SMBC日興証券株式会社(代表取締役社長:清水 喜彦、以下「SMBC日興証券」)と国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田 英幸、以下「NICT」)は、翻訳バンク注1のスキーム下で、SMBC日興証券が有するアナリストレポートの日英対訳データを用いて、投資情報のAI自動翻訳システム注2の共同研究を開始し、金融分野に特化したAI自動翻訳システムを開発しました。金融機関での翻訳バンクへの参画はSMBC日興証券が初めてです。

背景

金融情勢の変化が激しくなってきており、投資情報をいち早く入手することが競争力を高めるカギとなっています。さらに、東証一部の売買金額の約7割を海外投資家が占めるようになり、海外投資家は日本の情報をいち早く得て投資判断をしたいと考えています。このような背景から、アナリストレポート英訳版に対する投資家のニーズは一層高まっています。

成果

NICTの自動翻訳エンジンにSMBC日興証券のアナリストレポートの日英対訳データを学習させ、金融分野に特化したAI自動翻訳システムを開発しました。従来の汎用AI翻訳と、金融に特化した本システムとの比較において、翻訳精度スコアBLEU注3で、従来の13.1から「高品質な翻訳」の域である42.8となり、3倍強の改善を達成することができました。
(下記はアナリストレポートの汎用訳と金融特化訳の例)
 
入力 H形鋼と熱延鋼板に関しては、鉄屑市況の上昇分をカバーする水準まで上昇しそうだ。
汎用訳 The prices of H-shaped steel and hot-rolled steel are expected to rise to levels that will cover the rise in the steel scrap market.
金融特化訳 For H-beams and hot-rolled sheet, we expect prices to rise to levels that offset the rise in steel scrap prices.

今後

精度の高いAI自動翻訳システムを実用化することで作業効率を向上させ、英語版アナリストレポートの発行時間を短縮するとともに、レポート数を増加させ海外投資家向けの金融情報発信を強化していきます。

 
(注1)翻訳バンクについて
翻訳バンク
自動翻訳の精度向上には、アルゴリズムの改良に加えて、翻訳データ(対訳データ)の質と量の影響も大きく、高品質翻訳データの大量の確保が重要となります。NICTは、総務省と共に翻訳データを集積する「翻訳バンク」を運用し、日本語の翻訳技術の多分野化・高精度化に取り組んでいます。

https://h-bank.nict.go.jp/

(注2)AI自動翻訳システムについて
NICTでは、AI技術で多用される深い階層構造を持つネットワークを用いた自動翻訳技術(AI自動翻訳)の研究開発を推進し、研究成果である高精度自動翻訳システムをTexTraと名付けて公開しています。
公開サイト「みんなの自動翻訳@TexTra®」(https://mt-auto-minhon-mlt.ucri.jgn-x.jp/)では、WordやPowerPointのファイルを直接翻訳するなど、様々な方法で翻訳精度を試すことができます。
(注3)翻訳精度スコアBLEUについて
同じ入力に対する、人間が作成した参照訳と自動翻訳の訳文の類似度を測る尺度で、スコア10点台「主旨を理解するのが困難である」、40点台「高品質な翻訳」等と説明される。

https://cloud.google.com/translate/automl/docs/evaluate?hl=ja#bleu

BLEU スコア 解釈 > 60 人が翻訳した場合よりも高品質であることが多い 50~60 非常に高品質で、適切かつ流暢な翻訳 40~50 高品質な翻訳 30~40 理解できる、適度な品質の翻訳 20~29 主旨は明白であるが、文法上の重大なエラーがある 10~19 主旨を理解するのが困難である < 10 ほとんど役に立たない
SMBC日興証券について
SMBC日興証券では、「お客様本位のデジタライゼーション」を実現するための様々な取り組みを実践しております。本システムを含め、今後もAIをはじめとした最新技術を活用し、幅広いお客さまにご利用いただけるサービスを提供してまいります。

https://www.smbcnikko.co.jp/

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)について
NICTは情報通信分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関として、豊かで安心安全な社会の実現や我が国の経済成長の原動力である情報通信技術(ICT)の研究開発について基礎から応用までを推進するとともに、産学官連携や事業振興などに総合的に取り組んでいます。

https://www.nict.go.jp/

本件に関する問い合わせ先

SMBC日興証券株式会社
【広報】

広報部 広報課:戸田 琢也

Tel: 03-3283-9922

E-mail: toda_takuyaアットマークsmbcnikko.co.jp

国立研究開発法人情報通信研究機構
【広報】

広報部 報道室:廣田 幸子

Tel: 042-327-6923

E-mail: publicityアットマークnict.go.jp

【翻訳に関すること】

先進的音声翻訳研究開発推進センター:
隅田 英一郎

Tel: 0774-98-6350

E-mail: textra-infoアットマークkhn.nict.go.jp