「shikAI」の仕組みは非常にシンプルだと伺いました。その背景を教えてください。
日本の駅には、点字ブロックがしっかりと整備されています。実はこれは日本の発明品*4で、発明された方が大変な苦労を重ねながら全国に広めていったと聞きます。これほど優れた発明と、すでに整っている環境がある以上、それを活用しない手はないと考えました。ただし、いくら敷設されていても、初めて訪れる場所では「どこを辿れば目的地に着くのか」が視覚障がい者にはわかりません。そこで、その上に「右へ進む」「左へ進む」といった、極めてシンプルな情報を示すQRコードを配置し、その情報をもとにナビゲーションすれば良いのではないか、という仕組みを思いつきました。もちろん、どこにでもQRコードを配置すれば良いわけではなく、重要なのは進路選択が必要になる分岐点です。そこで右か左かを正しく選ぶことができれば、目的地に辿り着くことができます。これが「shikAI」の仕組みがシンプルである理由です。本来、シンプルな情報提供を目指すのであれば、右か左かの情報だけで十分なのです。
一方で、現在の「shikAI」では、あえて「階段が近くなってきました」「次の分岐点まで何メートルです」といった補足的な案内も加えています。音声ガイダンスに加え、バイブレーションでも案内できる点は、付加価値の一つだと考えています。既存の設備を最大限に活かしたDX化、見える化と言っても過言ではないと思います。
*4:1965年に三宅精一氏によって考案、世界初の点字ブロックは岡山県立岡山盲学校近くの交差点に敷設された。
既存の設備を有効活用したDX化のために、貴社がこだわった部分を教えてください。
最もこだわったのは、「視覚障がいをもつすべての方を対象にしたサービスレベルに仕上げる」という点です。まったく目が見えない方であっても、弱視の方であっても、「shikAI」を使えば必ず目的地に辿り着ける。そのレベルに達していなければ、世に出すべきではないと考えていました。新しいサービスを開発しようとすると、実験環境や特定のシナリオでのみ機能するテクノロジーは少なくありません。しかし、そのような限定的な条件下でしか使えないものは、あらゆるシーンで使えるとは限らないのです。技術面だけでなく、利用シーン全体を理解していなければ、結果として限定的なサービスになってしまいます。バリアフリーのためのサービスにおいて、それは許されることではないと考えています。だからこそ、自分たちに厳しい基準を課し、その基準に見合った開発を行ってきました。
当社が「shikAI」の開発で一貫して大切にしてきたのは、「誰でも、確実に目的地へ辿り着けること」です。社会貢献とは、特定の人だけでなく対象となるすべての方に価値を届けることだと思っています。この点は、決して外せない重要なポイントでした。
