NICTは、北米、東アジア、東南アジア、およびオセアニアにおける他の10の世界最先端の研究・教育ネットワークおよび組織とともに、Asia Pacific Oceania network (APOnet) に参加し、互いに連携してアジア太平洋・オセアニア地域において高速ネットワークサービスを提供していくための覚書を締結しました。

Asia Pacific Oceania network (APOnet)
Asia Pacific Oceania network (APOnet)
APOnet覚書署名式の模様
APOnet覚書署名式の模様

APOnet(アジア太平洋・オセアニア・ネットワーク)の連携は、以下11のネットワークおよび組織によって構成され、東アジア、東南アジア、オセアニア、北米を接続します。

  • AARNet (Australia’s Academic and Research Network) - オーストラリア学術研究ネットワーク
  • ARENA-PAC(Arterial Research and Educational Network in Asia-Pacific)
  • Internet2 - University Corporation for Advanced Internet Development d/b/a - 米国の次世代インターネット開発のための大学協議会
  • KISTI (Korea Institute of Science and Technology Information) - 韓国科学技術情報研究院
  • NICT(National Institute of Information and Communications Technology)- 国立研究開発法人情報通信研究機構
  • NII(National Institute of Informatics) - 国立情報学研究所
  • SingAREN(Singapore Advanced Research and Education Network)- シンガポール先端研究教育ネットワーク
  • Pacific Wave International Exchange
  • REANNZ (Research and Education Advanced Network New Zealand)- ニュージーランド先端研究教育ネットワーク
  • TransPAC
  • UH (University of Hawaii) - ハワイ大学

研究教育のためのグローバルスケールの大規模データ共有を支援

ここ数年、センサーや科学機器の性能は爆発的な発展を見せ、超高解像度の画像や映像を得られるようになってきました。また、世界規模で高性能機器が共有されるようになり、これまでにない大規模な実験データが入手できるようになりました。このような情報や大容量のデータを、世界各地に分散する多様な分野の専門家が、国境を越えて共有し、互いにコラボレーションすることで、より重要な研究成果を達成することができます。ここに参加する11の研究・教育ネットワークおよび組織は互いに協力して、大容量のデータ転送や貴重な科学機器の共有を促進し、専門家達の重要な研究活動を支えていきます。

こうした多国間のコラボレーションやそれに伴うデータ要件をサポートするため、APOnetに参加する組織及び研究・教育ネットワークは、それぞれが持つリソースを組み合わせ、互いに協調することで、個々のネットワークを単独で運用するよりも、耐障害性、柔軟性、一貫性に優れた大洋横断高速ネットワークサービス提供システムを構築することができます。その目的は、協調関係にあるすべてのネットワークで、研究と教育に利用できるサービスを向上させることにあります。

例えば、研究・教育ネットワーク間のマルチパスの実現、ネットワークが停止した場合のバックアップ接続の提供、インターネットのエンジニアリングおよびマネジメント活動の調整、新しいネットワーク技術やサービスの共同展開、高帯域幅を必要とするアプリケーションの実験および開発、ルーティング手法の共有のサポート、および測定データの共有など、様々な分野での協力強化を計画しています。

「ARENA-PACは、長い間アジアパシフィック地域の大学・研究組織と連携して国際研究教育ネットワークのコラボレーションを牽引してきたWIDEプロジェクトの国際接続を起源とし、オーストラリア ブリスベンを拠点としたAPIDTのプロジェクトとして、新しい形で発足した、アジアパシフィック地域の海底ケーブルに基づいた研究教育ネットワークです。ARENA-PAC の運用は、WIDEプロジェクトが引き続き担当し、アジアパシフィックの仲間、特にこれまでも深く連携をしてきたAI³,SOI ASIA, APNICと共に、地域の研究・教育ネットワークの推進はもちろん、この地域が世界中の研究教育ネットワークと連携をして、力強い未来のインターネットの動脈となるよう、貢献していきます。」
村井 純 - ARENA-PAC, WIDEプロジェクト, 慶應義塾大学サイバー文明研究所

