第67回(令和3年度)前島密賞を受賞

2022年4月28日



国立研究開発法人情報通信研究機構

2022年4月7日に、第67回前島密賞の贈呈式が行われ、情報通信研究機構からは、前島密賞1件(団体)、奨励賞1件(個人)を受賞いたしました。
前島密賞は、逓信事業の創始者「前島密」の功績を記念し、その精神を伝承発展せしめるため、昭和30年(1955年)に設けられ、情報通信及び放送の進歩発展に著しい功績のあった方々に、公益財団方針通信文化協会より贈呈しています。 また、第66回から新たに、現在活躍し今後の功績が期待される方を対象とする奨励賞を設け、贈呈しています。

受賞者および功績の概要

1.前島密賞

【功績タイトル】
宇宙天気情報の社会利用の展開
【受賞者】
情報通信研究機構宇宙天気情報社会利用展開チーム
【功績の概要】
太陽活動による電波利用等への影響(宇宙天気情報)の利用について、ユーザーと直接議論するための「宇宙天気ユーザー協議会」を発足して議論を活発化させ、社会が必要とする情報提供のための観測・モデル・アプリケーション等の開発を進め、また、宇宙天気の24時間監視体制を構築するなど、宇宙天気の観測業務の実利用に多大な貢献をした。

主に太陽活動が引き起こす地球周辺の電磁環境である宇宙天気の乱れは、通信・放送・測位等の電波利用に大きな影響をもたらすほか、電力や航空、人工衛星などの社会インフラの運用にも悪影響を及ぼすことがあるが、宇宙天気情報はこれまで、専門知識を有する者以外にはその利用が困難であった。
そのため、宇宙天気情報の利用について、ユーザーとの双方向コミュニケーションの場として「宇宙天気ユーザー協議会」を設立し、太陽地球環境研究において基礎研究から社会実装までを一貫して検討する体制を形成した。航空機被ばく推定システムや電波伝搬シミュレータ、衛星帯電推定モデルなど多くの社会が必要とする情報提供のための観測・モデル・アプリケーション等の開発を進めた。
また、2017 年 9 月に発生した一連の大規模太陽フレアについてプレスリリースを行い、社会に注意喚起したことによって、我が国での太陽活動に対する備えを充実させる必要性が認識され、その後、関係各機関と協力し電波法の改正などの体制整備を進め、宇宙天気監視の 24 時間運用を始めとする宇宙天気監視体制を構築した。
国際的にも、国際民間航空機関(ICAO)との協議を進め、「ICAO グローバル宇宙天気センター」の一員として、2019 年 11 月から宇宙天気情報の航空関係各機関への提供を開始しており、長年にわたって行ってきた宇宙天気の観測業務を実利用に大きく展開した。
情報通信研究機構宇宙天気情報社会利用展開チーム贈呈式の様子
情報通信研究機構宇宙天気情報社会利用展開チーム贈呈式の様子

2.前島密賞奨励賞

【功績タイトル】
低コスト・低消費電力を実現する新しい超高速光伝送用信号処理技術の研究開発
【受賞者】
吉田 悠来
ネットワーク研究所 フォトニックICT研究センター 光アクセス研究室 主任研究員
【功績の概要】
デジタル信号処理技術により、アレイ型強度受信器による強度情報の相関から光信号の位相情報を推定し回復・復元する方式を新たに研究開発し、光強度受信のみでコヒーレント通信信号の強度・位相情報を受信・復調する技術を世界に先駆けて実証した。
将来社会におけるデジタルトランスフォーメーションの加速において、更なる功績が期待される。

超高速光ファイバ通信において、デジタル信号処理による位相回復技術を世界に先駆けて開発・実証し、その実現性と有用性を示した。
毎秒 100 ギガビットを超える光ファイバ通信においては、高速化・大容量化のため強度情報のみならず位相情報をも利用するコヒーレント通信システムが広く普及しているが、受信器に高精度なレーザ光源と複雑な光集積回路が必要であることから、デジタル信号処理技術を高度に組み合わせることにより、受信した強度情報の相関から光信号の位相情報を推定し回復・復元する方式を新たに開発した。
また、光信号を混合する素子を介して 2 次元アレイ状に配置した光強度受信システムを構築し、開発したデジタル信号処理アルゴリズムとともに光ファイバ通信原理実証システムに実装し、光強度受信のみで強度・位相情報が重畳されたコヒーレント通信信号を受信・復調することに世界で初めて成功した。
本成果は、光ファイバ通信のフラッグシップ国際会議 OFC においてポストデッドライン論文として採択され、研究機関・企業から大きな注目を集め、国内外における関連技術の研究開発の加速、フラッグシップ国際会議での関連分野セッションの創設などの契機となり、本技術分野の更なる発展が期待されている。
光ファイバ通信ネットワークにおける基幹技術の一つとして社会実装も見込まれており、将来社会におけるデジタルトランスフォーメーションの加速において、更なる功績が期待される。
 
吉田 悠来の贈呈式の様子
吉田 悠来の贈呈式の様子

(功績の概要に関しては公益財団方針通信文化協会のホームページより)

お問い合わせ

電磁波研究所電磁波伝搬研究センター

石井 守