100年の歴史を未来へ。ユニバーサルデザインフォントで「読みやすさ」を追求するイワタの挑戦(3/4)

3.読者の声が証明したUDフォントの確かな手応えと未来像

UDフォントを採用した企業からは、どのような反応や感想がありましたか。

阿部:高齢者が読みやすい新聞書体として、「イワタUD新聞明朝」「イワタUD新聞ゴシック」などを新聞社に提供しています。

 新聞社がフォント変更後の具体的な反応は、私たちのもとにはあまり届きません。しかし、長崎新聞の編集局長から直接渡された手紙はとても印象に残っています。

 手紙には、「目に優しく読みやすい本紙UD新聞明朝体文字」というタイトルとともに、「これまで老眼鏡に加えて、虫眼鏡を使わなければ新聞が読めなかったが、書体が変わってからは虫眼鏡なしで読めるようになった」と綴られていました。この新聞社からは「新聞の書体を変えると、読者から必ず何らかの反応が届く。その多くは苦情だが、イワタUD新聞書体に変更した際は、苦情が一切なかった」との感想もいただいています。

 このような反応は、イワタUD新聞書体を採用している他の新聞社でも同様で、「読みやすくなった」という声が届いているそうです。
 また、電子書籍などのディスプレイ上での長文の読みやすさを目標にした「イワタミンゴ」も開発しました。これは電子媒体だけでなく新聞にも採用され、高齢者が読みやすい横組み用として広く使用されています。

UDフォントが目指すべき未来像がありましたら教えてください。

水野:万能なものは、決して存在しません。なぜなら家電の表示、文章の大見出し、小さな本文など、あらゆる場面が存在し、求められる目的が違うからです。ある特定のシーンでは高い効果を発揮しても、別の用途ではかえって読みにくくなることもあります。そのためフォントデザインは、用途や使用シーンにごとに開発する必要があります。

 当社では、顧客と「どの場面で、どのように使うのか」を丁寧に話し合い、それぞれの目的に合った書体を開発することを大切にしています。こうした考え方のもと、現在では外国語対応を含め80種類以上を開発してきました。ただし、これで完成というわけではありません。より多くのシーンに適したもの、また、より最適なものは他にも存在するはずであり、今後も探究と開発を続けていく必要があると考えています。

阿部:配慮したものを開発しようとすると、どうしても汎用性の高いデザインになりがちです。文字の見え方や色の感じ方は人によって異なります。そのため、多様な見え方すべてをカバーしようとすると、デザイナーの表現や感性が制限されてしまうことすらあるのです。それを避けるために、見出しにはUDフォント以外の書体を使い、文字が小さくなる本文にはUDフォントをといった使い分けをします。

UDフォントの一つである、「イワタミンゴ」は、スマートフォンなどの画面が小さいデジタルデバイスでも、見やすさに配慮されたフォント
イワタミンゴは細部まで見やすさにこだわっているのが特長。このように、UDデザインのフォントは細部までのこだわりが読みやすさにつながっている