誰も取り残さない社会へー「障害者支援アプリ」で自治体のDX化を加速させる「ミラボ」の取り組み(2/4)

2.自社開発ならではの強みは、社員の約7割がエンジニアである「ワンストップ開発体制」

アプリ開発において、特に重視した点は何ですか。

 小坂:大きく分けて2つあります。まず1つは「一人ひとりに合った情報が取得できるようにすること」です。利用者ごとに必要な情報は異なるため、それを的確に届けられる仕組みを第一に考えました。もう1つは、2022年5月に施行された「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(通称:障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)に基づいた支援」です。視覚障害、聴覚障害、その他さまざまな特性を持つ方たちが取り残されないよう、アクセシビリティへの配慮を徹底しました。もちろん、障害や特性は人それぞれ異なります。すべての方に100点満点の設計は難しいのですが、開発メンバーで意見を出し合いながらUI(ユーザーインターフェース)を工夫しました。例えば、ボタンの配置や色、操作性はもちろん、色覚特性のある方にも配慮して背景色を変更できるようにするなど、多角的な検討を重ねました。とはいえ、機能を増やしすぎると使いにくくなります。そのため「シンプルでありながら誰も取り残さない設計」を目指すことも重要なポイントでした。また、このアプリは障害のある方や介助する方に向けたものですが、同時に自治体からの依頼によって提供するものでもあります。そのため、自治体の担当者とも丁寧に対話を重ね、「アプリの案内や使い方を説明する自治体の方たちも操作しやすいか」「お知らせ配信や情報更新がしやすいか」という視点も意識しました。

「ミラボ」では「障害者支援アプリ」や「mila-eシリーズ」を自社開発されていると伺いました。自社開発ならではの強みは何でしょうか。

 小坂:一番の強みは、すべてを自社内で完結できる「ワンストップ開発体制」です。設計から開発、データ処理まで一気通貫で行えるので、進行のスピードやレスポンスの速さに直結しています。開発中には相談や調整が必要な場面も多いですが、自社内で即座に解決できることで、自治体からの信頼にもつながっています。さらに重要なのは、実装後の運用やバージョンアップです。アプリは公開して終わりではなく、その後も保守やアップデートが欠かせません。官公庁や自治体案件では外部に再委託するケースも多いのですが、当社は社員の約7割がエンジニアで、障害者支援アプリもすべて自社のエンジニアで対応しています。開発メンバー全員が各自治体の課題や仕様を完全に理解しており、強い思いを持って、継続的に自治体からの要望に対して迅速かつ柔軟に対応できる体制が整っています。これが品質の高さと信頼性につながっていると考えています。