スタンドアローンでの高精度ニューラル機械翻訳を実現

ポイント

スタンドアローンで高精度のニューラル機械翻訳が実現できるシステムを共同開発
新型の接客専用オフライン翻訳機「ili PRO」に同システムを採用へ
インターネットに接続しなくても高精度の自動翻訳技術の利用が可能に

NICTは、「グローバルコミュニケーション計画」^*1の実現に向けて、多言語音声翻訳アプリ“VoiceTra^®（ボイストラ）”^*2の対応分野を医療、観光、ショッピングなどに拡張し、更なる精度向上のために音声翻訳技術の高度化の研究開発を行うとともに、民間企業と社会実装を推進しています。

株式会社ログバー（本社：東京都渋谷区、代表取締役CEO：吉田卓郎、以下、「ログバー」）は、販売中の「ili（イリー）翻訳機」にて、インターネットに接続しなくても動作するスタンドアローンの統計的機械翻訳を実現しています。

このたび、両者の共同開発により、スタンドアローンで実用的な速度で動作可能なニューラル機械翻訳(NMT)^*3システムを実現し、ログバーの接客専用オフライン翻訳機「ili PRO（イリープロ）」に採用されることになりました。

背景

訪日観光客数は2016年に2400万人を超え、2020年には4000万人に達する勢いになり、多言語音声翻訳へのニーズは日本各地で高まっています。これに応えるために、NICTで開発した多言語音声翻訳アプリ”VoiceTra”の音声翻訳技術の製品化が、既に始まっています。

“VoiceTra”は、NMTにより、翻訳精度（意味が通じる率を翻訳者が評価）を大幅に改善し、多分野（防災、買物、タクシー等）で9割前後の高精度を達成しました。

しかし、ネットワーク型の機械翻訳アプリのため、インターネットに接続しないと使えませんでした。一方、インターネットに接続しなくても動作するスタンドアローンのNMTの実現には、限られた計算資源での高速動作に課題がありました。

また、ログバーが販売する「ili（イリー）翻訳機」では、スタンドアローンの統計的機械翻訳を既に実現していましたが、NMTを採用することにより、更なる高精度化を達成する目標がありました。

今回の成果

・限られた記憶容量、計算資源でも高精度の翻訳が実現できるように研究開発を行い、NMTモデルのサイズを削減するとともに、翻訳アルゴリズムの高速化を行いました。
・これにより、高い翻訳精度で、実用的な翻訳速度の、スタンドアローンで動作可能なNMTシステムが実現されました。
・本システムは、ログバーの接客専用オフライン翻訳機「ili PRO（イリープロ）」に採用されることになりました。

今後の展望

今後、「グローバルコミュニケーション計画」で強化対象となっている10言語（日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、ミャンマー語）に加えて、在日外国人のニーズが高いブラジルポルトガル語やフィリピン語等も強化し、対応できる分野も拡張する予定です。

言語や分野の拡張に伴い、NICTは、民間企業と協力して、音声翻訳技術の研究開発成果の社会還元をより一層進めていきます。

用語解説

*1 グローバルコミュニケーション計画

総務省が2014年4月に発表した、世界の「言葉の壁」をなくし、グローバルで自由な交流を実現することを目標とする計画です。この計画を推進するとともに、訪日外国人への対応の充実による観光産業の活性化等の地方創生にも資するため、多言語音声翻訳の対応領域、対応言語を拡大し、翻訳精度を高めるための研究開発を推進します。また、産学官の連携により、病院、商業施設、観光地等において社会実証を実施し、多様な事業創出に向けたクラウド型翻訳サービスプラットフォームを確立します。

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