革新的情報通信技術研究開発委託研究
研究評価 > 令和5年度終了評価
令和5年度終了評価 結果 (概要)
(注)対今年度までの目標は、当初の研究期間を短縮した課題(採択番号00101、01201、02101、02201、04501、04601、04701、04801、05301)に対しての今年度までの目標に対する総合評価であり、対最終目標は全課題共通で当初の最終目標に対する総合評価である。なお、研究期間が短縮されていない課題については、対今年度までの目標と対最終目標は同一の評価である。
採択 番号 |
研究開発課題名 | 研究 期間 |
受託者 (◎印:代表研究者) |
総合コメント | 総合評価(注) | |
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対今年度までの目標 | 対最終目標 | |||||
00101 | Beyond 5G超大容量無線通信を支える次世代エッジクラウドコンピューティング基盤の研究開発 研究開発項目2)多種多様なサービスに対応可能な高機能エッジクラウド情報処理基盤の研究開発 副題:Beyond 5Gに向けた革新的高速大容量データ転送ハードウェア開発と高機能エッジクラウド情報処理基盤の研究開発 |
R2 | R5 |
◎国立大学法人東京工業大学 |
本研究開発プロジェクトでは、マルチコアファイバを用いた新たなエッジクラウド情報処理基盤の構築を目指し、その過程で、高性能エッジクラウド情報処理の基本設計と解析モデル、電波の有効利用の検証、エッジ間光通信の基本運用、スマートシティ実験環境の構築などに取り組んできた。プロジェクトは当初4年間の予定だったが、1年短縮され、3年間で達成することになった。当初の4年間の計画の目標を基準に考えると達成度は完全ではなかったが、3年間という限られた期間と予算の中で優れた成果を得ることができた。各項目は非常に良い結果を示したが、全体的な連動性はやや弱く、CPSの実現への貢献が明確でない部分もあった。しかし、今後も研究開発を継続することで、社会的インパクトのある成果が得られる可能性は高い。
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S | A |
古河ネットワークソリューション株式会社 | ||||||
日本電気株式会社 | ||||||
国立大学法人大阪大学 | ||||||
国立大学法人東北大学 | ||||||
楽天モバイル株式会社 | ||||||
00701 | Beyond 5Gを活用した安全かつ効率的なクラウドロボティクスの実現 | R3 | R5 |
◎日本電気株式会社 |
研究成果と費用対効果:実世界と仮想世界を確率的に結びつける確率的時空間デジタルツインを構築し、これをロボットの安全制御に利用する技術課題であり、デジタルツインをB5Gの通信制約を考慮した形で構築する技術を扱っている。また、具体的な応用シーンとして工場でのロボット制御を扱い、安全なロボット制御の実証実験を行っている点で、費用対効果の十分高い成果を得ている。
目標の達成状況と波及効果:最終目標の数値目標を概ね達成し、一部は数値目標を越えて達成している点も評価できる。研究発表が一部数値目標を達成できていない点は残念であるが、総じて十分な成果を得ている優れた研究開発である。研究代表者の所属企業が提供している協調搬送ロボットや、新たに開発しているフォークリフト自律遠隔搬送ソリューションへ、本研究開発で得られた成果を適用することも検討しており、成果の波及効果も高い。
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S | |
国立大学法人大阪大学 | ||||||
00901 | 超低雑音信号発生技術に基づく300GHz帯多値無線通信に関する研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人大阪大学 |
テラヘルツ波による遠距離超高速通信の実現性に大きく貢献する成果がでているほか、低雑音信号源や立体回路作成技術に波及する成果が出ている。
伝送系を構築する様々なデバイス分野の研究グループが集結して、成果の集大成として、伝送実験の世界トップレコードを達成する成果は素晴らしいものであると評価できる。想定を超える成果も達成しており、今後も是非継続的に本研究開発を進めていただきたい。
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S | |
IMRA AMERICA, INC. | ||||||
国立大学法人九州大学 | ||||||
国立大学法人東京大学 | ||||||
01201 | Beyond 5Gで実現する同期型CPSコンピューティング基盤の研究開発 | R3 | R5 |
◎日本電気株式会社 |
本研究開発では、ITとOTの融合のための同期型CPSコンピューティング基盤のために、OTへ適用できるネットワーク遅延フィードバック制御、時空間ダイナミックスライシング技術、セキュリティの観点からのゼロトラストアクセス制御技術の3つの研究開発項目に取り組んだ。基金制度の変更により、研究開発期間が当初の4年から1年短縮された。各研究開発項目の達成度は、当初計画の3年目の水準を十分に達成するとともに、一部の項目では4年目の計画を前倒しで実施している。課題全体での連携を図ることはできなかったものの、可能な限り当初の最終目標に近づくような成果が得られていると評価できる。また、知財出願、外部発表の成果は最終目標を達成する見込みである。
