萩本和男主席研究員、中沢正隆東北大学卓越教授と共に 2023 Japan Prize(日本国際賞)を受賞

「エレクトロニクス、情報、通信」分野
2023年1月24日

国立研究開発法人情報通信研究機構

中沢正隆博士
中沢正隆博士
萩本和男氏
萩本和男氏

対象分野

「エレクトロニクス、情報、通信」 

受賞者

中沢正隆博士 東北大学 卓越教授(DP)/特任教授
萩本和男氏 国立研究開発法人情報通信研究機構 主席研究員

業績

半導体レーザー励起光増幅器の開発を中心とする光ファイバ網の長距離大容量化への顕著な貢献

理事長徳田英幸のコメント

萩本和男主席研究員と中沢正隆東北大学卓越教授のお二人がJapan Prize (日本国際賞)を受賞されたとのこと、NICTを代表して心よりお祝い申し上げます。
萩本主席研究員は、Beyond 5G研究開発促進事業のPD(Program Director)として60以上のBeyond 5G研究開発プロジェクトを統一的に指導し、B5G/6G研究開発のキーパーソンとして活躍されています。また、中沢教授は、東北大学電気通信研究機構の初代機構長として、NICTと連携し、東日本大震災を教訓とした災害に強い情報通信技術の研究開発とその成果の社会実装に関しても推進されてこられました。このように、今回、受賞されたお二人は、光データ通信の分野を牽引されてきただけでなく、NICTが推進してきた様々な事業や研究開発活動に長年にわたって尽力されてこられた方です。
この度の日本国際賞の受賞は、NICTにとっても大変嬉しいニュースであるとともに、長年お二人が牽引されてきた「長距離・大容量光データ通信」分野における基礎・基盤的な成果とその実用化における社会へのインパクトにあらためて敬意を評すとともに、お二人のさらなるご活躍を祈念します。

参考

Japan Prize(日本国際賞)は1981 年、「世界の科学技術の発展に資するため、国際的に権威のある賞を設けたい」との政府の構想に民間からの寄付を基に設立され、1983年に閣議了解を得て実現しました。この賞は、全世界の科学技術者を対象とし、独創的、飛躍的な成果を挙げ、その進歩に大きく寄与し、もって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められる人に贈られます。授賞対象分野は科学技術の全分野を対象とし、科学技術の動向等を勘案して毎年2つの分野を指定します。原則として各分野1件に対して授与され、受賞者には賞状、賞牌及び賞金が贈られます。授賞式には天皇皇后両陛下が毎回ご臨席、三権の長始め関係大臣と各界の代表のご出席を得、挙行されます。

研究概要

私たちは、メールやSNS、オンライン会議などで日常的に世界とつながり、クラウドサービスを利用して大量のデータを保持するようになりました。インターネット上で利用できる情報リソースの、このような多様化と大容量化の背景には、多くの情報を高速で遠くまで送ることができる「光通信システム」が低価格で提供されるようになったことがあります。
1980年代、中沢博士と萩本氏は、当時、遠距離の光通信システムの実現に必要不可欠であるにも関わらず実用化が難しいとされていた「小型・高効率・広帯域の光増幅器」を、「エルビウム添加ファイバ」と「InGaAsP半導体レーザー」を組み合わせることによって実現しました。それからわずか5年ほどで、この光増幅器を搭載した中継器は、太平洋・大西洋横断海底光ケーブルをはじめ世界を結ぶ幹線系長距離伝送網に採用されました。当時の光通信システムの実用化を飛躍的に進展させるとともに、現在に至るまで、この技術を基礎として光通信システムの発展が続いています。
両氏が開発した光増幅器は、グローバルなインターネット社会を支える基幹技術である「長距離・大容量光データ通信」の道を拓いたのです。