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宇宙天気予報の概要と特徴

 天然の核融合炉である太陽は、生命の維持に不可欠な熱や光だけではなく、生命にとって有害なX線や紫外線、高エネルギー粒子及びコロナガスと呼ばれる高温のガスを噴き出しています。地球は、大気と磁場の二つのバリアでこれらが地表に到達するのを防いでいます。しかし、太陽活動が活発になると地上及び地球周辺 の宇宙空間に影響が現れます。このような自然現象を「宇宙天気」と呼びます。
 宇宙天気現象の規模が大きい場合、通信・放送・測位などの電波利用に加え、衛星利用や電力、航空運用など我々の社会活動に影響を与えます。1989年3月に太陽フレアが発生した際には、カナダ・ケベック州において約10時間の大規模停電が発生し、経済的にも大きな打撃を受けました。2003年10-11月には大規模な磁気嵐が発生し、日本の科学衛星を含む宇宙機の約59%が影響を受け、24%のミッションが安全策を取りました。また、2022年2月の磁気嵐では、密度が増した大気による抵抗を受けたため、40機の通信衛星が落下し、大きな社会的インパクトがありました。
 NICTでは、地球周辺の宇宙環境の変動によって影響を受ける可能性のある通信・放送インフラや宇宙システムなどの運用や利用などに役立てていただくことを目的として、宇宙天気予報太陽フレアAI予報放射線帯予報などの各種予報データを提供するとともに、宇宙天気に関する様々なデータを公開しています。

衛星運用分野

 宇宙環境は時間・空間変動が大きいため、衛星の周囲の環境は刻々と変化しており、同じ時刻であっても衛星の位置によって周囲の環境は異なります。また、仮に同じ環境下でも、衛星の構造や素材によって帯電状況は異なってきます。ある衛星が今どのような帯電リスクに晒されているかは、「その時刻、その衛星の位置のプラズマ環境」と「その衛星の構造と素材、姿勢等」によって大きく異なります。
 このようなことから、宇宙環境モデル(磁気圏モデルや放射線帯モデル)と、衛星の構造や素材の情報を取り入れた衛星帯電モデルを連携させることで、衛星個々の帯電リスクを推定する取り組み「SECURES (Space Environment Customized Risk Estimation for Satellites)」を進めています。
 また、大気圏モデルと電離圏モデルを結合した全大気圏電離圏結合モデル「GAIA(Ground-to-topside model of Atmosphere and Ionosphere for Aeronomy)」により、衛星の大気抵抗の評価に不可欠な大気密度変化を予測します。
 これらの情報をロケット打ち上げ判断や衛星運用に活用することにより、宇宙ビジネスの発展に貢献します。

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図1 衛星運用分野ユースケースのイメージ図

衛星測位・ドローン分野

 電離圏が乱れると衛星測位精度が劣化することがあります。電波遅延から見積もった電離圏全電子数 (TEC) や全電子数時間変動マップを無線通信による測位技術に活用することにより、測位誤差を低減します。これらの情報を自動運転やドローン操縦などに活用することにより、測位精度が向上した高品質のGNSS測位サービスを提供することができます。

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図2 衛星測位分野ユースケースのイメージ図

観光分野

 人工衛星と地表面で観測した宇宙線強度から大気圏内(高度約100kmまで)の宇宙線被ばく線量率を、航空機被ばく警報システムWASAVIESにより推定します。また、AuroraAlertはオーロラ出現予報とオーロラ映像をリアルタイムで届けます。これらの情報は、観光ビジネスや航空会社の飛行ルートの決定などに活用が期待されます。
 
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図3 観光分野ユースケースのイメージ図

関連情報

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