本研究開発は、ネットワーク技術を応用し、OTのリアルタイム制御を可能とするCPS基盤を開発しており、今後のB5Gの応用分野として重要なOT分野への貢献が期待される。実用化が進めば大きな社会的インパクトが期待できる。今後の社会実装に向けた取り組みに期待したい。
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S | A |
国立大学法人東京大学 | ||||||
02101 | 超低消費電力・大容量データ伝送を実現する革新的EOポリマー/Siハイブリッド変調技術の研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人徳島大学 |
外部変調器の変調速度を世界トップの250Gb/s以上まで引き上げて実証し、極めて優れた成果である。現時点では結果として得られる性能が評価系で律速される段階まで来ている。本事業予算内では効率的に実施できたといえる。
計画よりも1年間早く終了することになったが、当初に研究目標に挙げた変調器の基幹5特性(動作波長、シンボルレート、挿入損失、駆動電圧、エラーレート)、および高温長期信頼性を達成した。
本研究プロジェクトは素晴らしい成果を上げており終了後も研究開発を継続し、真に実用となるまでのデバイスを洗練させていただきたい。また、製品化に向けた特許網の構築や標準化戦略を社会実装企業とともに進めていくことを期待する。
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S | A |
国立大学法人九州大学 | ||||||
公立大学法人会津大学(〜2023年9月) | ||||||
02201 | Beyond 5G のレジリエンスを実現するネットワーク制御技術の研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人東北大学 |
本研究課題では、災害大国日本において非常に重要な通信インフラ確保をテーマに掲げ、特に無線環境の安定性に関して実システム上での検証を行い、各提案手法の実現可能性を模索している。この取り組みは、今後の周波数割り当て検討や災害を事前に想定した機器開発への促進にも寄与する可能性がある。
提案システムに関して、当初考慮されていた災害レベル3までの対応から、災害レベル1までに対象が変更され、計画期間の短縮により最終年度の実証実験が省略された。これにより、全体のシステム化に関しては不十分な部分が残り、当初の最終目標に対する達成度は高いとは言えない。
すなわち、個別技術に関しては、高い完成度が見られ、その成果による波及効果も期待される一方、最終目標に対しては改善の余地が残された。研究成果と費用対効果の観点から見ても、個別技術での成果は十分にあったが、最終的な目標達成には至らなかったと言える。提案されたシステム全体としての有効性や実用化に向けた取り組み、波及・普及に向けた活動には、今後さらなる検討が必要である。
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A | B |
国立大学法人広島大学 | ||||||
日本電業工作株式会社 | ||||||
02701 | テラヘルツ帯チャネルサウンディング及び時空間チャネルモデリング技術の開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人新潟大学 |
研究代表者・分担者の実績をベースとしたテラヘルツ帯チャネルサウンダ・チャネルモデリングについての先進的研究課題である。特に、論文発表や標準化提案において、多くの成果が得られている。これらは、将来のテラヘルツ帯の無線利用において重要な知見である。良い成果が得られている。
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S | |
国立大学法人東京工業大学 | ||||||
02801 | GaN系真空マイクロフォトニクス技術による無線通信用ハイパワーテラヘルツ波発生に関する研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人九州大学 |
新しい真空マイクロフォトニクスデバイスの開拓を目指したチャレンジングな研究課題であるが、ほぼ当初計画に沿った成果が得られている。この研究開発で得られた知見の波及効果も期待できる。
日本初の新しいテラヘルツデバイス技術として、継続的に研究開発を進めて頂くことを期待する。
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A | |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 | ||||||
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 | ||||||
