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光ネットワーク研究所 ネットワーク進化の最先端をリードし、新世代ネットワークの実現を目指す 宮崎 哲弥

光ネットワーク研究所では新世代ネットワークの実現に向けて、ネットワークアーキテクチャ及び光ネットワークハードウエアの革新的な研究開発を所内外との密接な連携により着実に進めてまいります。

光ファイバ通信ネットワークは、全世界的に急増しているインターネットトラヒックを支える21世紀の情報社会のインフラとして、地球を1つに結ぶ光海底ケーブルなどの基幹系から各家庭への光ファイバ接続サービスや携帯電話の基地局網を支える末端のアクセス系にいたるまで導入されています。現状の光ファイバ通信ネットワークではインターネットトラヒックの交差点となるノードに電子回路処理技術によるルータが設置され、パケットの宛先検索や経路切り替えが行われています。一方、ノード間を結ぶリンクは、光ファイバ1本あたりに異なるチャネル情報を複数以上の光波長に載せて一括伝送する波長多重伝送技術が用いられています。

しかし、伸び続ける情報伝送のニーズに既存のネットワーク技術だけで対応しようとすると、ノードにおいてはルータ内の処理が追いつかずトラヒックが滞ってしまうボトルネックが顕著となり、リンクにおいては波長数増大に伴う中継増幅器や光ファイバの伝送波長帯域不足、さらにネットワーク全体で設備規模や電力消費が膨大となるなどの問題が顕在化しつつあります。これらの問題は先進国だけに限らず、人口が急増し情報インフラ整備が進みつつある新興国においても社会の持続的発展のため解決すべき課題となるでしょう。

そこで光ネットワーク研究所では瞬時データ転送や3次元映像コンテンツ配信など様々なサービス要求に柔軟に適応し、通信量の飛躍的増加に伴う電力消費エネルギーの増大を抑えるとともに高信頼性も確保する、将来に向けて持続発展可能な新世代ネットワークの実現に向けて以下の研究課題について重点的に取り組んでまいります。

まず、光パケットと光パスを統合的に扱うことのできるネットワークのアーキテクチャを確立します。この技術は、インターネットのデータ通信も混雑なく交通整理をしつつ、これまで困難であった遠隔医療や超高精細動画像通信などを、高品質且つ低消費電力でサービスして、生活の質の向上や低エネルギー社会など未来社会の実現に貢献するものです。ネットワークの故障を減らすため、自律制御による高信頼化技術も開発します。

また、この光パケット・光パス統合ネットワークをささえるハードウエアとして光ネットワークの物理層における限界を打ち破る究極の光ノード技術や、マルチコアファイバー等を用い飛躍的な通信容量の増大を可能とする光伝送と交換システム技術の研究を進めてまいります。

さらに、1波長チャネルあたりの伝送速度の高速化技術、波長多重のための未開拓光波長帯域における光通信技術の開発や、あらゆる環境でブロードバンド接続を実現しつつ環境への影響も小さいICTハードウェア技術の研究開発にも取り組みます。

以上の研究課題に対して国内外の民間企業、大学などの研究機関とも連携し、光パケット・光パス統合ネットワークを中核とした新世代ネットワークの基盤となる革新的情報通信技術の研究開発を進めてまいります。

光パケット・光パス統合ネットワーク
宮崎 哲弥
宮崎 哲弥(みやざき てつや)
1987年大学院修了。KDDI研究所勤務を経て2002年より通信総合研究所(現NICT)超高速フォトニックネットワークグループ勤務。超高速光通信・全光信号処理、多値光通信方式の研究に従事。博士(工学)。
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