NICTは、平成30年度から新たに研究開発を開始する委託研究(公募第三弾)8課題について、下記のとおり受託者を決定しました。

1. 研究開発課題に対する提案課題と受託者(○印:代表研究者)

(1) データ連携・利活用による地域課題解決のための実証型研究開発(10件を採択)

■提案課題:エッジコンピューティングによる過疎地域インフラデータの収集と利活用  受託者:〇国立大学法人大阪大学
 株式会社スペースタイムエンジニアリング
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  •    概要: 本研究では、平常時に過疎地住民が生活の足として利用する地域公共交通(バスやタクシー)を中核とした、過疎地域インフラデータの集約処理ならびに活用技術を開発する。まず、バスやタクシーを「エッジコンピューティング資源」とし、平時や災害時の道路や建物等のインフラデータの収集とデータ処理を行い、低コストでクラウドに集約する技術を開発する。連携する自治体において山間道路を走行するバス路線に開発したシステムを搭載し、過疎地域のインフラ状況をデータ化・可視化できることを示す。さらにこれらのデータをオープン化し、県や国が利活用し易い環境を整備することで、過疎地域の実情に即したインフラの維持管理を目指す。
■提案課題:デジタルコミュニケーションを駆使した小規模自治体における市民協働型まちづくり   受託者:○国立大学法人東京大学
 株式会社まとめる専門家
 一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会
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  •    概要: 本研究では、少子高齢化等で長期的なコミュニティ維持が懸念されている小規模自治体において、市民のまちづくりへの協働意識を高めていくために、富山県南砺市と全面的に連携して、日々の個別公共施設の利用データをリアルタイムに集約しつつ、住民一人一人のエージェントモデルと強化学習をもとにした将来の地域拠点集約のシナリオ群を整理し、地域でのワークショップでそれらを共有する事により、市民の協働意識がどのように変容していくかを把握し、地域における次世代型のデジタルコミュニケーションのあり方について開発する。
■提案課題:生活行動データとバイタルデータを活用した健康状態の自動分析技術による地域包括型介護予防システムの研究開発  受託者:〇株式会社シーイー・フォックス
 国立大学法人九州大学
 国立大学法人京都大学
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  •    概要: 日本では、高齢者がより長い期間にわたり健康レベルを維持できるよう介護予防事業を推進しているが、高齢者自身が自身の老化が進行しているという認識が低いことから、高齢者の自発的な生活変容に至っていないのが現状である。また、本事業を牽引する保健師は、既に要介護認定を受けている高齢者や児童虐待にかかる支援など社会的弱者への支援業務を優先せざるをえず、介護予防事業の本来の対象者である要介護認定を受けていない高齢者への指導が後手に回っているのが現状である。本研究では、高齢者自身が自らの健康リスクを自覚し、自発的な生活行動の改善を促進すべく、IoT・ビッグデータを活用した地域包括型介護予防システムを開発する。
■提案課題:犯罪オープンデータを活用したデータ駆動型犯罪予測手法の開発と市民・自治体向け犯罪予測アプリケーションの構築  受託者:〇株式会社Singular Perturbations 概要表示
  •    概要: 警察庁からの公開準備中の犯罪データを用い、申請者が独自開発した3つの犯罪予測手法(それぞれが受賞あり)をメインエンジンとした、日本発かつ世界初のデータ駆動型犯罪予測基盤技術を確立する。独自手法の一つは、シカゴ市オープンデータの10罪種全てに対し標準的な犯罪予測手法と比較し、最高精度を達成した。本委託での研究結果は論文として公開し、犯罪予測分野の発展に貢献する。さらに、犯罪予測結果を毎日配信するモバイル&ウェブアプリケーションを開発し、通信事業者、自治体との連携を試みる。2020年のオリンピックに向けて公開し、「先進的な日本」のアピールに活用、オリンピック後は国際展開を目指す。
■提案課題:信州伊那谷におけるLPWA(LoRaWAN等)鳥獣罠センサーの高度活用   受託者:〇国立大学法人信州大学
 新光商事株式会社
 伊那市有線放送農業協同組合
 ソフトバンク株式会社
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  •    概要: 豊かな自然環境で農林業を基盤とする産業が発達してきた信州伊那谷では、ニホンジカ等の鳥獣被害が顕著で、基幹産業の衰退が問題である。ヒト・モノ・情報が分散する地域社会で、情報量は小さくても重要なイベントを効率的に収集するシステムを構築し、獣被害防止の問題解決に取り組む。ここでは鳥獣罠センサーにLoRaWAN・NB-IoTモジュール搭載端末を開発し、見回り業務軽減と駆除活動の効率化を推進する。LoRaの通信品質を確保するGatewayの最適配置に関するシミュレートを行い、通信環境条件の不利な地域を対象にしたシステムを確立する。収集した情報を高度に活用し、鳥獣害被害に悩む他地域へ技術の水平展開を行う。
