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2025年2月28日、スリランカ中部州Kandy県Gampola市内の紅茶工場を中心とした地区にて、APT(Asia Pacific Telecommunity: アジア太平洋電気通信共同体)の支援を受けたスマートビレッジ向け通信インフラ「NerveNet」の移管式典が開催され、現地への引渡しと運用開始が行われました。このプロジェクトは、2018年に実施された土砂災害早期警報システムの調査を基に構想され、2019年にスリランカ都市開発庁(Urban Development Authority, UDA)がAPTに提案し、2020年に採択されました。日本側では、BHNテレコム支援協議会と当機構(大和田主任研究員)が中心となり、技術支援や開発を担当しました。両機関は現地技術者へのオンライン講習やアプリ開発支援を継続し、今年度にシステム統合と検証を完了した後、現地での設置と最終確認を実施しました。Gampola市は紅茶生産が盛んな丘陵地帯で、土砂災害や高齢化が課題となっています。導入されたアプリケーションには、河川水位監視、気象観測、緊急通報、拡声スピーカー、紅茶工場内の環境計測などが含まれます。通信には広域LoRa技術と最大10ホップの中継機能を活用し、約1km×0.5kmの範囲で安定した情報共有を実現しています。機器は10台設置され、停電対策として蓄電池を搭載し、屋外設置の3台は太陽光発電で自立稼働します。式典には、農園経営者Molagoda博士、スリランカ電気通信規制委員会Herath総局長、APT、BHN、NICTの関係者など約25名が出席し、スピーチや署名式、設備見学が行われました。紅茶研究所元職員のGerry氏は、茶葉の発酵に必要な湿度と酸素濃度の管理に本システムの活用を期待していると述べました。今後1年間はBHNの支援が継続され、設置箇所や機能の追加が進められる予定です。
本成果は2025年4月にAPTの標準化活動「ASTAP」の報告書(APT/ASTAP/REPT-60 ”APT Report on Local-Area Resilient Information Sharing and Communication Systems”)にユースケースとして掲載されました。
また、2025年9月2日にBHNテレコム支援協議会のwebでも報告されました。
「ウェルビーイングな未来をつくるNICTの技術」を特集した「NICT NEWS」にも掲載されていますのでぜひ御覧ください。

スリランカにおけるスマートビレッジ・システムの構築
 
 
fig.1
システムの配置構成
fig.2
屋外に設置した装置

本件に関する問い合わせ先

レジリエントICT研究センター
企画連携推進室
E-mail: resil-info at ml.nict.go.jp
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