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ネットワークセキュリティ研究所 安心・安全に情報をやりとりできるネットワークセキュリティの研究開発を推進 高橋 幸雄

ネットワークセキュリティ研究所は、誰もが安心・安全に通信を行うことができるように、NICTの中立性を活用し、サイバー攻撃に対抗するための理論と実践を融合させたネットワークセキュリティの研究開発を実施し、世界的な研究拠点になることを目指していきます。

サイバー攻撃は多くの場合、ネットワークやICT端末に悪影響を及ぼすウイルス、ワーム、ボット等の総称である"マルウェア"によって引き起こされており、日夜新種の攻撃が出現しています。そのため、ネットワークセキュリティの研究は、日々攻撃に対応を行いながら、攻撃側優位の現状から防御側優位へと変化させ得る"現在志向"の実践的研究開発と、中長期的視点で「いたちごっこ」の終焉を目指した"未来志向"の先進的研究開発の両輪で推進していきます。

当研究所は、サイバーセキュリティ技術、セキュリティアーキテクチャ技術、セキュリティ基盤技術の3つの研究開発を、三位一体で実施しながら、ネットワークセキュリティの研究を推進します。

サイバーセキュリティ技術では、サイバー攻撃をリアルタイムで把握し適切な対応を実施するため観測・分析・対策技術の研究開発を行うとともに、チャレンジングなテーマとしてサイバー攻撃の前兆を捕えて予防を行うための基盤技術を確立し、攻撃者にとって抑止力となる実践的かつ先行的対策を可能にしていきます。また、Web、SNS、スパムメール等のサービスレイヤでのサイバー攻撃に対応した適切な観測・分析・対策を迅速に実施していきます。さらに、得られたマルウェアのサンプルデータや攻撃トラフィックのデータを、人材育成に役立てることで、日本のセキュリティ技術のポテンシャル向上に貢献していきます。

セキュリティアーキテクチャ技術では、クラウドやモバイル技術の急速な発展による多様化したネットワーク環境や利用環境に対応した柔軟で、安全かつ持続進化性を有したセキュアなアーキテクチャの研究開発を実施します。多様化したネットワーク環境では、インターネットのような一様なネットワーク、一様なセキュリティでは対応できなくなり、安全性も不十分となってしまいます。こうした状況を解決するため、各種の利用環境に応じたセキュリティの確保を行い、利用者からはセキュリティ構成を意識することなく、自動的に最適なセキュリティが確保できるアーキテクチャ技術の確立をしていきます。

セキュリティ基盤技術では、現代暗号と量子通信を相補的な関係で組み合わせることで実用性を重視した量子セキュリティ技術や、新しい暗号技術の確立を目指した基盤技術の開発を行います。量子セキュリティ技術では、距離の延長や、安全性に応じて現代暗号を適切に使う等、新たな手法の確立を図っていきます。また、長期利用可能な新しい暗号技術を開発し、電子署名、医療情報、タイムスタンプ等で長期の安全性確保を図ります。

当研究所は、ネットワークセキュリティの研究に重点を置き、成果を社会貢献に結び付ける実践的研究と、未来型の先進的研究の両輪で、持続的な研究開発を行っていきます。また、国内外の研究機関等とも連携し、国民誰もが安心・安全に情報通信を行うことができるように、社会が必要としかつ世界をリードできる研究開発を進めて参ります。

高橋 幸雄
高橋 幸雄(たかはし ゆきお)
1982年京都大学理学部大学院第二物理学専攻修士修了、その後電波研究所(現NICT)に入所。VLBIによる位置計測、位置天文の研究、日本標準時、位置認証の研究を実施。2008年情報セキュリティ大学院大学学位取得。博士(情報学)。
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