■提案課題:スマート自転車とオープンデータを活用した道路インフラ維持システム   受託者:〇学校法人早稲田大学 概要表示
  •    概要: バッテリ動作で一週間の無給電運転が可能な、スマートフォンと専用カメラと演算器を格納したスマート自転車を開発する。また、低解像度画像で85%、高解像度画像で95%の検出が可能な、深層学習を活用した道路インフラ維持用画像処理技術を開発する。その上で実証実験を行い、上記を数値目標とする本研究の有効性を実証する。
■提案課題:福井県小浜市のブランド鯖養殖現場へのIoT導入とAI分析および市場分析から導く養殖事業最適化モデル創出のための研究開発   受託者:○公立大学法人福井県立大学
 株式会社クラウド漁業
 KDDI株式会社
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  •    概要: サバ養殖いけすのIoT環境センサーと養殖管理アプリで収集したデータを基に、サバの生育データとの相関をAI分析することで海面環境、摂餌量がサバの成長に与える影響を明らかにする。また、勘と経験頼みの飼育方法を、科学的データに基づく「養殖マニュアル」によって高度化することで生産性を向上し、匠の技の可視化によって漁師の育成や漁業就労機会の拡大につなげる。さらに、サバ専門飲食店と連携した市場分析の結果を生産現場に還元し、消費者の需要に適した小浜ブランド鯖を規格化する。生産現場と消費現場をつなぐ実証研究により、生産性と採算性を備えたサバ養殖最適化モデルを創出し、養殖事業の拡大と地方創生を実現する。
■提案課題:中型無人航空機データ利活用によるインフラ・公共施設維持管理、森林管理、災害対応、人命救助、データ利活用人材育成分野の地域課題解決のための情報通信技術の研究開発   受託者:○一般財団法人長野経済研究所
 国立大学法人信州大学
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  •    概要: 中型無人航空機の目視内での自動・自律飛行及び河川・湖沼、森林等の無人地帯での目視外飛行により撮影した高精度の映像、画像データから異常等を検出する技術、中型無人航空機により撮影、取得したデータの完全性、不変性を保持しつつ記録するブロックチェーン技術を活用したデータ記録システム、及び小学生から高校生までを対象とするデータ利活用人材育成指導モデルを開発し、インフラ・公共施設維持管理、森林管理、災害対応、人命救助等の作業効率化と生産性向上、IoT/ビッグデータ利活用可能な人材育成などの地域課題解決に寄与する。
■提案課題:スマートフォン用双方向性睡眠教育アプリを用いた子育て支援と乳幼児睡眠データ収集システムの構築   受託者:〇国立大学法人大阪大学
 東大阪市保健所
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  •    概要: 日本の子どもの睡眠時間は世界でも有数の短さである。乳幼児期の睡眠習慣は、発達に影響を及ぼし、生涯持続するため、その改善は喫緊の課題である。我々は、現代の世情に沿ったスマートフォンを用いて、家庭で睡眠教育と指導を行える双方向性アプリを開発し、東大阪市において社会実装を進行中である。このアプリを普及させて、日本の乳幼児の睡眠と発達の改善及び養育者の育児ストレス軽減を目指している。本研究では、睡眠アプリの利用規模拡大に向けて、クラウドの利用、AIによる睡眠改善のための助言の自動化を進め、自治体主体の睡眠教育体制を構築する。収集されたデータはデータベース化することにより、二次利用が可能になる。
■提案課題:過疎地域の学校をAIが支援する遠隔協調学習システムで結ぶことにより地域課題の解決に対応する取り組み  受託者:○公立大学法人山梨県立大学
 国立大学法人上越教育大学
 国立大学法人長岡技術科学大学
 独立行政法人国立高等専門学校機構東京工業高等専門学校
 株式会社デジタルアライアンス
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  •    概要: 地域では、少子化の進行により、一学年の児童数が10名以下の学校が多くなっている。クラスの人数が少なくなると、授業や生活の中で多様な考えに触れる機会が損失する。また、授業でもディベートなどはできなくなる。この課題を解決するためにICTを用いた遠隔協調学習支援システムを構築する。さらに児童が行う主体的な学びの状況を人工知能により分析・推測・可視化し、教師を支援する機能も持たせる。また、本システムを用いた、新たな授業も開発する。最終年には、ビジネス化を見据えて標準規模の学校でも実現できるようにする。「授業を定量化」することにより、新たな価値の創造と教育の質の向上に貢献する。