株式会社 Photo electron Soul | ||||||
国立大学法人大阪大学 | ||||||
学校法人早稲田大学 | ||||||
02901 | 人間拡張・空間創成型遠隔作業支援基盤の研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人東京大学 |
計画された目標は概ね達成されている。特に、静的に計測された遠隔作業空間の3次元情報と作業空間における動的な情報を組み合わせることにより、遠隔地での作業空間を拡張できる形で作成するというアイデアは興味深い。今後、こうした技術が発展していく余地は大いにあり、それに伴う波及効果も期待できる。より完成度が高まれば、社会と国民生活への貢献度も大きいはずである。また、楽器演奏や伝統芸能の伝達やアーカイビングなど、実際の状況を模擬したデモも示されているが、既存の技術に比べての有効性については分かりにくかった。明らかな想定を超える成果があるとなお良かったと思う。
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A | |
TOPPAN株式会社 | ||||||
03001 | 共鳴トンネルダイオードを用いたテラヘルツ無線通信と映像伝送に関する研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人大阪大学 |
共鳴トンネルダイオードを用いて、テラヘルツ波帯送受信回路を構成して、世界トップレベルの出力電力とデータ伝送を実証したことは大きな成果である。
いくつかの研究目標については、当初計画を上回る果実を得ている。今後は、知的・標準化や論文発表などの活動をさらに進めて欲しい。
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S | |
ローム株式会社 | ||||||
国立大学法人東京工業大学 | ||||||
アストロデザイン株式会社 | ||||||
地方独立行政法人大阪産業技術研究所 | ||||||
03101 | 高臨場感通信環境実現のための広帯域・低遅延リアルタイム配信処理プラットフォームの研究開発 | R3 | R5 |
◎学校法人幾徳学園 神奈川工科大学 |
本研究開発は、非圧縮8K映像の処理と配信の実現のために、高精細映像処理が可能な低遅延大容量通信処理プラットフォームと多地点高臨場感通信のための低遅延配信技術の2つの研究開発項目に取り組んだ。各研究開発項目の目標はすべて達成されている。また、機会を捉えて多くの技術展示やデモを行っていることは評価できる。高精細映像の配信はB5Gにおける重要なユースケースのひとつであり、将来的に本研究開発の成果の社会的なインパクトも期待できる。製品化や標準化といった実用化に向けた継続的な取り組みを期待する。また、知財化と論文発表についての取り組みもお願いしたい。
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A | |
学校法人大同学園 大同大学 | ||||||
国立大学法人琉球大学 | ||||||
ミハル通信株式会社 | ||||||
03201 | 低コスト・高品質なミリ波・テラヘルツ帯へのB5G対応高周波数移行技術の研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人大阪大学 |
当初の目標・計画に沿って研究を進め、良い成果が得られている。光領域を用いて高速電気信号の周波数・ボーレート変換を行うという技術は、独創性が高く、今後の発展が期待できる。今後も研究開発を継続されて、積極的な成果発信を行うことを期待する。
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A | |
三菱電機株式会社 | ||||||
03301 | マルチチャネル自動接続を実現する赤外自己形成光接続の研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人宇都宮大学 |
本研究開発では、マルチチャネル自動接続を実現するための自己形成光材料と自動形成接続プロセスの研究開発に取り組んだ。研究開発は計画通りに進み、一部目標に達しない項目もあったが、全体としては概ね目標通りの成果を上げることができた。知的財産や学術的な成果についても、概ね目標を達成することができた。研究費に見合った成果である。本研究課題で取り組んだ自動接続技術は独自性が高く、マルチコアファイバの光接続工程のコストと効率を従来技術に比べて大幅に改善することが期待される。今後は、本研究開発で得られた課題に取り組むとともに、競合する接続技術に対する優位性を主張していくことが重要である。また、研究開発した技術の実用化・社会実装に向けた取り組みも期待したい。
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A | |
Orbray株式会社 | ||||||
03401 | Intelligent Reflecting Surfaceによるプロアクティブな無線空間制御と耐干渉型空間多重伝送技術の研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人東北大学 |
