量子暗号通信と秘密分散を用いた音声データ保管の実証実験を実施

2024年3月15日

株式会社大和証券グループ本社
大和証券株式会社
国立研究開発法人情報通信研究機構

株式会社大和証券グループ本社(以下、大和証券グループ)と大和証券株式会社(以下、大和証券)、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICTエヌアイシーティー)は、量子暗号ネットワーク1 上に構築された秘密分散システム2 (以下、量子セキュアクラウド)での音声データの取扱いについて、実証実験を行いました。

1. 背景

近年、量子技術を活用したコンピュータの開発が加速しており、ビジネスや研究等での本格活用が予見されます。これまでのコンピュータでは解くことができなかった問題を解けるようになることが期待される一方、既存の暗号が破られる危険性もはらんでおり、企業は今後、自社で扱うデータの安全性を見直す必要があります。
大和証券グループはそのような将来を見越し、量子セキュリティ拠点3 の指定を受けたNICTと共同研究契約を締結し、量子暗号ネットワークへ接続するための仕組みやそのネットワーク上でアプリケーション等を動作させるためにテストベッド機器を設置しました。技術の事業化・社会実装に向けた議論の実施や、大和証券グループのビジネスでの活用に向けた知見を蓄えるため、NICTと共同して実証実験を開始しています。

2. 概要

この度、量子セキュアクラウドの機能確認や、大和証券グループでの活用余地の検討のため、大和証券で扱う音声データのサンプル4 を使用した実証実験を行いました。大和証券は、対応品質向上と通話内容の確認を目的に、お客様との通話を録音しています。それらの音声データは個人情報を含み、長期間保存していることから、現在も非常に厳重に扱っております。量子セキュアクラウドは長期間にわたるデータのより安全な保管の実現を目指しており、大和証券の音声データでも問題なく量子セキュアクラウドの機能が実現されるかを確認する実証実験を実施しました。

3. 実証実験の結果

大和証券が音声データを保管・利用する一連のフローを簡易的に模した実証実験を実施しました5 。その結果、大和証券が扱う音声データと同形式のサンプルデータでも、通信秘匿化や秘密分散等が機能していることを確認できました。

4. 今後の展望について

大和証券グループは、引き続きNICTとの連携により、量子暗号ネットワークをはじめとする様々な最先端の量子技術の開発・活用を共に進めてまいります。今後は、テストベッド機器に搭載された量子インスパイアード最適化ソリューション6 を活用した実証実験の実施を検討しています。大和証券グループは、本共同研究を通じて、技術の進歩や社会と経済の発展への貢献に努めます。

用語

1 量子の性質を活かし確実に鍵の盗聴を検知する「量子鍵配送」と、同じ鍵は一度だけしか使用しない「ワンタイムパッド暗号」を組み合わせて構築された、情報理論的安全性を持つネットワーク。
2 原本データを無意味化された複数のデータ(シェア)に分割し、異なるデータサーバに分散保管するシステム。
3 政府が策定した「量子技術イノベーション戦略」(2020年1月)に基づき、基礎研究から技術実証、知財管理、人材育成に至るまで産学官で一気通貫に取り組む「量子技術イノベーション拠点」の一つとして、NICTに「量子セキュリティ拠点」が整備された。
4 個人情報を含まない通話スクリプトを用意し、社員が読み上げた模擬通話を録音し利用。
5 ISO/IEC 25010の利用時の品質モデルに基づく評価を実施。
6 量子コンピュータ理論を応用することで、既存のコンピュータを使用して、複雑で大規模な組合せ最適化問題の高精度な近似解(良解)を短時間で得ることが可能。

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株式会社大和証券グループ本社

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国立研究開発法人情報通信研究機構

広報部 報道室