NEDO、スカパーJSAT(株)、NICTは、3月2日に愛知県愛西市の木曽川河川域とその上空で、ドローンと有人ヘリコプターの間でそれぞれの位置や高度、進行方向、識別番号などの情報を1秒ごとに相互に共有する機体間通信実験を世界で初めて実施しました。
本実験では、NICTが開発したドローン位置情報共有システム「ドローンマッパー」を用いて920MHz帯で通信を行い、ドローンと有人ヘリコプターが同一空域を飛行中に相互の情報を共有し、運航管理者が相互の位置などを把握できることが確認できました。
今後、本実験で得られた知見を無人航空機搭載用無線機器の設計と高高度無人航空機への搭載方法、および運航管理システム機能に反映し、災害現場や地上通信網が未整備な地帯においてもドローンの安全な目視外飛行を可能とする運航管理システムの実現を目指します。

図1 実験の構成概念図
図1 実験の構成概念図

1.概要

NEDOは、2017年度から「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で活用できるドローンおよびロボットの開発を促進するとともに、社会実装するためのシステム構築(図2参照)および飛行試験などを実施しています。本プロジェクトにおいて、スカパーJSAT株式会社は、災害現場や地上通信網が未整備の目視外のエリアにおいて、ドローン(小型無人機)の目視外飛行を可能とする運航管理システムの構築を目指した「衛星通信を利用するドローンの運航管理システムの開発」(以下、本事業)に産学官連携体制(図3参照)で取り組んでおり、本事業では、衛星通信機能を具備したドローンのみでなく衛星通信機能を具備しないドローンに対して、衛星通信機能を具備した高高度無人航空機を介して運航管理を行うことをテーマにした各種実験に着手しています。
今般、NEDO、スカパーJSAT(株)、情報通信研究機構(NICT)は、3月2日に木曽川河川域および木曽川高畑地区河川防災ステーション(愛知県愛西市)上空において、ドローンと有人ヘリコプターの間でそれぞれの位置や高度、進行方向、識別番号などの情報を1秒ごとに相互共有する機体間通信実験に世界で初めて成功しました。
本実験では、NICTが開発した通信装置であるドローン位置情報共有システム「ドローンマッパー」を用いて、920MHz帯(LPWA方式)での通信を行いました。実験の結果、ドローンの飛行中に有人ヘリコプターが同一空域を飛行している場合でも、相互の情報を共有できることが確認できました。
NEDO、スカパーJSAT(株)、NICTは、本実験で得られた成果と知見を、無人航空機搭載用無線機器の設計と高高度無人航空機への搭載方法、および運航管理システム機能に反映し、目視外環境下においてドローンと同一の空域を飛行する有人機の位置情報などを高高度無人航空機で集約し衛星通信を介して把握できる運航管理システムの設計に反映していく予定です。
また、これらの取り組みを通じて、災害現場や地上通信設備が未整備な地帯でもドローンの目視外飛行が可能な運航管理システムの実現とともに、新たな利用領域の開拓とマーケットの拡大を目指します。

図2 本プロジェクトの目指す運航管理システムイメージ
図2 本プロジェクトの目指す運航管理システムイメージ
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図3 本事業の連携機関
図3 本事業の連携機関
図4 本事業のシステム完成イメージ(全体)
図4 本事業のシステム完成イメージ(全体)

2.実験の内容と結果

通信装置を搭載したヘリコプター(中日本航空(株)所属)が、愛西市の木曽川高畑地区河川防災ステーションのヘリポートを離着陸場とし、木曽川上空(片道約9km)を対地高度約150mで往復飛行し、地上に設置したモニター局で、同じく通信装置を搭載したドローン(テラドローン(株)提供)と有人ヘリコプターの位置情報を表示するとともに、ヘリ機上のタブレット画面にもドローンの位置情報を表示させることができました。
本事業では、高度2000m以上を飛行する高高度無人航空機を介して広域に飛行するドローンに対する運航管理を行うシステムの開発を目指していますが、ドローンと高高度無人航空機の間の通信距離は10km以上に及ぶことも想定されます。今回の実験では、約9km離れた有人ヘリコプターとドローンの間を小型・小電力の通信装置でも安定して相互の位置などの情報共有ができたことから、高高度無人航空機とドローンの間の通信手段としても利用可能であり、また、ドローンのみでなく有人機も含めて飛行中の位置や識別番号などの情報を把握し運航状況を管理できることが確認できました。
ドローンマッパー装置(GPSアンテナ内蔵)125×70×40mm、重さ153g(バッテリ除く)
ドローンマッパー装置(GPSアンテナ内蔵)
125×70×40mm、重さ153g(バッテリ除く)
ドローンへの搭載
ドローンへの搭載
図5 本実験で使用した通信装置とドローンへの搭載

図6 実験の様子(ドローン、有人ヘリ、地上モニター局相互の位置情報共有)
図6 実験の様子(ドローン、有人ヘリ、地上モニター局相互の位置情報共有)
図7 地上局タブレット画面(600m先でドローンに接近する有人ヘリの位置、方向、高度を把握)
図7 地上局タブレット画面(600m先でドローンに接近する有人ヘリの位置、方向、高度を把握)

用語解説

ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト
プロジェクト期間は2017年度~2021年度の5年間で、2017年度予算は33億円。
http://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP2_100080.html

ドローン(小型無人機)の目視外飛行
マルチコプターをはじめとするドローン(小型無人機)の目視外飛行は、現状、飛行ルートの途中でドローンを監視する補助者が必要で、飛行前は国土交通省の許可・承認を要する。なお、政府では機体の性能や安全性の確保などの要件を定め、補助者がいなくても飛ばせるような環境整備を進めている。

高高度無人航空機
高高度無人航空機(HAPS:High Altitude Platform Station)は、パイロットが搭乗せずに無人で高度2万m程度を飛行可能な航空機(本研究開発における目標は高度2000m以上)とその運用のために必要となる地上システムおよびインフラ。防災、監視、気象・環境観測、情報収集などの分野や用途で利活用が進むことが期待されている。

ドローンマッパー
ドローンやロボット間で、それぞれの位置、高度、識別情報などを直接共有し、タブレット画面の地図上にそれらの情報を表示できるシステム。その基本技術はNICTが内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で進められている「タフ・ロボティクス・チャレンジ」で開発した。本実験では、この技術に通信の長距離化、小型化の改良を加えて使用した。電波が互いに届く範囲内で、約30~50台までの端末を収容できる。
ImPACT:http://www.jst.go.jp/impact/

LPWA方式
Low Power Wide Area方式の略で、人だけでなく、あらゆるものをネットワークにつなぐIoT(Internet of Things)のための小容量無線通信技術として最近注目されている通信方式の1つ。低コストで広範囲・長距離をカバーする特徴を有する。画像のような大きなデータの伝送には適していない。

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担当:宮本、山中、永松

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