JP/EN

研究紹介

 私たちの研究室では、「観る」、「聴く」、「遊ぶ」、「学ぶ」、「作業する」など、実生活下に近い環境での脳波及び行動データを多人数から取得し、人間の認知、情動、言語などの脳機能の分析を行い、他の生体情報や主観情報等と紐付けることで、興味関心、気分、モチベーションなどの心的状態や能力、個人間の相互関係といった高付加価値の情報を提供するモデルを構築しています。

脳波を用いた無意識的な外国語学習

脳波(EEG)を用いたニューロフィードバックトレーニングによる外国語学習

 外国語を学習する際,母国語にはない音声を認識することが難しい場面は多々あります。例えば日本語を母国語とする人たちにとって「ライト(light)」と「ライト(right)」のように,「l」と「r」の違いが聞き取りにくいという人は多いことでしょう。しかし脳は無意識的にその違いが分かっているといいます。そこで,脳がその違いに気づいたときに出る脳波成分を視覚的にモニターに緑の丸として表示し,被験者にはその丸が大きくなるように意識してもらうといった,ニューロフィードバックという手法を用いてリスニング力が向上するか実験を行いました。すると,「l」と「r」の単語の認識は優位に改善され,外国語学習において脳波を用いたニューロフィードバックは有用であることが実証されました。

VRゲームタスクによるフィードバック関連陰性電位の変調

 人は客観的な事実と,自分の気分といった不確かな主観的情報の両方を使用して,行動に対するフィードバックの結果を予測することがよくあります。例えば一つの行動に対して連続していい結果が起きた場合,その次の行動結果もよい結果になるだろうと考えがちです。そこで本研究では,VRシューティングゲーム中の脳波を観察することで,フィードバックの結果による一時的な気分とエラーが起きた時に引き起こされる脳波にはどのような関係があるかを調査しました。その結果FRNという脳波成分は,VRゲームの結果によってもたらされた一時的な気分の変化によって強く変調されることが示唆されました。

VRゲーム中の脳波計測(EEG)

キーボードスイッチの機械的パラメータの評価

キーボードの高さの違いが脳波(EEG)にも影響する

 キーボードスイッチが持つ機械的パラメータは,キーボードを押すという感覚に影響を与えます。そのキーボードが持つ機械的パラメータの違いがスイッチを押す際の認知にどのように影響するかを明らかにするための研究を行いました。実験方法としてスイッチのON位置の高さが違う5つのキーボードスイッチを準備し,各スイッチを押している時の脳波計測と主観的アンケート調査を行いました。その結果,主観的アンケートではON位置に対して違いを示さなかった一方で,CNVという脳波成分において違いが出たことから,脳波計測がキーボードスイッチの機械的パラメータを評価する新しい方法となる可能性があることが示唆されました。

脳波を指標とした書字ツールの違いによる学習効果の比較

 脳波を指標として,書字ツール(インクペン・デジタルペン・キーボード)の違いによる単語学習の効果を明らかにすることを目的としました。参加者はインドネシア語の単語を3つの書字ツールで学習し,その後,学習した単語を用いた反復プライミングパラダイム課題を行いながら脳波を計測しました。脳波指標の結果から,手書きはタイピングと比べて学習効果が高く,また,デジタルペンで書くことに慣れれば,デジタルペンを用いて学習することは紙にペンで書くのと同様に,タイピングよりも効果的な学習ツールであることが示唆されました。(株式会社ワコムとの共同研究)

書字中の脳波計測(EEG)

対戦型テレビゲームにおけるプレイヤーの脳波計測

ゲーム中の脳波計測(EEG)

 コンピュータゲームは現在世界中の人々によってプレイされています。そこで,ゲームプレイヤーのモチベーション維持にどういった脳波成分が関係しているか明らかにすることを目的とした研究を行いました。方法として対戦型野球ゲームを行っているときの脳波計測を行い,脳波成分の中でも,ERNという成分に着目して解析を行いました。結果として,ERNの大きさが,ゲームに対してプレイヤーがどの程度楽しいか,悔しいかといったやる気に関する評価指標になりうることが示唆されました。

ウェアラブル脳波計を用いた歩行中における脳のワークロードの推定

 従来脳のワークロードを推定するために脳磁図や大型の脳波計を用いて研究が行われてきましたが,装置が大型であることから被験者の行動範囲が限定されるという問題がありました。そこで当室で開発した小型のウェアラブル脳波計を用いて,歩行中の脳波計測を行い,より実生活に近い状態でワークロードを推定する研究を行いました。歩行中にNバック課題を行い,ASSRという脳波成分を解析したところ,実際の歩行中においてもASSRは課題の難易度に応じて変調されるということが明らかとなりました。

歩行中の脳波計測(EEG)