見守りはプライバシーの問題がありますし、親側も複雑な思いがあるのではないでしょうか。
梶原:おっしゃる通り、「監視されたくない」「まだ誰にも頼らず、一人で暮らせる」と考える方もいらっしゃいます。いくつになっても、親にとって子は子ですから、「子どもに面倒を見てもらっている」と抵抗を感じる方も少なくありません。
だからこそ開発では、親御さんの「自立していたい」という気持ちやプライバシーを尊重しながら、家族の「元気にしているか知りたい」という思いにも応えることを、大きなテーマの一つにしていました。
そうした中で、なぜテレビを活用することにしたのでしょうか。
梶原:車の免許返納と同様に、加齢に伴う認知・身体機能の低下でスマホの操作がだんだん難しくなる「スマホリタイア」という実態が分かってきました。テレビは画面が大きく、長年生活の中で使われてきた身近な機器です。実際にわれわれの調査でも、高齢者の多くはテレビがある部屋で日中を過ごしています。そのため、技術に人を合わせるのではなく、その人の生活や今できていることを生かせる形がベストだと考えました。
私自身も離れて暮らす親や祖父母に、パソコンやタブレットを使って日々の様子を共有しようとしたことがあります。ただ、実際には操作を覚えてもらうのが難しく、なかなか使いこなしてもらえませんでした。「すでに生活の中にあるものをそのまま使えたら、新しい機器を覚えてもらわなくてもいいのに」と感じた経験も、開発の背景にあるのです。
カメラへの抵抗感には、どのように配慮しましたか。
梶原:最初は外付けのカメラも検討しましたが、それではどうしても「見られている」「監視されている」と感じてしまいます。そこで、カメラは家の形をした専用端末の中に、できるだけ目立たない形で内蔵することにしました。
また、「心配だから見守りたい」ではなく、「顔を見て話したいから置きたい」と説明できることも大切にしています。端末を家の形にしたのも、デジタル機器らしさを前面に出すのではなく、暮らしの中になじみながら、家族をつなぐ存在として受け入れてもらいやすくするための工夫です。