プロジェクト進行上の課題はあったものの、シーズ創出の点では一定の成果が得られている。アカデミックな研究成果という観点では、IEEE論文誌や著名国際会議において発表を積み上げており、さらに国内学会でも積極的な外部発表を行っていることから、一部目標値を少し下回る点はあるものの概ね大きく上回った成果が得られていると判断される。費用対効果についてもほぼ妥当と判断される。一方実用化の面では、IRSの実機を用いた検証が項目1および2の双方でできていない点で、実機導入が遅れたことを勘案しても残念である。特に項目2については、理論面での貢献は認められるものの、PoCとしてIRSの入手が遅れたことに伴って実機検証をシミュレーション評価に置き換えたにもかかわらず、工程管理の甘さから実証が行えなかった点は問題である。全体的には、要素技術の開発については高い成果が出ており、高く評価できるのに対して、実用化検討として重要なPoC検証は、その開発工程管理も含めて問題があったと判断され、この点は研究全体において大きなネガティブインパクトを有する点である。
なお、IEEE802.11の標準化対応として、当初計画では、次世代無線規格(802.11bn)へのIRS制御の採用に向けたコンセプト提案やWG/TG立ち上げに向けた機運醸成を目指していたが、結果として標準化機関への働きかけがなされていない。標準化においては標準化団体での標準化対応分野の選択も含めて話し合いで決まるので、必ずしも予定通りに進むとは限らないが、今後は無線LANに加えて6Gでの適用も課題となるので、それに向けて引き続き研究開発の継続を期待したい。本プロジェクトの目標は6Gに向けた必須特許取得率の向上にあることから、6Gに向けた研究の方向性をしっかりと構築し、今後の研究を進めていただきたい。
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B | |
株式会社国際電気通信基礎技術研究所 | ||||||
03501 | Beyond5Gの高速通信・低遅延等に適したエッジAIソフトウェアの開発と動作実証に関する研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人大阪大学 |
本研究開発では、エッジAIに適した高速・軽量リアルタイムAIソフトウェアを研究開発し、複数の連携研究者と共同で実証実験・検証が行われた。いずれの研究開発項目についても達成度は100%であり、研究開発は計画通りに実施された。計画を大幅に超える件数の優れた学術成果が得られており、高く評価できる。また、複数の連携企業との実証実験を実施しており、産業界との連携が積極的に推進されており、実用化への取り組みは高く評価できる。研究開発された高速・軽量なエッジAI技術は学術的な波及効果や、幅広い産業応用が期待できる。
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S | |
03601 | 空間並列チャネル伝送に向けた垂直入射型ナノハイブリッド光変調器・受信器の研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人東京大学 |
研究目標は十二分に達成されている。微細加工技術を基軸に、垂直入射型光変調・受信器の設計が緻密に検討され、目標を上回る光応答特性の達成や偏波多重コヒーレント受信器に活用できる新規なメタサーフェスの機能発現など、当初の想定を超える成果があげられた。ナノインプリントリソグラフィを取り入れたSiグレーティング加工プロセスが開発され、今後の実用的なデバイス開発に期待がもてる。費用対効果も問題ない。
シーズ指向の研究であり、半導体物性、プロセス技術、光工学などの基礎物理をベースにメタサーフェスの物理をうまく活用してB5Gに波及できる可能性を示した萌芽的研究成果である。学術的な成果は申し分ない。今後は、B5Gに対応可能なテラビット級光トランシーバを実現し、メタサーフェスデバイスの社会実装に向けて他の研究機関や企業と協力してほしい。
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S | |
浜松ホトニクス株式会社 | ||||||
株式会社KDDI総合研究所 | ||||||
国立大学法人静岡大学 | ||||||
03701 | B5G超低消費電力高効率ネットワーク構成に向けた高機能材料の研究開発 | R3 | R5 |
◎国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究目標達成については、項目1の材料探索では広い範囲の材料探索を行なって新規材料の目処が立っており、目標を達成したと言えるが、項目2については想定外の装置の故障で遅延している。2024年9月には当初目標が達成できるとしているが、現状では目標未達であり、満足できる結果とは言えない。2024年9月以降に再度評価が必要と考える。新規材料の発見の波及効果は大きく、この分野で世界をリードできる可能性もある。さらに、それら新規材料を用いた不揮発性の光スイッチやTHzエミッタなど、B5G通信システムにとっても重要技術である。
