「視空間認知障害の子どもがきっかけ」ー誰もが安心して外出できるアプリ「LOOVIC」誕生(2/4)

2.人が案内するからこそ生かされる「LOOVIC」のメリットとは

「LOOVIC」は、どのような仕組みになっているのでしょうか。

 「LOOVIC」には、ナビゲーション(誘導)とガイド(案内)の機能が搭載されています。その地域や目的地の情報に詳しく、なおかつ利用する人の特性を理解している人が、アプリ上でナビや音声によるガイドを提供する「ナビガイド」という仕組みです。簡単にいうと、アプリ内のマップ上に”レール”を敷くイメージです。

 たとえば、場所を伝えたい人(支援者)が利用する人のことを想像して、歩きながらガイド音声をアプリにつぶやきながら案内すると、その音声が位置情報と連動します。当社はこれを「音声ナビガイド」と呼んでいます。その場所に行きたい利用者は、支援者がつぶやいて出来上がった音声ナビガイドをたよりに進むことができます。「この先まっすぐに進むとコンビニエンスストアがあります」といった景色情報と連動した音声や、利用する人の特性に合わせて、「このあたりは車が多いから気を付けてね」などの情報に従って進むと、スマホ上の地図を見る機会を減らしながらその場所にたどり着けます。アプリ上で伝えられた音声情報と、目の前の景色は同じであることと、拠点に到着するまでの30m以内には、次の音声ガイドによるナビゲーションを検知する仕組みを設けているため、支援者が常に寄り添ってくれる感覚が得られ、”地図を見ながらの歩行”を抑える仕様にできあがっています。表示される景色は実際の景色と同じなので、視認性も高くなっています。利用者は、この音声ナビガイドを作った人が声を通じて”誰であるか?”がわかるため、利用する人との関係性・情報への信頼とともに、一緒に歩きながら外出しているような安心感も得られます。

 このアプリは課題を抱えた方以外にも、広く日常的に使っていただけるサービスです。たとえば、観光地や山登りのルート案内、散策時のガイドとしても活用いただける汎用性があります。支援者が実際に辿った行程がアプリ上に表示され、音声での案内とともにビューポイントや注意点を伝えることも可能です。いわば、常に伴走してくれるツアーガイドが側にいるイメージです。利用する人からすると支援者のプロフィールもわかるので、この人についていこうと感じられるので安心です。

 また、マップの情報に変更が必要になった場合も、容易に更新リクエストを送ることができます。マップを作った支援者自身が責任をもって修正・更新できる仕組みです。
昨今、AI技術は目覚ましい進化を遂げていますが、私たちは人と人とが接する視点を大切にしつつ、技術のバランスを考える必要があると考えています。誰もが自然に使える技術が求められる一方で、AIやロボットに任せるだけでは、自分で判断することを失ってしまいかねず、外出時に危険を伴う可能性も否めません。必要なことは、自分で理解・判断できるようになり、自立を担保すること。そのためには教えすぎず、機械制御とは異なる人の自立性が求められます。だからこそ、利用する人の特性を理解している人がナビガイドを作れる技術開発が必要です。利用者も支援者に対し、”自分の特性に応じた支援方法を提供してくれる”、”自分のことをもっと理解した人が寄り添ってくれている”と感じられるような、人と人との関係性を考慮した技術開発が重要なのです。

支援者の声をそのまま使うことで、「誰が案内してくれているのか」がわかる。音声ナビガイドでは、声で自分を理解してくれる相手だと認識できるからこそ、信頼と安心感が生まれる。
「LOOVIC」のサンプル画面。表示画面から「ツアー作成」をクリックし、カメラで実際の風景を映しながら支援者自身の声で案内を吹き込むと、目的地までの進み方をガイドとして作成可能。