アプリにはさまざまなメリットがあると思います。具体的にはどのような点が挙げられますか。
小坂:2つあります。まず、大きなメリットの一つは、「障害福祉ガイドブックをデジタル化している点」と考えます。現在、障害者には障害者手帳とあわせて100ページほどの冊子が渡され、それをめくりながら必要な情報を探す必要があります。しかし「障害者支援アプリ」には、「障害福祉ガイドブック」が掲載されており、知りたい情報を2〜3回タップするだけでピンポイントにアクセスできます。冊子を持ち歩く必要がなく、紛失の心配もありません。またガイドブックは年1回更新されますが、アプリもそれに合わせて更新されるため、スマホから常に最新の情報にアクセスできます。さらに、この仕組みは障害者や介助者だけでなく、自治体の担当者にも利便性があります。窓口でご案内する際に、同じアプリを操作しながら説明できるため、双方にとってスムーズな情報共有が可能になります。もう一つのメリットは、「診断が確定していない段階の親御さんへの支援」です。小さなお子さんの発達に不安があっても、3歳までは診断がつかないのが現状です。その間、親御さんは漠然とした不安を抱えながら過ごすことになります。アプリを通じて将来的に必要となるかもしれない情報に触れられることは、大きな安心材料になると考えています。また、アプリには「バリアフリーマップ」も搭載しています。たとえば、オストメイト対応トイレ*のあるお店、筆談対応が可能なお店、タブレット注文ができるお店など、バリアフリー対応をしている施設を検索できます。「ここなら行けるかも」と外出のきっかけになることも少なくありません。さらに、自治体からのお知らせ配信や事業所の空き状況なども確認でき、各自治体のニーズに応じた情報提供が可能です。障害者や介助者の方たちにはもちろんですが、自治体にとっても有用な仕組みとなっています。
*処理したときに汚れたストーマ周辺や衣服の洗浄・清拭、ストーマ装具の交換・洗濯・廃棄ができる設備が整ったトイレ(引用:ミライロ通信「多機能トイレにあるオストメイトマークはなに?人工肛門・膀胱とは」)
「障害者支援アプリ」を運用する中で、課題と感じる点はありますか。
小坂:障害のある方は、必ずしも居住する自治体だけのサービスを利用しているわけではありません。近隣の自治体に足を運んで、サービスを越境利用するケースも多くあります。しかし現状の「障害者支援アプリ」は自治体ごとに構築・運用されており、居住地のアプリでは他の地域の情報を得にくいのが課題です。もし近隣の情報も簡単に得られるようになれば、「近いから行ってみよう」という行動につながり、外出や社会参加のきっかけにもなります。私たちは自治体と連携し、地域を越えて必要な情報にアクセスできる仕組みを整え、利用者の利便性をさらに高めていきたいと考えています。