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B | |
学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 | ||||||
国立大学法人東北大学 | ||||||
03801 | 低遅延でインタラクティブなゼロレイテンシー映像・Somatic統合ネットワーク | R3 | R5 |
◎学校法人早稲田大学 |
遠隔操作における通信・計算処理によって生じる物理的な遅れやずれを予測技術を用いて「ゼロレイテンシー」に近い状態を作ろうとする提案で、これを視覚と体性感覚のマルチモーダルな情報統合で実現しようというものである。そのための要素技術の開発は目標通り着実に行われている。さらに実用化に向けたプロトコル開発や実証実験も行っており、費用対効果もそれなりに評価できる。しかし、今回の開発が適用できる場面は限定的なものであり、視覚情報と体性感覚を統合して汎用性を増すことや遠隔地での作業に必須の体性感覚情報のフィードバックといった課題に手がつけられていないことなど、実用化に向けては多くの課題が残っている。特許件数についても目標値を大きく下回っている。今後、遠隔操作、遠隔制御は少子高齢化の進む地方を支える技術として、また宇宙や危険な箇所でのロボットの遠隔操作など活用できるすそ野は広く、波及効果は大きい。今後の研究開発に期待したい。
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A | |
アストロデザイン株式会社 | ||||||
国立大学法人京都大学 | ||||||
03901 | 超多数・多種移動体による人流・物流のためのダイナミックセキュアネットワークの研究 | R3 | R5 |
◎ジャパンデータコム株式会社 |
アカデミックな研究成果に関して、国際会議でのBest Paper Award受賞など、要素技術に関する成果は優れており、費用対効果も一定程度出せている。しかし、プロジェクトが掲げた100万台のノード管理や66%以上の周波数帯域削減といった大きな目標に関しては、そのインパクトの強い主張が十分に達成されたとは言い難い。実際にこれらの野心的な目標を達成するためには、全体的なアーキテクチャに関するさらなる検討と計画が必要であり、今後の研究開発ではこれらの点に重点を置いて取り組むべきである。総合的な観点から見ると、要素技術の発展可能性は認められるが、大きな目標の達成という面では平均的なレベルにとどまっている。したがって、総合評価としては「適切」と判断しつつも、実用化に向けたスケーラビリティの実現や全体的なアーキテクチャの強化が今後の課題となる。
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A | |
学校法人早稲田大学 | ||||||
04001 | 関数型パラダイムで実現するB5G時代の資源透過型広域分散コンピューティング環境 | R3 | R5 |
◎国立大学法人東京大学 |
本研究開発は、Beyond 5Gに向けて、関数型言語を基礎とした資源透過型の広域分散処理コンピューティング環境を開拓することを目指した研究開発である。広域分散処理プラットフォームの基盤ソフトウェアの研究開発と、ユースケースとなる画像解析アプリを対象としたPoC デモシステムの開発および実験に成功している点は高く評価できる。また、研究開発の成果物を全てオープンソースとして公開して高い評価を受けている。全体として、費用対効果が概ね適切であったと認められる。一方で、一部の開発項目では目標達成度が低く、学術成果については期間内に全く対応されていない項目もある。また、標準化についても結果的に今後の課題となっている。これらについては、今後の活動に期待したい。普及、社会実装に向けた取り組みにも期待する。
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A | |
高知県公立大学法人高知工科大学 | ||||||
国立大学法人大阪大学 | ||||||
株式会社シティネット | ||||||
さくらインターネット株式会社 | ||||||
学校法人近畿大学 | ||||||
04101 | 300GHz帯アンテナ評価技術の実用化 | R3 | R5 |
◎株式会社フォトニック・エッジ |
300GHz帯におけるアンテナ評価は、将来的には必須な重要技術であり、本研究は、それを実現させる有望な技術開発であると判断される。実測による評価結果が近々報告されるとのことなので、最後まで頑張っていただきたい。研究費はあまり多くはないが、この周波数帯における我が国の技術的優位性を高めることができる成果であることから、費用対効果は十分高いと判断される。
目標の達成状況は、前述のように300GHz帯の実測データによる評価が未完であることは残念であるが、全体的には、本研究の目的をほぼ達成する成果が得られていると判断される。
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A | |
7G aa株式会社 | ||||||
