの「Duo2」(左)、廉価モデルの「Solo2」(右)
無線モデルの「DuoWireless」(左)、手首や足首などに装着可能な「BandWireless」(右)