国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、令和2年度から新たに研究開発を開始する委託研究(公募)3課題について、下記のとおり受託者を決定しました。

1. 研究開発課題に対する提案課題と受託者

(1) 高度自動運転に向けた大容量車載光ネットワーク基盤技術の研究開発(課題番号 218)(1件を採択)

■提案課題:多機能光集積回路を利用した高信頼大容量車載光ネットワークの研究開発  受託者:学校法人慶應義塾(代表研究者)
古河電気工業株式会社
株式会社メガチップス
国立大学法人東京大学
国立大学法人大阪大学
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  •    概要: 自動運転には、車の頭脳が車外と高速通信し、センサからの多量の情報を受信して判断・制御する技術が要求されている。これに対して、本研究では、50 Gbps 以上の通信を高信頼に行う車載ゾーン分割型光バックボーンネットワークを実現する。光送受信器の信頼性を高めるために、レーザ光源はマスター装置のみに搭載し、ゲートウェイ装置には耐環境性のある変調・受光素子を搭載する。光集積技術を活用して、デバイス・ネットワーク冗長化を行い、車載光ネットワークの信頼性を高める。ネットワークのインタフェースにはEthernet を利用して、従来のCAN 等のレガシーネットワークを収容し、現在の技術との後方互換性を担保する。

(2) Beyond 5Gにおける衛星-地上統合技術の研究開発(課題番号 219)(1件を採択)

■提案課題:衛星—地上統合技術の情報収集、技術確立及び有効性確認   受託者:日本無線株式会社(代表研究者)
スカパーJSAT株式会社
国立大学法人東京大学
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  •    概要: Beyond 5Gにおける衛星の方向性を見出すため、ESAと日欧共同実験を実施し、SDN/NFV、ネットワークスライシング及びネットワークの統合管理に関する先行技術の情報を効率的に収集し、国内のユースケースを考慮した実証実験を実施することにより国内ニーズに合致した技術を習得する。また、衛星とローカル5Gとのシームレス接続を可能とする研究を行い、SDN/NFV、ネットワークスライシング及び統合的ネットワーク管理技術を確立する。

(3) データ連携・利活用による地域課題解決のための実証型研究開発(第3回)(課題番号 220)(10件を採択)