(2) 異分野データ連携によるスマートモビリティ基盤の研究開発(1件を採択)

■提案課題:環境×交通データの連携によるモビリティリスク情報生成・流通プラットフォームの実証的研究開発   受託者:〇株式会社アイ・トランスポート・ラボ
 国立大学法人東北大学
 株式会社オリエンタルコンサルタンツ
 国立大学法人東京大学
 学校法人慶應義塾
 株式会社ゼンリンデータコム
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  •    概要: 本研究では、NICT総合テストベッド上の異分野データ連携基盤を活用したスマートで持続性の高い交通サービス、すなわちSmart Sustainable Mobility(SSM)サービスの実現を目指し、気象等の環境データと交通データを収集・統合・分析するプラットフォームを開発する。また、地域の住民や団体、企業、自治体等のユーザが参加するハッカソン型の実証実験を通して、車や人の移動に影響を与える交通障害等のリスクをリアルタイムに予測し、地域の交通課題の解決に資するSSMサービスを開発する。

(3) 超長期セキュア秘密分散保管システム技術の研究開発

課題A:物理乱数源の研究開発(1件を採択)
■提案課題:秘密分散の基盤となる小型・高速・安全な物理乱数源の開発とシステム総合評価   受託者:〇株式会社ワイ・デー・ケー 概要表示
  •    概要: 利用シーン別に3種類の物理乱数生成製品のプロトタイプを研究開発する。多様な製品へ搭載可能な回路組み込みを前提とした物理乱数チップ、多様な社会ニーズに適用するため小型・可搬型を前提とした物理乱数ドングル、サーバ等で大量のデータを処理するためラック搭載・高速リアルタイム生成を前提とした高速物理乱数生成装置とする。研究開発した製品プロトタイプを超長期セキュア秘密分散保管システムの総合評価環境へ適用し、評価・検証を実施する。
課題B:秘密分散ソフトウェアの研究開発(採択なし)

(4) マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発(1件を採択)

■提案課題:標準クラッド径マルチコアファイバ伝送路技術の確立   受託者:○日本電信電話株式会社
 株式会社KDDI総合研究所
 住友電気工業株式会社
 株式会社フジクラ
 古河電気工業株式会社
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  •    概要: 既存標準技術と親和性が高く早期展開が期待できる標準クラッド径マルチコアファイバ(MCF)を対象に、大容量で高品質・高信頼性の空間分割多重伝送路の実現と新たな技術標準策定に不可欠な3つの技術についての研究開発を行う。1つ目は高品質・高信頼性MCF技術であり、課題170で検討した複数のMCF製造法を量産性や信頼性を考慮して発展させ、1500 km・コア超級のMCF製造技術を確立する。2つ目はMCFケーブルと伝送路技術であり、ケーブル設計・評価を通じ100Pbit/s・km級の伝送ポテンシャルを有するMCF伝送路技術を確立する。3つ目はMCF周辺技術であり、伝送路構築と標準化に必須の接続・入出力技術と評価技術を確立する。

(5) 超並列型光ネットワーク基盤技術の研究開発(1件を採択)