「NICTは、情報通信技術(ICT)開発のための検証プラットフォームとして、研究開発用の高速ネットワークテストベッド及びグローバルな研究活動を強化しています。NICTは、Beyond 5G時代の社会的・技術的ニーズを検証するための試験環境を提供する予定です。今回、アジア太平洋・オセアニア地域の11ネットワークに連携を拡大したことで、世界の研究機関との高速ネットワークテストベッドに関する共同研究開発がさらに活発化することを期待しています。」
茨木 久 - 国立研究開発法人情報通信研究機構 理事

「高速でレジリエントな接続に向けた強力なパートナーシップは、アジア太平洋地域の研究・教育コミュニティに多くの恩恵をもたらすでしょう。APOnetは、高エネルギー物理学、地震学、天文学、測地学などの様々な研究分野で、地域を超えたコラボレーションを促進し、また、マルチパスネットワークや高性能なデータ転送などの工学的課題を推進すると確信しています。」
漆谷 重雄 - 国立情報学研究所 副所長

APOnet グローバル研究・教育ネットワークの参加組織

ARENA-PACは、Asia Pacific Internet Development Trust (APIDT) Infrastructure Pty Ltdのプロジェクトで、2020年に設立されました。ARENA-PACは、かつてWIDEプロジェクトが運用していたアジア太平洋地域のネットワークプロジェクトを継承したもので、現在はWIDEプロジェクトによって運用されています。WIDEプロジェクトは1987年に日本で発足し、1989年からハワイ大学のPACCOMプロジェクトを通じて世界のインターネットに接続しています。WIDEは1997年からM-Root DNSサーバーを運用しており、現在は株式会社日本レジストリサービス(JPRS)やAsia-Pacific Network Information Centre(APNIC)と共同で運用しています。WIDEは、2004年から2009年にかけて、IEEAF日米間太平洋回線の東京側の運用を担当しており、GLIF (Global Lambda Integrated Facility) のGOLE (GLIF Open Lightpath Exchange) としてT-LEXをホストしました。現在 WIDE Projectは、国立天文台(NAO-J)とともに、Pacific Wave、TransPAC、および APAN-JPと協力して、100Gbps Pacific Wave/TransPAC 回線用のPW-WIDEスイッチを東京でホストしています。詳細は、https://www.arena-pac.net/をご覧ください。

オーストラリア学術・研究ネットワーク(AARNet)は、高度な通信サービスに加えて、サイバーセキュリティ、データ、コラボレーションなどの幅広いサービスを提供しており、オーストラリアの研究・教育分野に固有で進化していくニーズに応えるために設計されています。AARNetの利用者は200万人以上にのぼり、大学、研究機関、学校、職業訓練機関、および文化機関の関係者が教育、学習、研究のためにAARNetのネットワークとサービスを利用しています。詳細は、www.aarnet.edu.auをご覧いただくか、Twitterで@aarnetをフォローしてください。

Internet2は、会員制の非営利先端技術コミュニティで、1996年にアメリカの主要な高等教育機関によって設立されました。Internet2は、各会員の強みを活かし、統合し、増強する多様な技術ソリューションのポートフォリオを提供しており、会員の教育、研究、およびコミュニティサービスに関する使命を支援しています。Internet2の中核となるインフラには、高度でカスタマイズされた先進サービスを提供するために構築された、アメリカ最大かつ最速の研究・教育ネットワークが含まれています。この先進サービスのアクセスとセキュリティは、コミュニティが開発したID連携トラストフレームワークによって確保されています。詳細は、www.internet2.eduをご覧いただくか、Twitterで@Internet2をフォローしてください。

韓国科学技術情報研究院(KISTI)は、韓国のスーパーコンピュータと研究ネットワーク基盤(KREONET/KREONet2)によって、韓国の科学、技術、および産業の発展に貢献する先進的な研究基盤を提供しています。KREONETの使命は、最先端のネットワーク技術を適用して、世界に通用する国立研究ネットワークインフラとアプリケーションプラットフォームを開発・構築・運用し、高等教育機関、国立研究機関、韓国研究開発機関、政府、図書館、大学病院、産業界の研究所などの研究開発コミュニティや研究者に、先進ネットワークサービスとコラボレーション環境を提供することです。https://www.kisti.re.kr/

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、情報通信分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関です。NICTは、豊かで安心・安全な社会の実現や我が国の経済成長の原動力である情報通信技術(ICT)の研究開発を推進するとともに、情報通信事業の振興業務を実施しています。詳細は、https://www.nict.go.jp/およびhttps://testbed.nict.go.jp/jgn/をご覧ください。

