国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の要素技術・シーズ創出型プログラムに係る令和7年度新規委託研究の公募について、下記のとおり採択しました。
1. 採択された研究開発プロジェクトと提案者
- (1)
- データセンタ/AIスーパーコンピューティングを革新する高速大容量光スイッチネットワーク基盤技術の研究開発
- 提案者:
- 国立大学法人東京科学大学(代表提案者) 、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
- 概要:
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AI/ML の未来を革新する超大容量・超低消費電力・超高密度実装可能なデータセンタ/AI スーパーコンピュータ向け光スイッチ基盤技術を開発する。また、各実施機関の保有するコア技術を最大限に活用し、ハイパースケールからマイクロデータセンタで適応的に利用可能な高性能光スイッチングネットワーク並びにその基盤技術を開発する。本研究開発のターゲットアプリケーションは、ハイパースケールデータセンタ内ハイブリッド電気/光スイッチネットワーク、高効率メトロ分散データセンタネットワーク、 AI クラウド/ AI コンピュータネットワーク並びに小型低消費電力 Edge/Micro データセンタ、 AI サーバ用半導体集積光スイッチを含む。
- (2)
- エアギャップ3次元フォトニックプラットフォームによるテラヘルツ波ビームステアリングデバイス基盤要素技術の研究開発
- 提案者:
- 国立大学法人九州大学(代表提案者) 、国立大学法人東京大学
- 概要:
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革新的なSiCを用いたエアギャップ3次元フォトニックプラットフォーム技術を創成し、300GHz帯フォトミキサとビームステアリング機能を集積したデバイスを開発する。高効率光結合、高い熱伝導率、大きな屈折率差の活用により、従来困難だった超高速・高出力光電融合を実現し、Beyond 5G/6Gに資するビームステアリング・高信頼通信の実現を目指す。将来的には、モバイルセンシングやスマートヘルスケアなどの応用も期待され、通信を基盤とした医療・環境分野にも革新をもたらす技術である。
- (3)
- 非地上系ネットワークのシームレスな海中拡張に向けたコヒーレント水中光無線通信技術の研究
- 提案者:
- 国立大学法人山梨大学(代表提案者) 、学校法人東海大学、アクアジャスト株式会社
- 概要:
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非地上系ネットワーク(NTN)の海中領域へのシームレスな拡張を実現するため、可視光によるコヒーレント水中光無線通信(UOWC)技術の確立を目指す。本研究では、水中における可視光帯の伝搬特性を詳細に解明し、独創的な多値変復調技術・可視光変調技術を採用することで、10Gbit/s級の高速かつ高信頼な水中通信を実現する。従来の音響通信や電波利用では、通信速度や伝送距離、遅延などに大きな課題があったが、本技術によりこれらの制約を克服し、地上から海中までの完全なネットワーク統合が可能となる。これにより、海中探査や港湾、洋上風力発電等の社会基盤の効率的な点検・整備を支援等、関連分野の発展に大きく寄与することが期待される。
- (4)
- ダイヤモンド半導体によるNTN(衛星ネットワーク)用高効率送信システムの研究開発
- 提案者:
- 国立大学法人佐賀大学(代表提案者) 、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、株式会社ダイヤモンドセミコンダクター
- 概要:
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Beyond5G(6G)では、NTN(衛星ネットワーク)用高効率送信システムが必要不可欠となることから、「大出力・高周波」半導体のダイヤモンドを用いた高効率送信システムを開発する。それによりKuバンド、Sバンドで数W/mmの出力電力を出力でき、従来の高効率送信システムより高効率・低消費電力で動作可能になる。
- (5)
- 自動的に端末がマルチプロファイル対応eSIMに登録されているキャリアの中から最適なプロファイルに切り替える技術を具備したeSIM IoTプラットフォームと国産RSP基盤技術の研究開発および標準化
- 提案者:
- NECネッツエスアイ株式会社(代表提案者)
- 概要:
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Beyond 5G時代の到来により、多数のIoTデバイスが多様なネットワークに接続されるが、従来の単一通信プロファイルや海外依存のRSP基盤では、災害時や通信障害発生時の迅速な対応や経済安全保障の観点で課題が残る。本研究開発では、端末がマルチプロファイル対応eSIMに登録された複数キャリアの中から、最適なプロファイルを自動的に選択・切り替える技術を備えたeSIM IoTプラットフォームと、国産RSP基盤技術の開発および標準化を推進する。これによりサービス継続性や社会インフラの強靭化、国際標準への提案を通じてBeyond 5G社会の発展に貢献する。
- (6)
- 量子コンピュータ時代の高安全なB5Gシステム構築のための高度セキュリティ技術の研究開発
- 提案者:
- 国立大学法人横浜国立大学(代表提案者)、ジャパンデータコム株式会社
- 概要:
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量子コンピュータ時代の高安全なB5Gシステム構築のための高度セキュリティ技術として、上位レイヤーで実装する実用的な耐量子高機能暗号(高機能PQC)の開発と、下位レイヤーで実装する先進的物理層セキュリティ技術(先進PLS)を研究開発する。これら開発技術の統合により、不正端末による通信を先進PLS技術で制御しつつ、高機能PQC技術により強固なデータ秘匿と認証を実現することで、多層的に高安全セキュリティ技術を確立する。高機能PQC技術では国際標準化を進めて我が国のプレゼンス向上に貢献し、先進PLS技術では知財化と国内社会実装を進めて国内産業界の技術的発展に貢献することを目指す。
- (7)
- Beyond 5G時代の高信頼マルチモーダル会話AIエージェントの自動評価基盤の研究
- 提案者:
- 株式会社エキュメノポリス(代表提案者)
- 概要:
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Beyond 5G時代には、高信頼を前提とするマルチモーダル会話AIが、医療・教育をはじめとした公共サービスにおいて社会インフラとして機能することが期待されている。一方、音声・言語・非言語を統合する高密度な対話体験に対して、信頼性を客観的に評価する基盤は未整備である。本研究では、多様なユーザー行動を模倣するマルチモーダル・エミュレータ、対話品質を多軸で評価する自動スコアリングモデル、B5G通信環境に最適化されたネットワークアーキテクチャ、および評価フレームの共通参照枠と標準化手法を統合的に開発・検証し、日本発モデルとして世界の会話AIエージェント産業の本格的な立ち上がりを牽引することを目指す。
2. 公募等の概要
上記の課題については、2025年5月7日から2025年6月9日まで公募を行いました。公募の詳細は、以下のWebサイトをご参照ください。