■提案課題:大規模データを省電力・オープン・伸縮自在に収容する超並列処理光技術   受託者:○三菱電機株式会社
 国立研究開発法人産業技術総合研究所
 株式会社KDDI総合研究所
 国立大学法人香川大学
 学校法人慶應義塾
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  •    概要: 将来の1Pbps級光空間多重ネットワークの実現に向けて、大規模データの効率的な収容を可能とする超並列処理光技術の研究開発を行う。具体的には、信号復元復号処理・適応制御技術、光送受信処理技術を開発し、超並列DSP高度化基盤技術を確立する。また、超並列スライス設計制御技術、超並列光ノード・ネットワーク構成技術、ダイナミックMAC技術を開発し、超並列光ネットワーキング基盤技術を確立する。最終的に、光運用波長当たり現行比10倍の大容量性と、100多重級の空間多重を前提とした新たな光ネットワーキングにより並列度現行比1000倍、伸縮度現行比100倍の超並列性・伸縮自在性・オープン性の両方を兼ね備えた光ネットワークを実現できる基盤技術の確立を目指す。

(6) 高スループット・高稼働な通信を提供する順応型光ネットワーク技術の研究開発(1件を採択)

■提案課題:順応的に高スループット・高可用性を提供する光ネットワーク技術の開発   受託者:○富士通株式会社
 日本電気株式会社
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  •    概要: 本研究では、機械学習とコヒーレント受信技術を融合して光物理層のモニタリング範囲を革新的に拡大し、変化や変動に対する対応を超迅速化する。またモニタリング結果と学習に基づき、従来の最悪値設計で見込んでいたマージンを順応的にゼロに近づけることによるスループット向上と、時間的に変動する環境下でも高可用性が維持できることを両立する。上記の実現により、機械学習の活用による革新的光ネットワーク運用管理基盤技術を確立する。

(7) 5G・Beyond 5Gの多様なサービスに対応する有線・無線アクセスネットワークのプラットフォーム技術の研究開発(1件を採択)

■提案課題:5G・Beyond 5Gの多様なサービスに対応する有線・無線アクセスネットワークの仮想化とエッジクラウド基盤技術の研究開発   受託者:○富士通株式会社
 国立大学法人福井大学
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  •    概要: 5GおよびBeyond 5Gでは、高精細動画配信や低遅延性が必須となる自動運転や多数多様な機器を接続するIoT向けの新しいアプリケーションを収容する基盤が必要となる。本研究では、これらを支える新たなアクセスプラットフォーム技術の実現に向けて、有線・無線のアクセスネットワークを融合し迅速に多様なサービスを提供可能にするネットワーク仮想化技術と多様なサービスに対応するために複雑化するネットワーク運用を簡易化・自動化する基盤技術、さらに、コンピューティング機能を融合し数百台規模の端末機器に提供するアプリケーションサービスをエッジ処理可能な基盤技術を開発する。

(8) Beyond 5Gに向けたモバイル収容大容量光アクセスインフラの研究開発(1件を採択)

■提案課題:Radio-over-Fiber型伝送技術をベースとするBeyond 5Gモバイルフロントホールの研究開発   受託者:○株式会社KDDI総合研究所
 三菱電機株式会社
 国立大学法人東北大学
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  •    概要: 大容量無線信号を効率的に収容可能なRoF・IFoF伝送方式は、5G向けのモバイルフロントホール向けに研究開発が活発化している。本研究では、RoF・IFoF伝送システムに電気的なデジタル信号処理技術を効果的に組み込むことで、100Gbps級ピークスループット等のBeyond 5Gの要求性能を全て満たしつつ、経済合理性が高い光アクセスシステムの構築を目指す。さらに、究極的なRoF伝送システムである、光と電波のキャリア周波数を自在に相互変換可能とするフルコヒーレント方式について、現在入手可能なデバイスを用いて実験的に検討し、さらに今後10年間程度の技術の進歩を考慮して、当該システムが実現可能となる時期を見極める。

2. 公募等の概要

 上記の8課題については、平成30年8月31日(金)から平成30年10月1日(月)まで公募を行いました。 NICTは、学識経験者で構成される評価委員会(委員長: 村上仁己 成蹊大学元教授)の評価を経て、受託者を決定しました。 公募の詳細は、以下のWebサイトをご参照ください。 https://www.nict.go.jp/collabo/commission/20180831kobo.html


本件に関する問い合わせ先

イノベーション推進部門 委託研究推進室
中後 明、久保 和夫、鈴木 俊太郎

Tel:042-327-6011

E-mail: info-itakuアットマークml.nict.go.jp