■提案課題:JGNと5Gを用いた遠隔地手術データ連携とAI解析による地域間医療技術の高水準化のための研究開発   受託者:公立大学法人公立はこだて未来大学 (代表研究者)
学校法人東京女子医科大学
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  •    概要: スマート治療室の登場により各種医療機器からの術中情報の取得が可能となったが、これらの術中情報は各病院内でのみ使用されているのが現状である。AI医療による医療技術の高水準での均一化のため、これらの多種多様な術中情報の他拠点との共有や解析および遠隔地からの確認が望まれている。そこで、本研究では、高速かつ大容量なJGNや5Gを用いて、スマート治療室より得られる情報を共有し解析可能な共通プラットフォームを構築し、これらの情報をビッグデータとして蓄積し、AI開発等へ利活用可能とする。さらに、術中情報へのリアルタイムなAI解析により、術中の手術工程や状況等を容易に把握可能とする。これにより、遠隔地の熟練医等が容易に手術状況をどこからでも確認し、手術のアドバイスを可能とする。
■提案課題:被災地域における医療救護活動のデータ共有と組織間連携に関する研究開発   受託者:株式会社スペースタイムエンジニアリング (代表研究者)
国立大学法人九州工業大学
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  •    概要: 本研究では、発災直後の被災地域内における医療救護活動で、複数分野に渡る組織間で情報共有・連携を可能にする救護活動データ共有・連携システムを開発する。開発システムのAPIはオープン化し、他の防災情報システムとの連携も図る。また、開発システムを用いた医療救護活動訓練を複数回実施し、得られたシステム利用データから各組織の挙動と他組織への応答をモデル化して、医療ニーズと医療資源のマッチングにおける意思決定支援に利活用する。さらに、高知県と徳島県で組織横断的な医療救護訓練を実施して研究成果の効果検証・評価を行うと共に、実災害時に利活用されるデータ共有・連携システムとしての社会実装を目指す。
■提案課題:個人別熱中症リスク情報見える化システムの研究開発
~埼玉県熊谷市における効果検証~
  受託者:凸版印刷株式会社 (代表研究者)
学校法人東京理科大学
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  •    概要: 個人の属性や状態に応じた確度の高い熱中症リスク情報の収集・見える化システムの構築を行う。提案システムは次の根幹技術からなる。①確度の高い熱中症リスク算定に必要な気象データの安価・低消費電力・コンパクトな測定・収集IoTデバイス。②理論(人体熱収支モデル)とデータ(熱中症救急搬送資料)をAIにより融合させる新たな熱中症リスク指標。③個人別熱中症リスクの効果的な情報発信システム。夏の暑熱化、それによる健康被害は今後ますますの悪化が確実視されており、本提案は熱中症ゼロ社会実現に繋がる先駆的事業である。
■提案課題:情報銀行による匿名化データサービスと地域永続化実証   受託者: 学校法人慶應義塾(代表研究者)
フェリカポケットマーケティング株式会社
学校法人早稲田大学
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  •    概要: さいたま市浦和美園地区を中心とした産官学連携の街づくりを進めており、その中心拠点UDCMiでは各種関連社会実装を進めている。本研究開発課題では、地域のデータや連携をテーマに、既に運用している地域情報インフラとその中心である情報銀行について、技術的には、情報取得を集約しフローとして管理する仕組みの構築、および情報を公開し利用を促進させるために必要な情報匿名化処理や情報を秘匿し、特定の利用を達成するために必要な秘密計算処理の構築に取り組む。その結果として、インフラ・サービスの永続化、情報匿名化に関する利用者の理解度改善、匿名化データ利用許諾の仕組みの柔軟化や易化を達成する。各種技術標準化、関連団体との連携が並行して進んでおり、社会実装と同時に事業化検討も進めながら、情報銀行に求められる技術的要素の構築と、その上で展開されるスマートコミュニティ・データサービスを通して、インフラとしての在り方を評価することを目的とする。
■提案課題: AI・IoTを活用した北海道における次世代施設栽培の確立   受託者:国立大学法人室蘭工業大学(代表研究者)
エア・ウォーター株式会社
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  •    概要: 大規模施設栽培は、持続性が強く危ぶまれている日本農業の切り札として期待される一方、その半数以上が赤字経営であり収益面で大きな課題を抱えている。本研究開発では、農業が主要産業であり広大かつ安価な土地を有する北海道は大規模施設栽培に最適な場所と考え、北海道におけるAI・IoTを活用した高収益な施設栽培のための方法論確立を目指す。具体的には、AIを活用した収量予測といった収益性向上を目的とした施設園芸AIシステムの実現とその実現のために必要なIoT機器の設置・運用方法の確立を目指す。共同提案者が実際に営業している大規模施設栽培トマトをテストフィールドとして利用し、社会実装を強く意識した研究開発を進める。
■提案課題:人や様々なモノの接点を検知するイメージセンサネットワーク基盤の構築   受託者:国立大学法人京都大学(代表研究者)
株式会社エクサウィザーズ