04201 | Beyond 5G超大容量無線通信を支えるテラヘルツ帯のチャネルモデル及びアプリケーションの研究開発 | R3 | R5 |
◎シャープ株式会社 |
代表研究者、研究分担者の研究実績をベースとして、テラヘルツ帯チャネルモデルとアプリケーション、ユースケースを追求して多くの果実を得ている。国際共同研究型として実施して、海外の研究者と密接な連携を図りながら、多くの学術発表ならびに多くの標準化提案を行っている。自己評価での達成状況は100%以上であり、目標設定・計画も妥当であったと判断する。
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S | |
国立大学法人京都大学 | ||||||
国立大学法人東京大学 | ||||||
04301 | 欧州との連携による300GHzテラヘルツネットワークの研究開発 | R3 | R5 |
◎国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 |
300GHz帯での屋外での降雨や降雪の影響のデータも取得できており、今後の送受信間距離の変更なども含めて伝搬特性のデータが取得できるテストベッドが構築できたことはたいへん意義深い。またこの周波数帯で今回開発した近傍界測定系で正確に高利得アンテナの放射パターンが評価できるようになったことや、300GHz帯のネットワークの自動配置に向けた回線切り替えのアルゴリズムができ、実際の降雨データを基にしたシミュレーションで効果を示せたことなど、研究の成果は目標を達成していると判断できる。従来、無線リンクは瞬断が存在するという前提でのシステム設計が主流であったが、無線が持つ動的運用性によってそれが解消できること、さらにそれがテラヘルツ帯で可能であるということは非常に重要なメッセージであろう。今後もこの分野の積極的な研究開発を期待する。
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A | |
学校法人早稲田大学 | ||||||
学校法人千葉工業大学 | ||||||
04401 | 次世代公衆無線LANローミングを用いたオープンかつセキュアなBeyond 5Gモバイルデータオフローディング | R3 | R5 |
◎国立大学法人京都大学 |
この研究開発プロジェクトは、OpenRoamingとSIM認証を連携させることにより、5G/B5Gと無線LAN間のセキュアかつ容易な切り替えが可能な環境を構築し、一定の社会実装を達成している点で成果を示している。Wi-Fiアクセスポイントの実装やTOKYO FREE Wi-Fiへの採用など、具体的な応用例が評価され、B5G環境でも活用される可能性が高いと期待されている。これらの点は、国民的利益に寄与し、広範なアプリケーションへの波及効果が期待される。
しかしながら、プロジェクト全体としては、最終年度の予算減少により全項目での目標達成に至らず、標準化活動も進められたものの、提案の中身が薄く、期限切れとなっている現状は成果としては不十分である。また、学術論文や国際会議の数が目標に未達であること、知的財産への取り組みが不足している点も課題である。そのため、研究成果の費用対効果についても不十分であると言わざるを得ない。総合的に見ると、一部社会実装に向けた有用なステップを踏み出しているものの、目標の完全な達成、標準化への貢献、知的財産戦略の強化など、さらなる改善と発展が不可欠である。今後の取り組みにおいて、これらの課題に対する明確な計画と実行が期待される。
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B | |
株式会社Local24 | ||||||
国立大学法人東北大学 | ||||||
大学共同利用機関法人情報システム研究機構 国立情報学研究所 | ||||||
04501 | Beyond 5G超高速・大容量ネットワークを実現する帯域拡張光ノード技術の研究開発 研究開発項目1 帯域拡張光送受信技術の研究開発 研究開発項目2 帯域拡張波長多重光ノード構成技術の研究開発 副題:光ネットワークのビットレート距離積拡張に向けた帯域拡張光ノード技術の研究開発 |
R4 | R5 |
◎富士通株式会社 |
本研究課題では、150Gbaud以上で1Tbps・500km伝送を可能とし、帯域(B)と距離(D)の積を3倍以上にすることで波長領域資源の経済的活用を目指している。現時点では130Gbaud超を対象にしているが、世界的に見ても先進的かつ実用志向の研究計画で、研究経費に見合った十分な成果が得られている。世界市場を獲得するための実用化を前提とした研究開発であり、当初より実用化・標準化に取り組んでおり、一部の技術はプレスリリース・寄書提案を行うレベルに達している。今年度末の目標に対する達成状況は「非常に優れている」と判断できる。
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S | B |
日本電信電話株式会社 | ||||||
古河電気工業株式会社 | ||||||
