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通信波長帯光子数識別器の開発:

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図1 1.5µm帯光子数識別器 charge integration photon detector (CIPD)の概念図
開発の目的:
 光のもつ代表的な物理量としては複素振幅と並んで光子数が挙げられます。1パルスあたりの光子数を正確に数えることができれば、」量子暗号鍵配布などの量子 通信への応用やスクィズド光などの非古典光の物理量を直視することなどに利用できます。現在単一光子検出に使用されている代表的なデバイスはアバラン シェ・フォトダイオード(APD)です。このAPDをゲーティッド・ガイガーモード(gated Geiger mode)で動作させます。APDに印可するバイアス電圧をブレークダウン電圧以上に設定し、」単一光子吸収時に発生する電子—ホールペアを雪崩増幅して検 出します。この方式の欠点としては単一光子の検出の際に光子数の情報を失ってしまっていることです。言い換えれば単一光子を検出できるが、」それ以上の光子 がパルス内に含まれていても単一光子としてカウントしてしまいます。これを避けるために可視光領域においてStanford大学で開発されているシリコン を母材としたvisible light photon counters (VLPC)によって光子数の識別が可能となっています。しかしながら現在の情報ネットワークの根幹である光ファイバー内でのロスが最も小さい1.5µm 帯における光子数識別器としては、」NISTで開発が進められている超伝導ボロメータがありますが、」100mKまでの冷却が必要であり、」特殊な読み出し回路 やダークニング技術を必要とします。我々は通常のInGaAs pin photodiodeと初段アンプとしてGaAs JFETを4.2Kに冷却して用いることによって高効率な光子数識別器の実現を目指しています。InGaAs PIN photodiode自体高量子効率を有しており、」その性能を劣化させる事無く光子数識別器として利用するには熱的ノイズと漏れ電流の低減が不可欠です。 我々は検出器を液体ヘリウム温度(4.2K)に冷却してノイズと漏れ電流の低減を図っています。更に検出器で発生した電子—ホール対1つ1つを区別する為 には低ノイズ読み出し回路(インピーダンス変換回路)が不可欠です。単一の電荷の増減を増幅し読み出す必要があります。検出器を極低温下で使用するため、」 振動などの外来ノイズを低減する為には読み出し回路も極低温下で動作させる必要があります。従来液体ヘリウム温度に冷却した検出器の読み出し回路には低雑音なSi JFETなどが用いられてきましたが、」ノイズ特性において充分低い値ではなく、」またこの回路自体は液体ヘリウム温度ではキャリア凍結が起こり、」動作するこ とができません。我々はこの読み出し回路の初段FETにGaAs JFETを使用し、」微少電流検出に威力を発揮するcharge integration amplifier (CIA)を構成して光子数識別器の実現を目指しています。我々はこの光検出システムをcharge integration photon detector (CIPD)と名付けました。図1にその概念図を示します。
 この回路の重要構成デバイスであるGaAs JFETはキャリア凍結を起こす事無く液体ヘリウム温度においてもキンクやヒステリシスなども見られず、」良好な特性を示します。図2に4.2KにおけるI-V特性、」を示します

 
 
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図2 GaAs JFET I-V characteristics at 4.2 K
 静特性において欠点のないGaAs JFETにも問題があります。それは液体ヘリウム温度で使用する際に、ランダム・テレグラフ・シグナル(RTS)という離散的なノイズが発生します。この 信号は読み出し回路を動作させる際に大きな障害になります。光子数識別器実現の為にはこのRTSを除去する必要がありました。その方法として我々が発見し た方法は、電流を導通させながら素子温度をある温度まで上昇させ、再び電流を導通したまま極低温に冷却するということでした。我々はこの行為を thermal cure(TC)と名付けました。この行為の物理的意味合いに付いては文献をご覧下さい。この行為によってRTSを大幅に除去することが可能になり、0.5 µV/√Hz at 1 Hzという低ノイズ化に成功しました。図3(a)にRTS、(b)にTCを行った場合と行わなかった場合のノイズスペクトルを示します
 
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図3 (a) RTSの出力例
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図3 (b) ノイズスペクトル
 TCを用いて低雑音化を可能にし、次にはInGaAs PIN photodiodeとGaAs JFETで構成されたCIPDでの光子数識を可能にするためには高いゲインを得るため、低入力容量を実現する必要があります。中空実装を用いることにより 力容量として0.067 pFという低容量を実現しました。単一電荷が蓄積しただけでも2μVの出力電圧が生じます。読み出し時のノイズがこの値を下回れば0個、1個、2個と電荷の数を数えることができます。図4に微弱光検出実験装置の概念図を示します。

図4 微弱光検出実験概念図
図4 微弱光検出実験概念図
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図5 光子数識別器の出力波形
 図5に読み出し速度1 Hzで動作させた場合の出力波形を示します。積分型のアンプは電荷が蓄積される前後の電圧値の差から溜まった電荷量を見積もります。図中のステップに相当 する電圧値が電荷量に相当します。図中で出力の極性が反対側になっているところはノイズによるエラーとなっています。読み出しノイズは、ダークカウントの 測定から0.5electron以下と見積もられます
 
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図6 光キャリア数の分布測定
 図6に入射光量を変化させた場合の光キャリア数分布を測定した結果を示します。図中の実線はポアソン分布です。レーザからの微弱光の光子分布はポアソン分布に従います。この図からこの検出器でポアソン分布を再構成できていることが判ります。この時の量子効率は80%に上ります。
 

主担当者: 藤原幹生

超高感度光子検出技術