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  •    概要: 人々の移動は交通機関の利用や種々の消費行動を生むため経済活性化の源である。しかし、移動により事故や、犯罪、ウイルス感染といったリスクも生じる。そこで、人や様々なモノの接点を検知するためのセンサネットワーク基盤が求められる。センサとしてカメラや3次元イメージセンサが有効であるが膨大なデータ容量とプライバシーが問題となる。そこで、独自の機械学習による「データの目利き」技術とブロックチェーンの融合技術により、これらの問題を解決し人やモノの接点を高精度で検出する。少子高齢化やインバウンド依存の経済といった課題が顕著であるモデル地域として、京都での実験を通じ有効性を実証するとともに、3次元イメージセンサデータと人、車両の接点のデータを取得する。警察のデータとも連携し精度の検証も行う。本研究成果により、移動に伴うリスクの検知に有用なセンサデータを安全に複数の自治体間で共有・相互活用が可能な情報流通基盤が確立される。
■提案課題:大規模位置データ連携による観光施策立案評価システムの研究開発   受託者: 国立大学法人九州大学(代表研究者)
株式会社コロプラ
国立大学法人九州工業大学
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  •    概要: 本研究開発では、モバイル広告から得られる位置情報ビッグデータを基盤とし、SNSやレンタカー情報等の異なるビッグデータとのデータ連携を行った上で、自治体が実施するさまざまな施策やイベントの効果測定を簡単に行えるようにするEBPM(Evidence Based Policy Making)支援システムを開発する。提案システムでは、位置情報データとイベントデータを持続可能な形で収集・分析・提供するかということが肝となる。特に、地域イベントを網羅的に収集するために、データドリブンかつ対話型のデータ収集システムを実現する。同時に、収益モデルの検証まで踏み込み、持続可能な観光施策立案評価システムのエコシステムをデザインする。
■提案課題:バーチャル物見櫓(V-THUNDARBIRDs)
~災害発生地域における緊急事態対応に必要な情報収集・共有システム~
  受託者:一般社団法人先端空間情報技術評価支援センター (代表研究者)
御殿場市役所
国立大学法人千葉大学
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  •    概要: 災害発生時の被災現状を本提案の2機のドローン等で構成されるバーチャル物見櫓から取得し、地形情報・ハザードマップ等の地域データを交え地理情報システム(GIS)を駆使し、災害対策本部での対応協議に役立てる。さらに、当事者(現場対応者や被災者)に協議された対応情報をスマートフォン会議システムによって提供し、同時に当事者から現場の情報を収集、対応策に反映させるシステムを構築する。また、提案するシステムは地域のイベント等に適用して利用者(市民)にシステム利用に親しんでもらう。このシステムの開発は御殿場市企画部未来プロジェクト課とともに進め、同市での社会実装と実証を目的とし、広く多くの自治体に利用を広げることを目指す。
■提案課題:山間過疎地を対象とした高齢者向け屋内外包括見守りシステムに関する研究開発   受託者:国立大学法人名古屋工業大学(代表研究者)
国立大学法人名古屋大学*
 *:提案時の法人名、現在は法人統合により国立大学法人東海国立大学機構
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  •    概要: 過疎地域における高齢者のみまもりは自治体にとって大きな負担になっている。特に、へき地、山間部においては住居間が離れていることが多く、時間的・予算的な負担が大きい。本研究では、プライバシーに配慮した赤外線人感センサを活用した独居高齢者みまもりシステムと、屋外におけるBLEビーコンを用いた広域見守りシステムを統合することで、過疎地域における包括的な高齢者みまもりを実施する。また、愛知県における山間過疎地域である新城市と密接に連携することにより、他地域へも転用可能な被みまもり対象者と家族、介護者、および行政機関における異常時の情報共有システムについても実装する。全国的にもみまもりシステムが必要であるが、個人情報保護等の問題点から汎用的に利用できる仕組みが必須であるため、行政システムとして他地域転用可能な地域包括高齢者みまもりシステムを研究開発する。
■提案課題:未来型住宅団地におけるサービス連携プラットフォーム   受託者:学校法人東洋大学(代表研究者)
株式会社横須賀テレコムリサーチパーク
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  •    概要: 本研究では住民同士、地域商店街、自治体との連携、ネットワークを介した勤務先との連携、IoT機器との連携、街の情報との連携、といった、住民を取り巻く多様な人、街、施設、機関、自治体等の様々なプレイヤーが提供するサービスを、オンライン、実世界問わず連携するためのプラットフォームを提案する。世界標準となっているucodeを活用して各種サービスのプロファイルを記述し、すべてをAPIで連携可能にすることで、サービス連携を実現した多様なアプリケーションを生み出すプラットフォームを実現する。本研究を通して実際の住宅団地にて実証実験を行い、本プラットフォームを活用した具体的なアプリケーションを構築・評価する。

2. 公募等の概要

 上記の課題については、令和2年2月7日(金)から令和2年3月12日(木)まで公募を行いました。
 NICTは、学識経験者で構成される評価委員会(委員長: 村上仁己 成蹊大学元教授)の評価を経て、受託者を決定しました。
 公募の詳細は、以下のWebサイトをご参照ください。
 https://www.nict.go.jp/press/2020/02/07-2.html

本件に関する問い合わせ先

イノベーション推進部門 委託研究推進室
中後 明、久保 和夫、鈴木 浩

Tel:042-327-6011

E-mail: info-itakuアットマークml.nict.go.jp