04601 | Beyond 5G超高速・大容量ネットワークを実現する小型低電力波長変換・フォーマット変換技術の研究開発 研究開発項目1 小型波長変換・フォーマット変換用低電力デジタル信号処理技術の研究開発 研究開発項目2 小型波長変換・フォーマット変換用フロントエンド技術の研究開発 副題:大容量光ネットワークの利用効率向上に向けた小型低電力波長変換・フォーマット変換技術の研究開発 |
R4 | R5 |
◎日本電信電話株式会社 |
順調に研究開発が進められており、一部の項目については前倒しで成果が得られている。
開始2年後の進捗評価においては優れた成果と認められるが、一方、最終目標に到達するか否かについては現状では不確定であり、今後の達成と成果を期待したい。
シリコンフォトニクスによる光回路とアナログ高周波回路の集積化は、技術的見地からも魅力的で重要な研究課題である。我が国が強みを持つ研究・技術分野である。大きな果実を獲得されることを期待する。
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S | B |
三菱電機株式会社 | ||||||
日本電気株式会社 | ||||||
富士通株式会社 | ||||||
04701 | Beyond 5G超高速・大容量ネットワークを実現する光ネットワークコントローラ技術の研究開発 研究開発項目 1 光ネットワークのコントローラ技術 副題:オンデマンドに End-to-End 光波長パスの設定・管理を行う光ネットワークコントローラ技術の研究開発 |
R4 | R5 |
◎富士通株式会社 |
本研究開発では、光ネットワークをマルチベンダ装置で柔軟に構成し制御できる光コントローラ技術に関して、各種IF仕様の明確化やキーとなるソフトウェアの試作が予定通り実施されている。学術成果も十分な成果を挙げており、外国出願は当初の予定数を大きく超えており、投入した研究経費に見合った十分な研究成果が得られている。実用化や相互接続に向けての取り組みは十分に行われており、将来の社会実装が期待される。以上のことから、本研究開発は将来の社会実装、海外展開を視野に入れて十分な取り組みがなされており、優れた研究成果が得られていると評価できる。
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A | B |
日本電気株式会社 | ||||||
日本電信電話株式会社 | ||||||
04801 | Beyond 5G超高速・大容量ネットワークの自律性・超低消費電力を実現するネットワークサービス基盤技術の研究開発 研究開発項目1 ネットワークサービス基盤技術 副題:超高速・大容量ネットワークの一元的な制御や電源最適化を実現するネットワークサービス基盤技術の研究開発 |
R4 | R5 |
◎日本電気株式会社 |
本研究開発では、ネットワーク機器を仮想化して自律的な制御を可能とすることでリソース配分や電力消費の最適化を実現することを目的に、5つの研究開発項目に取り組んでいる。基金制度の変更により、研究開発期間が当初の5年から2年に短縮された。
2023年度の目標は十分に達成している。加えて、一部の研究項目間の連携を前倒しで実施している。また、標準化提案、知財出願、外部発表については最終目標を超える成果を達成している。全体として、非常に優れた成果をあげており、これまでの研究経費に十分に見合う成果が得られている。最終目標に対する達成度は各項目で50%から60%程度である。研究期間の短縮の影響であることは明らかであるが、最終目標に対する総合評価はこの達成度を基準とし、実用化に向けた取り組みの状況を総合的に勘案した結果である。本研究開発は、大規模なネットワークの管理・運用、多様なサービスの提供における労働人口減少、省エネの課題解決とも関係しており、最終目標が達成されれば、大きな社会的なインパクトが期待できる。本分野における我が国の国際的な競争力の観点からも注力されるべきテーマであると考える。本研究開発の成果をベースとして、さらに研究開発を進めて頂きたい。
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S | B |
日本電信電話株式会社 | ||||||
富士通株式会社 | ||||||
株式会社NTTドコモ | ||||||
05301 | 高精度時刻同期に基づく超低遅延デジタルツイン処理基盤の研究開発 | R4 | R5 |
◎日本電気株式会社 |
4年間のプロジェクトが2年間に短縮されており、その短期間でも時刻同期のpsecオーダーを実現する技術については方式提案と実機による実証がなされており、その研究課題に関しては当初目標をほぼ達成している。それ以外の研究課題に関しては、検討や実験が不足している。だが、期間短縮を考慮すればある程度の進捗は得られていると言える。ただし、開発された技術が実環境で有益であるかの検証は残念ながらまだ行えていない。成果公表・知的財産については、もっと積極的に進めるべきである。本技術をどのように社会実装につなげるかは今後の課題となる。
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A | B |
株式会社スペクトラ |
<総合評価 S:非常に優れている、A:適切である、B:やや劣っている、C:劣っている>