国立情報学研究所(NII)は、日本全国に設置された接続拠点を通じて日本中の大学・研究機関を接続する情報通信ネットワーク「学術情報ネットワーク(SINET)」を運用しています。SINETは、大学や研究機関などの間で研究・教育および科学情報の流通を促進することを目的としています。また、アメリカのInternet2、ヨーロッパのGÉANT、アジアの研究教育ネットワークなどの研究ネットワークとも接続されており、ネットワークを介した研究情報の普及とコラボレーションを促進しています。詳細は、www.sinet.ad.jpをご覧ください。

シンガポール先端研究教育ネットワーク(SingAREN)は、シンガポールの国立研究・教育ネットワークです。SingARENは、国内外の接続を提供し、シンガポールの研究・教育コミュニティに寄与している唯一のネットワークです。SingARENのメンバーは、高等教育機関、研究機関、政府、およびネットワーク業界の関係者で構成されています。SingARENは、科学研究に向けた大規模なデータセットの国際的な高速転送を促進し、耐障害性の高い国際的なリンクと高速ファイバーネットワークを通じて、先進的なネットワークの技術デモンストレーションを実現します。SingAREN Open Exchange(SOE)は、シンガポールの研究・教育コミュニティと、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカといった他国の研究・教育ネットワーク(RENs)を相互に接続しています。SingARENは、Eduroam、Singapore Access Federation(SGAF)、データベースミラーリングサービスなどの付加価値サービスをシンガポールの研究・教育コミュニティに提供しています。https://www.singaren.net.sg/

Pacific Waveは、アメリカとアジア太平洋およびオセアニア地域の接続のための分散型の国際ネットワークピアリングおよび交換設備であり、シアトル、サニーベール、パロアルト、ロサンゼルス、および東京にピアリングポイントを備えています。Pacific Waveは、Corporation for Education Network Initiatives in California(CENIC・カリフォルニア州教育ネットワークイニシアチブ協会)とPacific NorthWest GigaPop(太平洋北西ギガポップ)の共同プロジェクトであり、47か国以上を接続する29のネットワークをサポートしています。Pacific Waveは、Pacific Research Platform(PRP)との接続、AutoGOLEによるダイナミックな回線提供、実験的なドメイン間SDXコラボレーション、長距離・大容量国際回線での大容量データ転送を高速化する100-400Gbpsデータ転送ノード(DTNs)へのアクセスなど、先進サービスをサポートしています。https://www.pacificwave.net/

REANNZは、ニュージーランドの政府認可法人である国立研究・教育ネットワークです。REANNZは、科学者、研究者、革新者、および教育者の独自の要求を満たすように設計された、専門的な高性能デジタルネットワークを運用および支援しています。大容量データ転送機能と、複数機関でのコラボレーションを促進するネットワークツールへのアクセスを提供することで、世界中の優れた科学施設とのグローバルなコラボレーションの機会をニュージーランドにもたらしています。https://www.reannz.co.nz/

TransPACは、International Networks at Indiana University(IN@IU)ポートフォリオの一部であるとともに、NSF (National Science Foundation・アメリカ国立科学財団)による出資プロジェクトであり、科学と研究において協調的なデータ共有を実現する高速ネットワークとその利用を支援しています。IN@IUは、大洋横断高速回線のサポートに加えて、エンドユーザーに対する直接サポートも行っており、データ転送の改善、国際的なネットワークテストベッドの提供、および先進的なネットワーク技術の提供などを行っています。https://internationalnetworks.iu.edu/

ハワイ大学(UH)は、1907年に設立されたハワイの州立高等教育機関で、ハワイ諸島に分布する10のキャンパスと数十の研究施設、およびコミュニティベースの学習センターで構成されています。UHは、現地や海外のパートナーと協力して、太平洋地域の大半の主要ネットワーク運用団体と相互接続する大容量の研究・教育ネットワークをサポートしています。https://www.hawaii.edu/

本件に関する問い合わせ先

総合テストベッド研究開発推進センター テストベッド連携企画室

担当者:後藤 雅徳

E-mail: masa.gotoアットマークnict.go.jp